フレッドも、悩んでいる
ホロルに戻って三日が過ぎ、ダンジョン探索再会に向けた打ち合わせの後で、フレッドが相談に乗って欲しいと言ってきた。というわけで、俺は今、フレッドと一緒に『猪鹿亭』で夕飯を食っている。既視感を覚える展開だ。
「お手間をとらせて申し訳ないっす」
「気にするなって。それと、ここは俺のおごりだ。ダンジョン探索を中断させたし、王都のみやげも用意しなかったしさ」
俺たちが王都に行っている間、フレッドとハンスはダンジョンには潜らずに、近隣の森に出没する魔獣を駆除する依頼をこなしていた。
「それじゃ、お言葉に甘えるっす」
「それで、相談というのは?」
「ここんところ、ハンスとずっと二人で魔獣を狩ってたんすけど、やつの腕がびっくりするくらいあがってるんすよ。身をかわすだけで、相手がつんのめったり、軽くパリイしたように見えたのに、吹っ飛んだり、あのものぐさの木偶の坊が、まるっきりの別人っす。で、何があったのか聞いてみたら、アンリさんに〈見切り〉のスキルを使いこなす方法を教えてもらったって話で……、アンリさん、どうやったら自分のスキルを使いこなせるか、俺にも教えて欲しいんす」
やはり、フレッドの血の気の多さもスキル絡みだったか。
「で、君のスキルというのは?」
「俺のスキルは〈蛮勇〉っす」
〈見切り〉と〈蛮勇〉って、水と油みたいなもんじゃないか? よくこれまでコンビを組んでこれたな。いや、逆に、お互いの長所と短所を補い合ってきたとも言えるわけか。
「アンリさん、お願いするっす、なんならヒントだけでもかまわないんで」
「うーん……」
〈蛮勇〉か、恐れを知らないってことだよな、魔獣の〈威嚇〉を受けてもひるまない、とか……。闇雲に突っ込んでゆくばかりじゃもちろんダメなんだが、ほどほどに怖がれとか、大胆さと用心深さをあわせ持てとか言うのも、持ち味を薄めるだけでアドバイスにならない気がする。
「何て言えばいいのかな」
「やっぱり、どうしようもないっすか」
「いや、中途半端なことを言って、フレッドらしさを失くして欲しくないんだよ。今のままでいいと思っているなら注意するけど、変わらなくちゃいけないってことは分かっているわけだしね。何かうまい手がないか考えてみるから、とりあえず、今はパワーとスピードの向上を目指してくれないかい?」
「わかったっす。確かに、難しいことを考えるよりは、筋トレのほうが自分に合ってるっす」
フレッドはそう言ってエールのジョッキを空けると、ふと思いついたように付け加えた。
「アンリさん、肉頼んでいいっすか?」




