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会社を辞めた俺、ハズレスキル“清掃”でダンジョン最深部を独占する  作者: tsu
外界汚染編

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二十七話 深層核ネメシス

セレスフィアが、かつてない白銀光を放った。


 地下世界全域が震える。


 白銀術式。


 浄化炉。


 巨大封印陣。


 全てが月白へ呼応していた。


 その姿は、もうただの探索者ではなかった。


 古代白銀騎士。


 かつて世界を守っていた最後の守護者そのものだった。


 その時。


 地下空間へ、さらに過去映像が広がっていく。


 白銀都市カルネディア。


 今とは比較にならないほど巨大だった。


 空へ伸びる純白塔。


 浮遊式術式環。


 白銀結界。


 そして数え切れない人々。


「これが……昔のカルネディア……」


『古代記録同期率上昇』


 街には活気があった。


 白銀装甲列車。


 浮遊輸送艇。


 巨大術式炉。


 子供たちが笑いながら走っている。


 研究者たちが術式を調整している。


 兵士たちは巡回し、市民たちは平和に暮らしていた。


 そこには確かに文明があった。


 繁栄があった。


 未来があった。


 だが。


 映像の空が突然黒く染まった。


 巨大黒花。


 侵食雨。


 空間崩壊。


 悲鳴。


 逃げ惑う人々。


 さらに。


 黒い巨大な“眼”が空へ現れる。


 アビスコード。


 千年前から存在していた災厄。


『……全部、侵シタ』


 低い声が響く。


 映像の中で、白銀騎士たちが次々倒れていった。


 侵食。


 暴走。


 黒花化。


 味方同士で斬り合う者までいる。


「ひどすぎる……」


 レイナが息を呑む。


 その時。


 映像の中の月白が前へ出た。


 今より若い。


 だが瞳は同じだった。


 白銀長剣セレスフィアを構え、巨大なアビスコードへ立ち向かっている。


 その背後には、多数の白銀騎士たち。


 だが全員傷だらけだった。


 血を流し。


 侵食され。


 それでも誰一人退こうとしていない。


『封印準備完了』


『最終術式展開』


 古代術師たちが叫ぶ。


 巨大白銀魔法陣が空を覆った。


 数千層にも重なった超大型術式。


 カルネディア都市全体を利用した封印陣だった。


 その瞬間。


 映像の中の月白が静かに振り返る。


『……俺が核へ行く』


 誰かが止める。


『無茶だ!』


『侵食濃度が高すぎる!』


『帰ってこれないぞ!』


 だが若い月白は笑った。


『……誰かがやらなきゃ終わる』


 静かな声だった。


 覚悟を決めた人間の声。


 その瞬間。


 映像の中で、月白が単独でアビスコードへ突撃した。


 白銀光。


 黒波。


 空間崩壊。


 凄まじい戦いだった。


 斬撃一つで巨大黒腕が吹き飛ぶ。


 だが次の瞬間には再生する。


 黒波が都市を侵食する。


 白銀騎士たちが必死に押し返す。


 それでも少しずつ侵食は広がっていった。


 そして。


 映像の中の月白がアビスコードへ到達する。


 巨大な黒い眼。


 終わりの象徴みたいな存在。


 その中心へ、セレスフィアが突き刺された。


『封印開始』


 白銀光が爆発する。


 巨大封印陣が起動。


 都市全域が白く染まった。


 だが。


 そこで映像が乱れる。


 ノイズ。


 赤警告。


 そして。


 若い月白が黒波に飲み込まれる姿が映った。


「っ……!」


 空気が凍る。


 次の瞬間。


 映像が途切れた。


 地下世界へ静寂が落ちる。


 その時。


 現在の月白が小さく呟いた。


「……あの時、俺は負けた」


「月白さん……」


「……封印は成功した。だが完全じゃなかった」


 彼はセレスフィアを見つめる。


「……だから、千年かけて侵食が漏れ続けた」


 つまり。


 今起きている全ては、千年前の戦いの続きだった。


 その時。


 アビスコードが笑った。


『白銀ハ、負ケタ』


 巨大黒波が地下世界全域へ広がる。


 侵食圧が急上昇した。


『侵食率上昇』


『施設崩壊率81%』


「八十一!?」


 もう限界が近い。


 その瞬間。


 巨大黒腕が一斉に襲いかかってきた。


 数が違う。


 千本以上。


 空間そのものが黒腕で埋め尽くされる。


「多すぎる!!」


 九条が結界を展開する。


 だが。


 砕けた。


 一瞬だった。


「がっ……!」


 九条が吹き飛ばされる。


 レイナも炎で迎撃するが止まらない。


 炎を飲み込みながら黒腕が迫る。


 侵食適応。


 進化速度が異常だった。


『侵食進化継続』


「本当にチートすぎるだろ!!」


 その時。


 月白が前へ出た。


「……まだだ」


 セレスフィアが輝く。


 白銀閃。


 地下空間を覆うほどの巨大斬撃が放たれた。


 轟音。


 数千本の黒腕がまとめて消滅する。


 しかも再生しない。


 白銀光が侵食核そのものを斬っている。


「強すぎる……」


 だが。


 月白の身体も限界だった。


 侵食が広がっている。


 腕。


 首。


 頬。


 黒筋が全身へ浮かび始めていた。


『侵食率危険域』


 それでも彼は立つ。


「……今度こそ終わらせる」


 その瞬間。


 地下世界全域の白銀術式が、一斉に回転を始めた。


 巨大魔法陣が重なる。


 浄化炉が脈動する。


 カルネディアそのものが、最後の力を振り絞っているようだった。


 そして。


 アビスコードの巨大な眼が、ゆっくり月白を見下ろした。


『……また、失ウカ?』


 その声は嘲笑だった。


 千年前と同じ絶望を突きつけるような声だった。


 だが。


 月白は静かにセレスフィアを構える。


「……今度は違う」


 白銀光が、さらに強く輝いた。






地下世界全域の白銀術式が、一斉に回転を始めた。


 巨大魔法陣。


 浄化炉。


 古代封印環。


 全てが連動している。


『最終封印同期率91%』


「九十一!」


 あと少し。


 あと少しで封印が完成する。


 だが。


 アビスコードも暴走を始めていた。


 巨大な眼が完全に開く。


 その瞬間。


 地下世界全域へ黒い雨が降り始めた。


「雨……?」


『高密度侵食粒子です』


「雨ってレベルじゃない!」


 黒い雫が床へ落ちるたび、空間が侵食されていく。


 壁が崩れ。


 術式が壊れ。


 金属が腐食する。


 しかも。


 黒雨を浴びた灰狼隊員の一人が突然叫んだ。


「うあぁぁぁ!!」


 黒花開花。


 侵食暴走。


「まずい!!」


 レイナが炎で抑え込む。


 だが完全には止められない。


『侵食暴走連鎖反応』


「このままだと全員侵される!」


 その時。


 ネメシスが苦しそうに胸を押さえた。


『……いたい……』


 巨大黒花核が脈動する。


 地下世界全域が連動して震えた。


 そして。


 ルナが新たな解析結果を表示する。


【深層核解析完了】


【ネメシス】


・封印維持中枢

・浄化制御核

・アビスコード抑制装置


「やっぱり……」


 ネメシスは敵じゃない。


 ずっと封印を支えていた。


 その時。


 さらに新たな表示が現れる。


【警告】


【ネメシス停止時】


・最終封印崩壊

・アビスコード完全解放


「止めたら終わる!?」


 つまり。


 彼女は千年間ずっと一人で世界を支えていた。


 その事実に胸が苦しくなる。


 ネメシスが震えながらこちらを見る。


『……わたし、こわい』


「……大丈夫だ」


『……ほんと?』


「終わらせる。絶対」


 その瞬間。


 ネメシスの周囲へ白銀光が広がった。


 黒花が少しずつ消えていく。


 だが。


 アビスコードが怒号を響かせた。


『返セ』


 巨大黒波暴走。


 地下空間が激しく揺れる。


 さらに。


 巨大な黒い人影がアビスコードの背後から現れ始めた。


「まだ何か出るの!?」


『超大型侵食体形成中』


 黒い巨人だった。


 地下空間を埋め尽くすほど巨大。


 しかも表面には無数の顔が浮かんでいる。


 叫び。


 泣き声。


 絶望。


 侵食された者たちの残骸だった。


 その瞬間。


 巨人が腕を振り上げる。


『施設崩壊攻撃予測』


「止めないと全部潰れる!!」


 だが。


 月白が静かに前へ出た。


 侵食で身体が崩れ始めている。


 それでもセレスフィアを構えた。


「……主任」


「はい!」


「……封印を完成させろ」


「でも月白さん!」


「……今度は、失敗しない」


 静かな声だった。


 その瞬間。


 月白が白銀光へ包まれる。


 地下世界全域の術式が共鳴する。


 まるで千年前の白銀騎士団全員が力を貸しているみたいだった。


 そして。


 彼は巨大侵食巨人へ、たった一人で突撃した。


 轟音。


 白銀斬撃。


 巨大黒腕が吹き飛ぶ。


 さらに侵食巨人の胴体へ巨大な斬撃痕が刻まれた。


 だが。


 再生。


 黒花が咲き、傷が埋まっていく。


『超速再生確認』


「再生速度が速すぎる!」


 その時。


 侵食巨人が咆哮した。


 地下空間全域へ黒波が炸裂する。


「ぐぁっ!!」


 吹き飛ばされる。


 呼吸が止まる。


 しかも侵食率がさらに上昇していた。


【主任侵食率】


・58%


「もう六十近い!?」


 身体が熱い。


 視界が黒く滲む。


 意識まで沈みそうだった。


 その時。


 ルナが静かに告げる。


『主任』


「……なに」


『侵食が精神領域へ到達しています』


「つまり?」


『このままでは、主任も侵食暴走します』


 空気が凍る。


 つまり。


 時間切れが近い。


 その時だった。


 ネメシスが、ゆっくりこちらへ手を伸ばした。


『……いや』


「え?」


『……あなたは、こわれないで』


 その瞬間。


 ネメシスの身体から巨大白銀光が放たれた。


 地下世界全域を覆うほどの浄化光。


 黒雨が蒸発していく。


 侵食空間が押し返される。


『深層核覚醒反応確認』


「覚醒……?」


 ネメシスの瞳が白銀へ染まる。


 巨大黒花核が変質していく。


 黒だった花弁が、少しずつ白銀へ変わり始めた。


 それを見たアビスコードが、初めて怒りを露わにする。


『ヤメロ』


 巨大黒波暴走。


 侵食巨人がさらに巨大化を始めた。


 そして。


 地下世界全域へ、崩壊みたいな振動が走った。

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