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会社を辞めた俺、ハズレスキル“清掃”でダンジョン最深部を独占する  作者: tsu
外界汚染編

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第二十六話 最終封印術式

白銀と深淵の最終決戦が始まった。


 地下世界全域が震えている。


 崩壊寸前だった。


 天井亀裂。


 落下する瓦礫。


 暴走する浄化炉。


 そして空間そのものを侵食し続けるアビスコード。


 巨大黒腕人型が咆哮するたび、黒波が地下空間を埋め尽くした。


『侵食濃度上昇』


『施設崩壊率72%』


「七十二!?」


 もうほとんど限界だった。


 しかも侵食率も危険域へ入っている。


 身体が重い。


 呼吸が熱い。


 指先の感覚が薄れてきていた。


『主任侵食率50%突破』


「半分いった!?」


『長時間戦闘は危険です』


「分かってる!」


 その瞬間。


 巨大黒腕が振り下ろされる。


 轟音。


 地下空間が割れた。


「っ!!」


 俺は咄嗟に回避する。


 だが余波だけで吹き飛ばされた。


 床を転がる。


 肺から空気が抜けた。


「がっ……!」


 その時。


 レイナが前へ出る。


「主任ぃぃ!!」


 炎剣解放。


 紅蓮光が地下空間を照らした。


 巨大火柱。


 黒腕へ直撃。


 爆炎。


 だが。


 再生。


 焼けた部分から黒花が咲き、新たな腕が形成される。


「本当にキリがない!」


『深層侵食による再生です』


「万能説明やめて!」


 その時。


 月白がセレスフィアを構えた。


 白銀光。


 今までとは桁違いだった。


 地下全域の白銀術式が共鳴している。


「……主任」


「はい!」


「……封印術式を繋ぐ」


「どうすれば!?」


「……ルミナブラシアを浄化炉へ同期しろ」


 その瞬間。


 ルナが新たな表示を出した。


【最終封印術式】


【必要工程】


・中央浄化炉同期

・白銀術式連結

・深層核固定


【失敗時】


・カルネディア消滅


「失敗条件重すぎる!!」


 だが選択肢はない。


 その時。


 アビスコードが笑った。


『……無駄ダ』


 黒波暴走。


 巨大黒腕群が地下空間全域へ広がる。


 さらに空間そのものが黒く歪み始めた。


『空間侵食拡大』


「空間ごと食べてる!?」


 その瞬間。


 ネメシスが苦しそうに叫ぶ。


『……やだ……!』


 巨大黒花核が暴走する。


 白銀と黒侵食が激突し始めた。


 地下空間が明滅する。


 まるで施設そのものが悲鳴を上げているみたいだった。


 その時。


 九条が血を吐きながら立ち上がる。


「主任!」


「九条さん!?」


「さっさとやれ……!」


 結界杭を地面へ突き刺す。


 青白い巨大結界。


 地下空間全域へ広がった。


「五分だけ止める!!」


「五分も!?」


「死ぬ気でやるんだよ!!」


 直後。


 黒腕群が結界へ殺到した。


 轟音。


 結界全体へ亀裂が走る。


 九条の身体が震えていた。


 限界を超えている。


 それでも彼は止まらない。


「主任ぃ!!」


 レイナが叫ぶ。


「行けぇぇぇ!!」


 炎爆発。


 黒腕群を押し返す。


 その瞬間。


 俺は駆けた。


 中央浄化炉へ。


 白銀光が脈動している。


 巨大術式が回転していた。


『同期開始可能』


「ルナ!」


『はい』


「全部出し切る!」


『了解』


 ルミナブラシアを浄化炉へ突き立てる。


 瞬間。


 白銀光が爆発した。


 轟音。


 地下世界全域へ巨大魔法陣が展開される。


 古代文字が空中へ浮かぶ。


 巨大白銀環が何重にも重なっていく。


 カルネディアそのものが、長い眠りから目覚めるように脈動を始めた。


『白銀封印機構再起動』


『浄化炉出力上昇』


『地下全域術式同期開始』


 その時だった。


 アビスコードが怒号を響かせる。


『ヤメロォォォ!!』


 巨大黒腕がこちらへ迫る。


 だが。


 月白が立ちはだかった。


「……通さない」


 白銀閃光。


 銀世界。


 超高速斬撃。


 巨大黒腕がまとめて切断される。


 さらに月白はアビスコード本体へ突撃した。


 白銀と深淵が激突する。


 轟音。


 地下世界が揺れた。


 その衝撃だけで巨大瓦礫が降り注ぐ。


 灰狼メンバーが必死に回避する。


「崩れるぞ!!」


「退避路が塞がった!」


「まだ退くなぁ!!」


 九条が叫ぶ。


 結界を維持しながら血を吐いていた。


 かなり危険な状態だ。


 だが誰も逃げない。


 ここで止めなければ世界が終わる。


 その時。


 ネメシスがこちらを見た。


 涙を流している。


『……どうして』


「え?」


『……どうして、助けるの』


 その声は小さかった。


 壊れそうだった。


 何百年も地下に閉じ込められ。


 封印装置として使われ。


 侵食と戦い続けてきた存在。


 誰にも救われなかった少女。


 俺はルミナブラシアを握り締める。


「……助けたいからだ」


 ネメシスが目を見開く。


『……たす、け……』


 その瞬間。


 巨大黒花核から白銀光が漏れ始めた。


 侵食が少しずつ剥がれていく。


『ネメシス側浄化反応確認』


「効いてる!」


 だが。


 アビスコードは激怒していた。


 黒波出力急上昇。


 地下世界が黒く染まっていく。


『侵食領域95%到達』


「九十五!?」


 ほぼ全域侵食。


 もう猶予はない。


 その瞬間。


 アビスコードの巨大黒腕が融合を始めた。


 一本。


 また一本。


 無数の腕が重なり合い、巨大槍の形へ変わっていく。


『超高出力反応』


「嫌な予感しかしない!」


 その時。


 月白が静かに呟いた。


「……来るぞ」


 巨大黒槍がこちらへ向けられる。


 空間そのものが歪む。


 しかも槍の先端には、ブラックホールみたいな暗黒が渦巻いていた。


『深層侵食収束砲確認』


「砲!?」


 アビスコードが咆哮する。


 そして。


 終末みたいな一撃が放たれた。







 終末みたいな黒槍が放たれた。


 轟音。


 空間が裂ける。


 地下世界が歪む。


 その一撃は、単なる攻撃ではなかった。


 触れた空間ごと侵食して消滅させている。


『空間崩壊確認』


「そんなの防げるのか!?」


 その瞬間。


 月白が前へ出た。


 セレスフィアが白銀光を放つ。


 静かだった。


 まるで覚悟を決めているみたいだった。


「……主任」


「はい!」


「……目を逸らすな」


 次の瞬間。


 銀閃。


 白銀光が地下世界を切り裂いた。


 轟音。


 巨大黒槍と白銀斬撃が正面衝突する。


 空間崩壊。


 衝撃波。


 巨大爆発。


 地下世界全域が白と黒に染まった。


「うわぁぁっ!!」


 灰狼メンバーが吹き飛ばされる。


 俺も壁へ叩きつけられた。


「がっ……!」


 肺が痛い。


 視界が揺れる。


 だが。


 前を見る。


 そこには。


 黒槍を押し返している月白の姿があった。


「押してる……!?」


『白銀出力急上昇』


 セレスフィアが共鳴している。


 さらに地下全域の白銀術式が反応した。


 古代文字。


 巨大魔法陣。


 封印機構。


 全てが月白へ力を流している。


 その時。


 大量の記憶映像が空間へ浮かび上がる。


 白銀都市。


 巨大円塔。


 白い空。


 そして。


 無数の白銀騎士たち。


『記録領域同期中』


「また過去映像……?」


 その中で。


 一人の騎士が映る。


 白銀鎧。


 長剣。


 白い外套。


 そして。


 今の月白と同じ瞳。


「……え?」


 その瞬間。


 ルナが解析結果を表示した。


【記録照合】


【個体一致率】

・96%


「九十六!?」


 つまり。


 月白は。


 古代白銀騎士の系譜。


 いや――。


 その生き残り。


 その時。


 月白が静かに呟いた。


「……久しぶりだな」


「え?」


「……この景色を見るのは」


 空気が止まる。


 その時。


 アビスコードが怒号を響かせた。


『白銀……邪魔ダ』


 巨大黒腕が月白へ殺到する。


 数百本。


 地下世界を埋め尽くす勢い。


 だが。


 月白は静かだった。


 セレスフィアが白銀光を放つ。


「……遅い」


 次の瞬間。


 銀閃。


 白銀軌跡が地下空間を横断した。


 轟音。


 数百本の黒腕が同時切断される。


「うそだろ……」


『超位白銀術式確認』


 しかも切断面が再生しない。


 白銀光が侵食を封じている。


 その時。


 ネメシスが涙を流した。


『……きれい……』


 彼女の周囲から黒花が少しずつ消えていく。


 白銀浄化が届き始めていた。


 だが。


 アビスコードは笑った。


『……思イ出シタカ』


 その瞬間。


 巨大な黒波が月白へ直撃する。


 轟音。


「っ……!」


 月白が吹き飛ばされた。


 壁激突。


 血飛沫。


「月白さん!!」


 しかも侵食が急速に進行していく。


 白銀光が少し弱まった。


『侵食率上昇』


 その時。


 月白が苦しそうに笑う。


「……やはり、長くは持たないか」


「そんな……!」


 だが彼は立ち上がる。


 血を流しながら。


 侵食されながら。


 それでもセレスフィアを握り締めた。


「……主任」


「はい!」


「……封印術式を完成させろ」


「でも!」


「……俺が止める」


 その瞬間。


 月白の背後へ巨大白銀魔法陣が展開された。


 古代文字が空間を埋め尽くす。


 そして。


 地下世界全域の白銀術式が共鳴した。


『最終同期率78%』


「あと少し……!」


 その時だった。


 アビスコードの巨大な眼が、ゆっくりこちらを見た。


 そして。


 地下世界全域へ、黒い笑い声が響いた。


『――封印ハ、二度目ダ』


 空気が凍る。


 その言葉の意味を理解した瞬間、俺たちは気づいた。


 昔。


 一度この存在は封印されている。


 そして。


 その封印を行ったのが――月白だった。


 その時。


 過去映像がさらに広がる。


 崩壊する白銀都市。


 燃える空。


 侵食されていく騎士たち。


 その中心で。


 若い月白が、たった一人でアビスコードへ剣を向けていた。


「……まさか」


 月白は静かに目を閉じる。


「……あの時、封じ切れなかった」


 苦しそうだった。


「……だから今度こそ終わらせる」


 その瞬間。


 セレスフィアがかつてない白銀光を放った。

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