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会社を辞めた俺、ハズレスキル“清掃”でダンジョン最深部を独占する  作者: tsu
外界汚染編

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第十八話 地下樹路

花弁内部に埋め込まれていた探索者たちが、一斉に目を開いた。


 赤黒い瞳。


 完全に侵食されている。


 その視線がこちらへ向いた瞬間、空気が一気に冷えた。


「……来る!」


 レイナが叫ぶ。


 次の瞬間。


 花弁内部から探索者たちが落下した。


 いや、“射出”された。


 黒根に繋がれたまま高速で迫ってくる。


 剣士。


 槍使い。


 魔術師。


 弓使い。


 装備から見ても全員高ランク探索者だった。


 しかも動きが速い。


 完全に戦闘技術を保持している。



【名称】:侵蝕融合兵エルディア

【種別】:樹海寄生型探索者

【汚染分類】:知性侵食型

【汚れ度】:SS+

【特徴】:戦闘技術継承/胞子再生/集団同期

【備考】:元人間。精神残留あり。



「元探索者かよ……!」


 灰狼メンバーの顔色が変わる。


 知っている装備も混ざっていた。


 数年前に消息を絶った有名探索者。


 別ギルドの精鋭。


 かつて共闘した仲間。


 全員が樹海に取り込まれている。


 かなり重かった。


 しかもエルディアたちは、ただの操り人形じゃない。


 動きに迷いがない。


 呼吸も連携も洗練されている。


 まるで生前そのままだ。


 その瞬間。


 エルディアの剣士型が地面を蹴る。


 速い。


 一瞬で距離を詰めてきた。


「っ!」


 火花。


 九条が剣を受け止める。


「重っ……!」


 しかも力が異常だった。


 侵食による身体強化。


 さらに背後から魔術型エルディアが胞子弾を放つ。


 黒い弾丸。


 着弾と同時に胞子爆発が起きた。


「散開!」


 灰狼メンバーが飛ぶ。


 だが胞子が広がる。


 侵食開始。


 黒筋が腕へ走った。


「主任!」


「任せてください!」


 俺はルミナブラシアを振るう。


「【広域浄化】!」


 白光が炸裂する。


 胞子がまとめて焼き払われた。


 さらに侵食も消える。


 だがエルディアたちは止まらない。


 むしろ浄化を警戒していた。


 連携して距離を取る。


『戦術学習確認』


「頭いいですね!?」


『かなり』


 その時だった。


 ベルセリオンが静かに微笑む。


「……どうして……抵抗するの……?」


 頭の中へ直接響く声。


「……ここは……苦しくない……」


 周囲の木々が脈打つ。


 無数の声が混ざる。


「もう疲れた……」


「眠りたい……」


「一つになれば楽になる……」


 精神侵食。


 しかもかなり強い。


 灰狼メンバーの動きが鈍る。


「……っ」


「頭……重い……」


 危険だった。


 このまま聞き続ければ、意識を持っていかれる。


『精神侵食率上昇』


「ルナ、対策!」


『強刺激推奨』


「つまり!?」


『気合いです』


「雑!」


 だがその時。


 月白がセレスフィアを地面へ突き立てた。


 白銀光が広がる。


「……静まれ」


 次の瞬間。


 澄んだ波動が周囲へ拡散した。


 頭痛が消える。


 精神侵食が押し返された。


『高純度浄化波動確認』


「助かりました……!」


 その隙を突き、エルディアの槍使いが突撃してくる。


 だがレイナが前へ出た。


 炎剣が燃え上がる。


「はああぁぁっ!!」


 紅蓮斬撃。


 槍ごとエルディアを吹き飛ばした。


 しかし次の瞬間。


 吹き飛んだ身体から黒根が伸びる。


 再生。


「マジかよ!?」


『核未破壊』


 見える。


 胸部だ。


 黒い根核。


 あれが本体。


「胸を狙ってください!」


 次の瞬間。


 灰狼メンバーが一斉に動いた。


 連携。


 かなり洗練されている。


 風で動きを止める。


 雷で硬直。


 そこへレイナの炎斬撃。


 核を貫く。


 白煙。


 エルディアが崩れ落ちた。


「倒せた!」


 だが。


 その瞬間。


 ベルセリオン背後の巨大花弁がさらに開いた。


 中にいた探索者たちが次々と目を開く。


「……増えるの!?」


『はい』


「最悪ですね!」


 さらに地面が揺れ始めた。


 どくん――!!


 地下から巨大脈動。


 空気そのものが震える。


 ルナの表示が真っ赤に染まった。


【地下中枢活性化率:83%】

【地下樹路形成開始】


【備考】

もうすぐ開通。


 直後。


 樹海中心部が崩れた。


 巨大な縦穴。


 地下へ続く螺旋通路が露出する。


 だがそこから吹き上がってきたのは、濃密すぎる黒瘴気だった。


 しかも臭い。


 腐臭と花の匂いが混ざっている。


 かなり嫌。


「これ降りるんですか……?」


『はい』


「嫌だなぁ……!」


 その時。


 ベルセリオンが俺を見た。


 赤黒い瞳。


「……来るの……?」


 声が静かになる。


「……なら、見せてあげる……」


 次の瞬間。


 地下から“何か”の咆哮が響いた。


 空気が凍る。


 明らかに今までと格が違った。


 しかも咆哮だけじゃない。


 地下から吹き上がる魔力圧そのものが異常だった。


 樹海全体が共鳴している。


 地面の根脈。


 木々。


 胞子。


 全部が地下へ向かって脈動していた。


「……本当に本体がいるんですね」


『ほぼ確定です』


 その時だった。


 灰狼の若い探索者が、崩れた木の陰で立ち尽くしていた。


 視線の先。


 そこには植物化した女性探索者がいた。


 半身を花弁に取り込まれている。


「……姉さん……」


 声が震える。


 知り合いだった。


 女性探索者はゆっくり目を開く。


 赤黒い瞳。


 だが一瞬だけ、人間の理性が戻った。


「……に、げ……て……」


 次の瞬間。


 黒根が女性の身体を無理やり動かした。


 腕が槍みたいに変形する。


 弟へ向かって突進した。


「っ……!」


 若い探索者が動けない。


 その時だった。


 月白が割り込む。


 銀閃。


 変異腕だけが切断される。


 さらに俺が浄化を叩き込んだ。


「【局所浄化】!」


 白光。


 女性探索者を覆っていた黒蔦が悲鳴みたいな音を立てる。


 だが完全には消えない。


『侵食深度が高すぎます』


「くっ……!」


 女性探索者が苦しそうに息を吐く。


「お願い……殺して……」


「そんなこと!」


「もう……戻れない……!」


 かなり重かった。


 灰狼メンバーの顔が歪む。


 だがその瞬間。


 ベルセリオンの声が響いた。


「……かわいそう……?」


 くすくす、と笑う。


「……でも、人間は……ずっとそうだった……」


 空気が冷える。


「……捨てて……壊して……汚して……」


 周囲の木々が呻く。


「……だから、全部つなげるの……」


 その言葉に、俺は違和感を覚えた。


 こいつ。


 ただ暴走してるわけじゃない。


 何か理由がある。


 しかも古代文明とも繋がっている。


 その時だった。


 地下から再び咆哮。


 今度は近い。


 かなり近い。


 ルナの表示が激しく点滅した。


【地下中枢反応急接近】

【樹海本体との接続率:91%】


【備考】

かなりまずい。


 直後。


 地下縦穴から巨大な黒腕が突き出した。


 空気が震える。


 圧倒的だった。


 しかも腕だけで十メートル以上ある。


「……え?」


 誰も動けない。


 その黒腕は、ゆっくり地上へ伸びてきた。


 まるで“何か”が地下から這い出ようとしているみたいに。








地下縦穴から突き出した巨大な黒腕。


 それだけで空気が変わった。


 重い。


 呼吸しづらい。


 周囲の胞子がまるで怯えるみたいに震えていた。


 樹海全体が、その存在を中心に脈動している。


 どくん。


 どくん。


 巨大な心臓みたいだった。


「……何だよ、あれ」


 灰狼メンバーの一人が呟く。


 声が震えていた。


 無理もない。


 あの黒腕から放たれている圧力は、今までの魔物と次元が違った。


 ヴェルドガルムですら前座に思える。


 しかも、その腕はまだ“先端”だけだ。


 本体は地下にいる。


 その事実がかなり怖い。


『超高濃度汚染生命反応確認』


「確認しなくても分かりますよ!」


 次の瞬間。


 黒腕が動いた。


 轟音。


 地面が吹き飛ぶ。


 巨大な根脈混じりの拳が、灰狼メンバーへ叩きつけられた。


「散開!!」


 九条の叫び。


 全員が飛ぶ。


 直後、着弾。


 衝撃だけで周囲の木々が粉砕された。


 しかも地面が腐っていく。


 黒い侵食液が広がっていた。


【名称】:深層樹腕グラディウス

【種別】:樹海中枢器官

【汚染分類】:超大型侵食体

【汚れ度】:EX++

【特徴】:超質量攻撃/侵食液散布/自己再生

【備考】:本体の一部。腕だけ。


「腕だけ!?」


『はい』


「嫌すぎる……!」


 さらにグラディウスの表面が裂ける。


 内部から赤黒い眼球が無数に出現した。


 全部こちらを見ている。


 ぞわり、と寒気が走った。


 次の瞬間。


 眼球群が赤く発光する。


『高熱反応』


「まさか!」


 直後。


 極太の黒光線が放たれた。


 轟音。


 空間そのものが焼き裂かれる。


「伏せろぉ!!」


 九条が結界を展開。


 だが一撃で亀裂が入った。


「うそだろ……!」


 しかも黒光線は止まらない。


 横薙ぎ。


 樹海が丸ごと抉られていく。


 あまりにも火力が高すぎた。


 レイナが歯を食いしばる。


「こんなの正面から無理!」


「でも止めないと地下行けません!」


 その時だった。


 ルナが解析を開始する。


【外殻解析中……】

【汚染流動確認】


【弱点候補】

・関節内部

・中央根核


「核持ちですか!」


 つまり再生型。


 核を壊さない限り終わらない。


 しかも巨大。


 かなり面倒だった。


 その瞬間。


 グラディウスの拳が再び振り下ろされる。


 今度は速い。


 空気が爆発した。


「主任!!」


 レイナが俺を突き飛ばす。


 轟音。


 直後、さっきまでいた場所が消し飛んだ。


 地面が陥没している。


「助かりました!」


「あとで掃除当番増やしてください!」


「理不尽!」


 だが冗談を言ってる余裕は少なかった。


 グラディウスは止まらない。


 しかも攻撃のたびに地面から黒根が増殖していく。


 樹海そのものが強化されていた。


 さらにベルセリオンが静かに歌い始める。


「……ねむれ……ねむれ……」


 歌声。


 だが聞いた瞬間、身体が重くなる。


 意識が沈みそうになる。


『精神汚染増加』


「また精神攻撃!?」


 かなり嫌だった。


 しかも周囲の探索者融合体エルディアたちまで活性化する。


 完全に支援型だ。


 ベルセリオン。


 かなり厄介。


 その時だった。


 月白が前へ出る。


 セレスフィアが白銀光を放つ。


「……黙れ」


 斬撃。


 歌声そのものを切り裂くみたいな一閃だった。


 空気が澄む。


 精神侵食が押し返される。


「月白さん本当に何者なんですか……」


『かなり強いです』


「知ってます!」


 だが、その瞬間。


 地下縦穴がさらに崩れた。


 巨大な通路が完全に露出する。


 地下深部へ続く螺旋樹路。


 しかもその奥から人工光が見えた。


「……光?」


『人工施設反応です』


 次の瞬間。


 ベルセリオンが笑った。


「……ようこそ……」


 ぞわり、と空気が冷える。


「……カルネディアへ……」


 直後。


 地下から機械音が響いた。


 ガコン。


 ガコン。


 金属駆動音。


 しかも複数。


 その時、地下奥の壁面が発光する。


 古代文字。


 ルナが即座に翻訳を開始した。


【古代浄化施設カルネディア】

【第七封鎖区域】


【警告】

《最終汚染封印継続中》


 空気が止まった。


「封印……?」


 つまり地下にいる“何か”は、昔から封印されていた。


 しかも古代文明が。


 かなり嫌な予感がする。


 その時だった。


 地下施設側の壁が開く。


 白煙。


 そして現れたのは、人型機械兵だった。


 白銀装甲。


 長槍。


 だが半身を黒根に侵食されている。


 赤黒い単眼が点灯した。


【名称】:古代浄化機兵アルケイン

【種別】:古代施設防衛兵器

【汚染分類】:機械侵食型

【汚れ度】:SSS

【特徴】:高出力浄化砲/近接殲滅/自己修復

【備考】:元は浄化側。現在暴走状態。


「敵変わった!?」


 だがアルケインは即座に武器を構える。


 白銀砲身が展開。


 次の瞬間。


 超高出力白光が放たれた。


 轟音。


 通路が吹き飛ぶ。


「浄化砲!?」


『高純度です』


「なんで敵の方が浄化強いんですか!?」


 しかもその白光、汚染だけじゃなく地形ごと消し飛ばしている。


 火力が雑。


 灰狼メンバーが必死に回避する。


「うおおっ!?」


「床消えた!!」


 実際消えた。


 地下通路が丸ごと蒸発している。


 さらにアルケインは止まらない。


 高速移動。


 一瞬で距離を詰めてくる。


 長槍突撃。


 火花。


 九条が受け止めた。


「っ、重っ……!」


 しかも機械なのに技術が高い。


 完全に訓練されている。


 槍術が洗練されすぎていた。


 さらに背後から第二機、第三機が現れる。


「増えるの!?」


『防衛兵器ですので』


「知ってますけど!」


 その時だった。


 俺はアルケインの装甲内部に違和感を見つけた。


 黒根。


 その奥。


 淡く光る白核。


 しかもその周囲に古代文字が刻まれている。


「……あれ、浄化炉?」


『可能性高』


 つまり。


 この機械たち、元は本当に浄化装置だった。


 なのに今は侵食されている。


 その瞬間。


 ルナが新たな解析結果を表示した。


【施設主機能推定】

・超広域浄化

・汚染封印

・生命侵食制御


【備考】

主任向き施設。


「なんで嬉しそうなんですかルナ」


『掃除施設ですので』


「まあ好きですけど!」


 だが次の瞬間。


 地下最奥から、さらに巨大な咆哮が響いた。


 空気が震える。


 施設全体が揺れ始める。


 アルケインたちの赤黒い単眼が一斉にこちらを向いた。


《封印維持不能》

《最終中枢覚醒開始》


 その瞬間。


 施設最深部の巨大扉が、ゆっくり開き始めた。

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