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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
45章 クロスステッチの魔女、「家」に帰る

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1224/1225

第1224話 クロスステッチの魔女、字の練習をする

 食事を取ってのんびりと物語本を読んだり、魔法について書かれたお師匠様の本を眺める。諸々が乾いて縫ったり刺したりする準備ができるまでは、もう少し時間が必要そうだった。


「いつ見ても、写本ってすごいと心底思うのよねえ」


 羊皮紙をぺらり、ぺらり、とめくりながら、ふと、そんなわかりきっていることが口から漏れた。本は、すべて手書きである。魔法で複製を作るとしても、これほど細かく沢山の情報を魔法で複製するのは、簡単ではない。かなり複雑な魔法になる。それに、本を書き写すことは修行として、善いことだとされていた。私も習ったし、製本まで教わったけれど……あの時写した本のことは、あまり思い出したくない。出来栄えがひどいものだったから。お師匠様は「最初はそんなものだよ」と言っていたけれど、本棚の奥深くに入れて基本的に出さないようにしている。


「マスターは、写本をご自分で作らないのですか?」


「字が綺麗に書けるようになった、って自信がつくまでは、書き写したとしても製本はしたくないかな……」


 練習するように言われているので、これでも練習をそれなりに頑張っている方ではあるのだけれど。まだ誤字は時々あるし、インク溜まりができてしまうこともある。写本はこれらがまったくないし、誤字を削ったり魔法で直した形跡もないものも珍しくない。つまり、一発でこれだけ綺麗な字を書けているのだ。本当に、すごいことだと思う。


「確か、マスターの好きなお話を前に書いておられたではありませんか。そういうの、またやって僕達に読ませてもらえたりしますか?」


「それは……確かに、練習はしないといけないものねぇ……」


 拒否しようかとも一瞬思ったけれど、確かに練習しないは重ねる必要があった。だから、ちょうど読んでいた物語の中の一本を書き写そうと決め、自分が書く用の羊皮紙を出してくる。いつも使う書き付け用の切れ端ではなく、ちゃんと四角く切った羊皮紙を使うことにした。魔法の申請のために、一生懸命書いたのだ。考えてみたら、前より字を書くことについても成長しているのかもしれない。


「羊皮紙、よし。本、よし。羽ペンも削る必要はなさそうで……インクは……あ、あったあった! この、ちょっと茶色っぽいのを使おう」


 本にインクがつかないように細心の注意を払って、私は机の上に諸々の準備をした。それから、タイトルの飾り字をインクを付けない羽ペンで空中になぞり、簡単に手の感覚で書き方を理解してから、ペン先をインクに浸した。

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