第1215話 クロスステッチの魔女、魔物の話をする
「あなた、魔物はあまり会わないようにしているのね」
「嫌いとかではないんですけれど……なんとなく、避けられるなら避けたいなあと。素材としていつもすべてを利用できるとも、限りませんからね」
魔物の討伐は、魔女も冒険者も兵士も騎士もやる。村人や旅人でも、出くわせば自衛のためにやる。大体の場合は魔力で気が荒れていて襲いかかってくるものだし――そうでない場合は飼い慣らすこともある――、出くわすとどちらかが痛い目を見ることになる。別段、死ぬのがかわいそうというわけではない。それはある種の傲慢だし、私と私の《ドール》たちはそこまで絶対的に強いわけではない。
「あとはまあ、ご覧の通り若いので。人間だった頃のように、まだ恐ろしく感じている可能性もそこそこあります」
「魔女は何もしてなくもそこそこ頑丈だし、あなたはちゃんと《身の護り》を自分にも《ドール》にもつけている。そこまで過剰に考えなくても、なんとでもなると思うのに」
半ば呆れたような口調で、シェーラ様にはそう言われた。ちなみにその間にも、私の骨と違って真っ白ではなく、水色がかった白い骨の破片は順番に石臼へ消えていく。そしてみんな、さらさらの粉になって受け皿に溜まっていた。すべて粉にし終えたら、魔法で石臼に残っていたのも受け皿に移し、すべてを持ち帰る仕組みだ。皿の方にも魔法が入っているから、どんなに大量の粉を溜め込ませても魔法を切るまで、溢すことはない。
「もうこのあたりは完全に、昔からの習い性と言いますか……」
「まあ、まだ若い子だものね。そのうち魔物に齧られかけたりして、なんだかんだ平気な自分に気づくと思うわよ」
口ぶりからしておそらく、自分か姉妹弟子あたりの実体験なのだろう。私は少しだけ笑って、その話を頷いて聞いた。いつかはそんな日は来るだろうけれど、今のところ、想像がまったくつかない。
「革細工ももう少し、できるようになりたいのですが……刺繍とは大きく、道具が違うじゃないですか。革縫い針は一本、いい子を持ってますが」
革で作ろうと思い立つことがなければ、中々機会がないのが私の中の現状だ。水袋のように液体を入れるものだと、あまり穴を沢山開けるものではないという感覚もある。
「私が革細工を覚えた時は、財布が最初だったわね。よっぽどのことがない限り、隙間や穴が空いたとしても硬貨より大きくはならないから」
「なるほど……いいかもしれません」
今回の牡鹿を財布にするのは勿体無いからしないけど、そのうち作ってもいいかもしれない。




