第1214話 クロスステッチの魔女、先達に習う
私が骨を粉にし終えて、すべてを瓶に入れた後。石臼の魔法を発動させて、臼の中に残っていた粉もすべて瓶に入れていた。石臼が回って粉を挽くのは川の力であって、魔法ではない。だから、石臼に刻み付けられている魔法は石臼を綺麗にするためのものであり、中に残された粉の一粒までを外に排出するためのものだった。
「シェーラ様は、何を粉に挽きに来たのですか?」
「私も骨よ。毛皮が欲しくて仕留めたのだけれど、骨の加工で使わないものはまとめて挽いてしまうことにしているの」
包みを解くと、その中は白く晒された獣の骨だった。破片になっているから何の獣かはわからないけれど、魔力を感じる。つまり、私がルイス達に仕留めてもらってきた普通の獣ではなく、魔物だ。すごいなあ、普段は《魔物避け》の魔法を息を吐くように使ってしまっているのもあるとはいえ、狙って出くわせるようなものでもないのに。それを毛皮目当てに見つけて、狩の獲物のように仕留めてきたのだから。
「ちなみに、それは何の骨なんですか?」
「氷柱鹿の牡よ、いい角も手に入ったわ」
鹿の魔物の中でも、氷柱鹿は冬に強くなる種の魔物だったはずだ。氷柱そのもののように凍りついた角は、冬を迎える度に伸びていく。複雑に枝分かれした枝角が大きく複雑であればあるほど、長い年月を生き延びてきた強い牡である証拠。それは、普通の鹿でも氷柱鹿でも変わらない。霜のように白く冷えた毛皮には、確かに魔力があるのは有名な話だった。とはいえ、そう簡単に仕留められる相手でもないはずだ――毛皮や角を傷つけないようにするのなら、余計に。少なくとも私は、どうしたらいいのかわからない。
包んでいたのは、兎の皮だった。見せてもらうと、ほとんどまるごと使っているような形をしているのに、どこにも傷がない。穴もなければ、傷もない皮は、買おうとするとかなり高値がつくものだとわかった。
「私の鹿は、うちの子達が仕留めた時にどうしても、少し傷がついてしまったんです。もちろん私はこの通り刺繍の魔女ですので、毛皮がすべて丸々傷もなく手に入る、とは思っていませんが……どうやったら、シェーラ様のように綺麗な皮が手に入るんですか?」
「種によっては、自分で捕まえてきたり家畜のように育てているわね。それで、こう、キュッと締めてしまうと、傷にはならないから」
やはり、狩の獲物で皮を傷なく、というのは難しいのかもしれない。魔法で呼んでも、殺されるとわかったらさすがに逃げると補足された。




