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天使か悪魔か  作者: まくらのおとも
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第六十八話


「ナクタ、こいつを縛っておいて。死なない程度に治療しといたから。」


 蓮はトルネウスの腹に突き刺した槍を引き抜き、ナクタにそう指示を出した。

 ナクタは何も言わずに地面に倒れ込むトルネウスを糸で縛り上げる。

 蓮はベルの前に来ると、再びナクタに話しかける。


「ナクタ、この檻壊せるよね?」


「……あぁ。それは可能だが、いいのか?」


「いいから。早くして。」


 ナクタは蓮の命令に従い、檻の上部を切断した。


「ありがとうナクタ。下がっていいよ。」


 蓮は蓋の空いた状態になった檻の中から、ベルを抱えて外に出した。

 そのまま地面にベルを降ろし、自分も視線が合うように座り込んだ。

 そして、今度は両手でベルの頬に優しく触れる。


「ベルちゃん。」


『レン、グン……』


「僕ね、もっとお話ししたい事がいっぱいあったんだ。」


『ゴロ、ジデ……』


「ベルちゃんのお話も、もっといっぱい聞きたかったんだ。」


『ゴロ、ジデ……』


「僕の手料理、美味しい美味しいって言って食べてくれて、すごく嬉しかったんだよ?」


『ゴロ、ジデ……』


「ベルちゃん。」


『ゴロ、ジデ……』


 蓮は立ち上がり、槍を構えてその穂先ベルの喉元に突きつける。

 そして——


「助けてあげられなくて、ごめんね。」


 ——ベルの首を切り落とした。


 蓮の手を離れた槍がカランカランと音を立てて地面に転がる。

 蓮は震える両手で転がり落ちたベルの頭部を抱きかかえた。


「僕ね、実はね、ずっと病院で寝たきりだったんだ。」


 ベルを抱える手に力が入る。


「だからね、ベルちゃんがね、僕の初めてのお友達だったんだよ?……なのに……なのに、こんなのって……こんなの、あんまりだよ……」


 蓮はベルの頭部を片腕で抱え直し、落ちている槍を拾い上げた。

 そして、地面に倒れ込むトルネウスにゆっくりと近づいていく。


「ねぇ。」


 トルネウスは青い顔で蓮を見上げる。


「お前はベルちゃんのお父さんだから……。お前を苦しめるとベルちゃんが悲しむと思うから……。苦しまないように、殺してあげるよ。」


「まっ!待っ——」


 蓮は槍を振り下ろしトルネウスの頭を突き刺した。


「ベルちゃんに感謝するんだね。」


 静寂の訪れた孤児院の地下室で、飛び回る蠅の羽音だけが五月蠅く耳を打ち付けた。





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 少しして孤児院に到着したルーは急いで応接室で見つけた階段を駆け降りた。

 降りた先で見つけた血の臭いが漏れ出している扉を潜り中に入ると、腕を組んで壁にもたれかかるナクタと、こちらに背中を向けて座り込む蓮の姿が目に入った。

 蓮のすぐ近くには蓮の槍に頭部を貫かれたトルネウスらしき人物の死体と、背中から羽の生えた頭部のない子供の体が転がっている。


「蓮!」


 ルーは名を呼び、座り込む蓮に駆け寄った。


「っ!これは……」


 正面に回ったルーが見たのは、赤い複眼の少女の頭部を抱え、静かに涙を流す蓮の姿だった。

 ルーの存在に気づいた蓮は、ゆっくりと顔を上げた。


「……ルー……」


「蓮、一体何が……」


「……僕、助けられなかった……ベルちゃんを……助けられなかったんだ……」


 蓮の顔からは表情が抜け落ち、ただただ涙が流れでている。


「ベルちゃん、ですか……」


 蓮の言葉で、ルーは蓮の抱える頭部がベルだったものだと察した。


「うん……ベルちゃんを助けられなかった……それに……ベルちゃんを殺して……ベルちゃんのお父さんも……」


 ルーはそっと蓮の頭を抱き寄せる。


「蓮、貴方は間違った事はしていませんよ。今はしっかりと泣きなさい。悲しむ事は、罪ではありませんよ。」


「うっぐ……ひっく……僕、僕は……!うわぁぁぁぁん!……」


 蓮は大声を上げて泣き始めた。



 暫くして、ルーは泣き疲れ眠ってしまった蓮を抱き上げた。


「父は……無事、なのか?」


「心配いりませんよ。疲れて眠っているだけですから。」


 いつの間にかレイヴィアもここに来ていたようだ。


「上に戻りましょう。いつまでもこんな場所にいたせたくはありませんから。」


「うむ。そうしよう。」


「だな。……ルーの旦那、これはどうする?持ってくか?」


 ナクタが持っているのはトルネウスが隠し持っていた魔書であった。


「そうですね。私が持っていましょう。」


 ルーはナクタからそれを受け取り、空間収納へと入れる。


「では、行きましょうか。」



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