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天使か悪魔か  作者: まくらのおとも
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第六十四話


 門から真っ直ぐに進んだ森の前で、ルー達は大氾濫スタンピートを待ち構えていた。

 そこに配置されたのはルー達〝天魔の双翼〟と、ジョセフ、アリステラのたったの八人だった。


「ここは私達だけで?」


 ルーはジョセフにそう問いかける。


「あぁ、そうだ。他のは左右に振り分けてる。中途半端に人数分揃えてもお前達には邪魔になるだろうからな。」


「ふむ。ならば気にする事も無いでしょう。クロ、アシュラ、元に戻っても構いませんよ。」


 人目を考えて力を抑えていたクロとアシュラだが、今ここに部外者はジョセフとアリステラだけ。

 アリステラは既に二人の本当の姿を知っているし、ジョセフも問題無いだろうと考え、ルーは小型化を解除する許可を出す。


「元に戻る?何の事だ?」


 頭にハテナを浮かべるジョセフをよそに、クロとアシュラは力を解放する。


「おいおいおい、マジかよ……」


 驚き、唖然とするジョセフの前には、久しぶりにその巨体を露わにしたクロとアシュラの姿があった。


「クロは縦棒業炎の三頭犬インフェルノケルベロス、アシュラは厄災の猿王ディザスターキングコングという種類の魔物です。アリステラさんのアドバイスもありまして、街では力を抑えて小型化してもらっていました。」


「どっちもSSランクの魔物じゃねえか……。おれも初めてこの目で見るぞ。」


 冒険者と同じように、魔物にもランクというものが存在する。

 小鬼ゴブリン粘液体スライムといったEランクから始まり、ドラゴンがSランクに設定されている。

 それ以上の存在として、SSランク、SSSランクもあるが、この大陸に現れる事は滅多に無い。

 ジョセフが見た事がないのも仕方のない事なのである。


「どうやらアリステラさんの忠告を聞いていて正解だったようですね。」


「当たり前だ!こんなもんがやってきたら、それこそ国が動くレベルだぞ!」


 大声をあげて興奮するジョセフの頭をアリステラは持っている杖でゴツンと殴りつけた。


「あいでっ!」


「そういきりたつで無いわ。今は仲間なんじゃから、これ程頼もしい事もあるまい。それに、そんな事を言うならば、そこのルーやレイヴィアはそれ以上の実力者じゃぞ。」


 ジョセフは口を閉じて黙り込んでしまった。


「大方そこらのSランクと同等とでもおもっとったんじゃろ。もっと見る目を養わんか。ギルドマスターの名が泣くぞ。」


 ジョセフは悔しそうに顔を歪め、声を絞り出した。


「……こいつら全員がEXランクとでも言うのかよ……」


「EXランク、ですか?Sランクまでしか聞かされていないのですが……」


 ルーのその質問に答えたのはアリステラだった。


「EXランクはSランク冒険者の中でも特に強大な力を持つ連中に与えられたランクじゃよ。その力は一人で一国を相手にできる程じゃ。さすがにそんな連中を同じSランクとして扱えんからのぉ。」


「EXランクはいわばギルドの特記戦力だ。こっちから頭を下げて籍を置いてもらってるような連中なんだよ。」


「国を潰せるような連中を野放しにはできんからの。」


「成程。そう言う事でしたか。」


 その後も話を続けていたルー達だったが、森の奥から大量の魔物の足音と木々を薙ぎ倒す音が微かに聞こえてきた。


「来たか……」


「そのようですね。」


 ジョセフとルーの声で、その場にいる全員が森の奥に目をやり、戦闘態勢に入った。

 その瞬間、多種多様の魔物が森の中から飛び出してきた。


「先陣は俺がいく!おらぁぁぁっ!!」


 真っ先に魔物の群れに襲いかかったのはジョセフだった。

 機械義手の右腕を振りかぶり、先頭の魔物にも振り抜いた。


「弾け飛べ!『爆拳ばっけん』!」


 ジョセフの拳が魔物の顔面にぶつかった瞬間、大爆発が起こり近くの魔物諸共吹き飛ばした。


「わしもやるかのぉ。」


 ジョセフに次いで動いたのはアリステラ。

 手に持つ杖を地面に突き立てる。


「『樹竜創造』」


 その一言で、杖を突き立てた地面から数本の木が生えてきて、それが竜を形作る。

 そしてその樹竜が魔物に襲いかかった。


「さて、私達も動きましょう。さっさと終わらせますよ。」


 ルーの指示で天魔の双翼も動き出す。

 イーラスの街を守る為の戦いが今始まった。





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 戦闘が始まり暫く経った。

 ルー達中央組の獅子奮迅の活躍によって、森から溢れ出る魔物達をなんとか抑え込めているが、それでも数が多く、全てとはいかない。

 ルー達を避けるように左右に分かれた魔物達は街へと接近しつつあり、他の冒険者達が必死に対処を続けていた。

 戦闘になれば当然、怪我人も出てくる。

 大怪我を負ったものは、蓮のいる救護テントに運び込まれていた。


「腕が……俺の腕が……」「ぐっ……うぅ……」「毒にやられてる!解毒薬を早く!」「回復薬ポーションはまだか!」


 苦しそうな呻き声や怒号の入り混じるテントの中で、蓮も特に重症の者達に回復魔法をかけ続けていた。


「よしっ。これで大丈夫!怪我は全部治したけど、血は戻らないからまだ動いちゃダメだよ。」


「すまねぇ。助かった。」


「レンさん!次はこちらの方をお願いします!」


「わかった!今行く!」


 蓮は次の怪我人の元へと向かい、回復魔法をかける。


「これでよしっと。」


「あんたが、レンか?」


 回復魔法をかけ終えた蓮にそう聞いたのは見慣れない人物だった。

 蓮は戸惑いながらも返事を返す。


「……そうだけど、何か用かな?治療が必要なようには見えないけど……」


「あぁ、俺はただの使いだからな。これを渡すように言われてる。ほら、受け取ってくれ。」


 そう言って差し出されたのは一枚の封筒だった。

 蓮は警戒しながらもその封筒を受け取ったが、裏にも表にも何も書かれていない。


「……これって、いったい誰から……あれ?」


 蓮が顔を上げると、先程の男は消えていた。

 蓮は封筒を乱雑に開けて中の手紙に目を通す。

 それを読み終えた蓮は困惑していた。


「……ゴルギオスに気をつけろって、いったいどう言う事?」


 そこに書かれていたのはそのたった一文だけだった。


「レンさん!こっちもお願いします!」


「あっ、はい!今行きます!」


 蓮は手紙をポケットにしまい、怪我人のもとへ急いだ。



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