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天使か悪魔か  作者: まくらのおとも
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第五十一話


 レイヴィアの大太刀を舐める様に眺めてブツブツと独り言を呟いていたカレイアは随分と長い間そうしていた。

 蓮は気にした様子もなく、楽しそうに鍛冶場の方を眺めていたが、それに気付いたガルドンが近寄って来た。


「おい姉御!……姉御!」


 ガルドンの声にカレイアはハッと顔を上げた。


「ガ、ガルドン!この大太刀を見てください!見た事もない素材でできているのです!金属でも鉱石でもない。魔物の素材が一番近いと思うのですが、私の知らない素材なのです!」


 鼻息荒く、ガルドンに詰め寄るカレイア。

 先程とは別人の様にハキハキと話している。

 カレイアのあまりの変わり様に、蓮はパチクリと目を瞬かせた。

 

 カレイアに詰め寄られたガルドンはため息を一つ吐き出し、興奮するカレイアを押さえつけ、椅子に座らせる。


「姉御の武器狂いに今更とやかく言う気はねえが、客人を待たすのはいただけねえぞ。」


 カレイアはみるみる顔を青褪めた。


「ご、ご、こめんなさい……。わ、わた、私、その……昔から、武器に、目がなくて……」


 頭を下げるカレイアを蓮は笑って許した。


 その後、ガルドンの監視のもと連の装備についての話に入った。


「武器は、槍……防具は、軽くて、動きやすさ重視……ですね……」


「うん、僕からの注文はそれくらいかな。正直武器とか防具について良く知らないんだよね。」


 えへへと恥ずかしそうに笑う蓮。

 口を挟んだのはガルドンだった。


「坊主は傭兵って訳じゃないだろ。冒険者か?」


「うん、昨日登録して冒険者になったんだ。」


「こんな辺境で登録するなんて珍しいな。坊主くらいの年齢なら安全な王都の近くまで行く奴が殆どだ。なにせこの近辺の魔物は比較的強い奴が多いからな。それに盗賊の類も多い。大抵の奴が他の場所で経験つんで、ランクを上げてから戻って来るんだよ。」


 ガルドンの言う通り、ここイーラスの街の冒険者は比較的年齢層もランクも高い傾向にある。

 冒険者の主な相手は魔物であり、強い魔物が生息する場所での依頼のランクは高くなる。

 なので、周囲に比較的強い魔物が多くて生息するこの街で登録したとしても受けられる依頼がより限られてしまうのだ。


「まあ、そこの姉ちゃんがついてるなら心配要らねえだろうがな。」


 ガルドンの視線はレイヴィアに向いている。


「うむ、当然だ。」


 ドヤ顔をするレイヴィアにガルドンはガッハッハと笑った。


「んで、坊主は従魔師テイマーだろ?なら隠密性も高い方がいいだろうな。」


「わ、私も……そう、思います……」


「そうなのかな?その辺りはお任せしちゃってもいいかな?僕があれこれ注文するより、やっぱりプロに任せた方がいいと思うんだ。」


「ガッハッハッ!そりゃありがたい!職人冥利に尽きるってやつだ!」


「が、がんばり、ます……!」


 カレイアも嬉しそうに口元をもにょもにょと動かし、目を輝かせた。


「なんだか嬉しそうだけど、普通は違うの?」


 首を傾げる蓮に、ガルドンが答える。


「そうだな。さっきも言ったように、この街には新人てのが殆どいねえ。それなりに経験を積んだ奴らが殆どだ。だからみんな、武器や防具に自分なりの拘りがある奴が多いんだよ。」


 蓮はへぇーと声を漏らす。


「まぁとにかく、俺達に任せてくれるってんなら期待しててくれ。最高のモンを作ってやるからよ。」


「うん!お願いするよ!」


 ドンっと胸を叩くガルドンと、その隣でコクコクと首を縦に振るカレイア。

 その後蓮の体のサイズを測り話し合いは一旦終了となった。


「また明日ここに来てくれ。いくつか案を纏めて、その中から選んでもらえるようにするからよ。」


 カレイアとガルドンによろしくと言って、蓮達はヘパストル工房を後にした。


 時刻は既に昼を過ぎており、蓮の腹の虫がなる。


「お腹すいたね。ご飯どうしよっか?」


 ルーから充分なお金を受け取っている蓮は初めての外食にチャレンジしてみようかと、食事処が立ち並ぶ場所へとやって来た。

 あちこちから食欲をそそるいい匂いが漂って来る。

 昼間から酒を飲んでいる者も多く、どこもかなり賑わっていた。


「父よ、あそこにしよう。いい匂いがする。」


「じゃあそうしよっか。」


 レイヴィアの提案で店を決め、中に入った。

 カウンターといくつかのテーブルが並んでおり、皆酒を飲みながら肉に齧り付いている。


「いらっしゃーい!二人と、従魔が二匹だね!空いてる席に座って!」


 中に入った蓮達にそう言ったのは忙しそうに料理を運ぶ猫獣人の女性だった。

 茶髪のショートヘアに髪と同じ色の瞳。

 腰のあたりから生えた尻尾がゆらゆらと揺れている。

 

 蓮は初めての外食にワクワクしながら空いている席に腰を下ろした。


 席について少し待っていると、先程の猫獣人の店員がやってきた。


「待たせちゃってごめんね!初めて見る顔だね。あたしはここ、〝夕焼け亭〟で働いてるミーナ。よろしくね!」


「こんにちは!僕は蓮!あとレイヴィアに、クロとアシュラだよ!よろしく!」


「うん、よろしく!じゃあ注文聞いちゃおうかな。もう決まってる?」


 蓮はミーナが来るまでに決めていた物を注文した。


黒角牛ブラックホーンカウのステーキが四つにエールが一つと水が三つね。すぐにもってくるから待っててね!」


 ミーナは注文を通しに厨房の方へ向かった。

 そして、待つこと数分。

 机には注文した物が全て揃っていた。


「これで全部ね!ごゆっくりどうぞ!」


「うわー、美味しそう!ありがとう、ミーナお姉ちゃん!」


 ミーナは蓮の言葉にふふふっと朗らかに笑って業務に戻っていった。


「いただきまーす!」


 蓮は早速ジュウジュウと音を立てるステーキに齧り付いた。


「うん!美味しい!」


 バクバクとステーキを食べていく蓮。

 レイヴィア達も美味しそうに頬張っている。


「美味しかったー。ごちそうさまでした。」


 食事を終え、満腹になった蓮はふぅーっと息を吐きながらお腹をさすっている。


「おっ、綺麗に食べたね!お皿下げちゃうね。」


「ミーナお姉ちゃん、ごちそうさま!すごく美味しかったよ!」


「それは良かった!よかったらお友達にも宣伝しといてね!」


 ミーナは蓮にウインクを飛ばし、重ねた皿を持っていった。



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