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天使か悪魔か  作者: まくらのおとも
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第四十四話


 翌日、この日はアリステラに料理を教わったメデュアが朝食を準備していた。


「今日はメデュアが作ってくれたの!?すごく美味しいよ!」


「ありがとうございます。蓮様。」


 食事を終えると、レイヴィアの魔力抑制の練習が開始する。


「と言っても、昨日伝えられる事は全て伝えたからのぉ……。」


 こうか?こうだろ。などと言いながらも全く進展のないレイヴィアにどうすれば良いかと悩むアリステラ。

 すると、隣で見ていた蓮がレイヴィアに近づいていく。


「レイヴィア、レイヴィア。」


「む?なんだ父よ。」


「こうね、グッてして、ギュギュギュってするんだよ?」


 少し期待して見ていたアリステラだったが、身振り手振りを交えてはいるが説明になっていない説明をする蓮を見て、やはりダメかとため息を吐く。


「——んで、あーしてこーしてこうだよ!」


 真剣な表情で黙って聞いていたレイヴィアは、成程と小さく呟くと腕を組んで目を閉じた。

 アリステラはどうせまた分かったフリだろうと期待せずに見ていると、レイヴィアから溢れ出ていた膨大な魔力が突如跡形も無く消え去った。


「なん、じゃと……」


 魔力の漏出を抑えるのは難しいことではない。

 ただ完全に漏出を無くすのは熟練の魔法使いでも難しい。

 アリステラも今となっては意識していなくとも行えているが、そうなるまでには長い年月を要した。

 それを先程まで魔力を撒き散らしていたような者が簡単に行った事に驚いたが、それ以上に、蓮のあの説明で完璧にこなして見せた事に徒労感を覚え項垂れてしまった。


「うむ、できたぞ。さすが父だな。わかりやすい説明だったぞ。」


「やったね、レイヴィア!こんなにすぐできちゃうなんてすごいや!……あれ?お婆ちゃんどうしたの?具合でも悪い?」


「……いや、何でもない。ワシは作った魔道具を見てくるから、後は好きにやってなさい。」


 遠い目をしたアリステラは、そう言って自宅へと戻っていった。


 蓮とレイヴィアはその後魔力の放出と抑制を繰り返して遊んでいた。


「うむ。もう何も考えずともできるな。」


「これでもう安心だね!」


「うむ、そうだな。……そうだ、今度は魔力を飛ばしてみるか。」


 突然そんな事を言い出したレイヴィアは、自分達が飛んできた海の方角へ向けて突然純粋な魔力の塊を飛ばした。


「うむ、できたな。あの生意気な亜竜ワイバーン共に届いただろうか。」


 くつくつと笑うレイヴィア。

 蓮はあーあとこの後に起こる事態を想像して何とも言えない顔をする。

 しばらく魔力を飛ばした方角を見ていると、影こちらへ向けて空を飛んでくる影が見えてきた。


「……ねぇ、レイヴィア。」


「来たぞ、父よ。」


 影はどんどんとこちらへ向かって飛んで来て、遂にその姿が鮮明に見える距離まで近づいた。


「ねぇ、なんかおっきくない?」


「うむ、前に見た奴よりも大きいな。」


亜竜ワイバーンって、足四本あったっけ?」


「む?あったんじゃないか?」


「あんな立派な角生えてたっけ?」


「うむ、ずいぶん立派な亜竜ワンバーンだな。斬りごたえがありそうだ。父よ、ちょっと行ってくるぞ。」


 レイヴィアは背中に背負った大太刀に手をかけると、少し屈むと一気に跳び上がった。


「あれ、亜竜ワイバーンじゃなくてドラゴンだよね……。」


 地面を蹴り跳び上がったレイヴィアは、亜竜ワイバーン改めドラゴン目掛けて一直線に進んでいた。


『gyaooooooooooo!!!』


 レイヴィアを目視したドラゴンは威嚇するように吠えると、近づいてくるレイヴィアに向けて速度を上げて突進する。

 挑発的な魔力を飛ばしてきた不届き者の息の根を止めるべく、鋭利な牙を剥き出しにして噛み付いた。

 ドラゴンはガチンと牙を打ち鳴らす。


「む。お前、ドラゴンではなないか。」


 直後、ドラゴンの意識は暗転した。



 蓮が少し待っていると、ズルズルと重いものが引き摺られる音が聞こえてきた。


「父よ。亜竜ワイバーンでは無くドラゴンだったぞ。」


 現れたレイヴィアは綺麗に首を斬られたドラゴンの胴体と、先程までそこに付いていた頭部を引き摺っていた。


「お帰り、レイヴィア。」


 蓮はそれだけ言うと、レイヴィアが持ってきたドラゴンの死体に目を向ける。


「これ、どうするの?」


「うむ。メデュアに焼いてもらおうと思ってな。これだけあれば、皆腹一杯に食えるだろう。」


 レイヴィアはドヤ顔でそう返答する。


 その夜は皆でドラゴンのステーキを堪能した。



 翌朝、朝食の際にアリステラから魔道具が完成したと告げられた。

 朝食を終えると早速お披露目となった。


「ほれ、これが完成した隠蔽の魔道具じゃ。」


 机に置かれたのはシンプルな真っ黒の指輪。

 ナクタとメデュアはそれぞれ自分の魔力を練り込んだそれを指にはめた。


「わぁー、消えちゃった。」


「指輪自体も隠蔽する魔法が組み込まれておるからの。……うむ。ちゃんと発動しているようじゃな。これで魔人だとばれることも無かろう。」


 指輪を付けた二人をじっくりと見たアリステラは、その効果に太鼓判を押した。


「有難うございます。」


「まぁこれなら邪魔になんねぇか。有り難く貰っとくぜ。」


「うむ。これで街に行っても問題なかろう。」


 街へ行く準備が整った。



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