第四十三話
無事に魔道具の作成も終わり、魔力が馴染むのを待つだけとなった。
その夜、アリステラの家で夕飯をご馳走になった蓮達はそのまま雑談をしていた。
「専用の魔道具かー。かっこいいなー。」
「俺はそんなもん付けたくねぇけどな。ジャラジャラと鬱陶しい。」
蓮達かわそんな話をしている中、メデュアは気になっていた事を聞く事にした。
「ルー様。小島でクロが拾ってきた本はお持ちですか?」
「ええ、一応持ってきましたよ。」
そう言ってルーは空間収納からあの鎖で縛られた不気味な本を取り出した。
それを目にしたアリステラは目を丸くし、驚きの声を上げる。
「ぬっ!お主、それをどこで!?」
「こちらに辿り着くまでに休息の為に寄った小島に落ちていた物ですが……貴方の物ですか?」
「……いや、ワシのものではないが、知ってはおる。それは悪魔召喚に用いる魔書じゃよ。しっかりと封印はされている様じゃが……。」
真剣な表情でそう話すアリステラ。
想像以上に危険な物と判明し、ルーはどうするべきかと考える。
すると、メデュアがある提案をする。
「その魔書は、アリステラ様に差し上げては如何でしょうか?アリステラ様は同様の物をお持ちですよね?」
「……うむ。確かに持っておる。……そうか、地下で見たのじゃな。」
メデュアが気づいたのはアリステラの言う通り、地下で同様の気配を放つ本を見た為。
呪具だと説明された剣や鎧が並ぶ中に一際厳重に保管されたその本が並んでいたのだ。
「ワシが貰い受ける事は可能じゃ。じゃが正直に言うと今持っておる魔書の扱いにも困っておる。悪魔は人間とも魔物とも違う生命体じゃ。その性質は邪悪そのもの。そんな物を召喚する物などさっさと破棄したいのじゃが……。」
「できない、と?」
「そうじゃ。そこにある魔書を燃やしたとしても、何処かで復活し、誰かの手に渡るのじゃ。そんな危険な真似はできんじゃろ。」
「なるほど。だから封印しているのですか。」
「それしか手がないからのぉ……。」
顎をさすりながら思い悩んだ表情を浮かべるアリステラ。
そんなアリステラに声を掛けたのは黙って話を聞いていた蓮だった。
「ねぇ、お婆ちゃん。お願いがあるんだけど……」
「ふむ。何じゃ?」
「お婆ちゃんが持ってる魔書、僕にも見せてくれない?」
「ふむ……。それは良いが、どうするつもりじゃ?」
「見てみないとわかんないけど、何とかできるかもしれない。」
アリステラは訝しげに蓮を見やる。
真剣な表情でアリステラから目を逸らさない蓮に、取り敢えず見せてみる事にした。
「良いか?見るだけじゃぞ?少し待っておれ。」
そう言ってアリステラは椅子から腰を上げ、魔書を取りに地下室へと向かった。
すぐに戻ってきたアリステラはその手にメデュアが見た魔書を持っていた。
その数は三冊。
どれもびっしりと魔法陣や文字の書かれた布で縛られている。
「ほれ、ワシが管理しておる魔書はこれで全部じゃ。」
机の上に置かれた魔書。
蓮はそれをじっくり見ていた。
「ちょっと足りない、かな……。」
「足りない、とな?一体なんの話じゃ。」
困惑するアリステラ。
「うーん……。ルー、言ってもいいかな?」
「そうですね……。アリステラさん、口外禁止の契約を結んで貰えますか?」
「それ程の事か……。あいわかった。契約を結ぼう。」
アリステラの同意の言葉により、ルーの契約魔法が発動する。
「これでここからの会話は全て口外禁止です。蓮、話してもいいですよ。」
蓮はアリステラに自分の能力である『配下創造』について説明した。
「——という能力なんだ。この魔書も使えそうなんだけど、少し数が足りないみたい。」
説明を聞き終えたアリステラは、黙って目を瞑っていた。
少しして、ようやく口を開く。
「これまで数多くの能力を見てきたが、完全な生命の創造は見たことも聞いたこともない。魔法生物を生み出す奴は何人か目にしたことがあるのじゃが……。」
「やっぱり秘密にしといた方がいいよね?」
「そうじゃの。ルーやレイヴィアのような強力な戦力を生み出せるとなれば、よからぬ事を考える者も多かろう。隠しておくべきじゃろうな。……何にせよ、この魔書は持っていっておくれ。」
「いいの?」
「ただの厄介払いじゃよ。お主らなら、仮に悪魔が出てこようがどうとでもなるじゃろうしの。」
ルーは三冊の魔書を受け取り、空間収納へとしまった。
「所で、先程足りないと言っておったが、具体的な数は分からんのか?」
「はっきりとは分からないんだけど……多分後一冊か二冊くらいだと思う。」
「ふむ。少し待っておれ。」
そう言ってアリステラは奥の部屋から一枚の紙とペンを持ってきて何かを書きはじめた。
「これは特殊な加工を施した紙での。ワシにしか書き込む事ができんようになっとるのじゃ。……よし、これでいいじゃろ。街に着いたら冒険者ギルドでこれを渡すと良い。」
蓮はアリステラから紙を受け取る。
「レンに魔書を渡すように書いておる。あそこでも魔書を管理しておる。」
それにルーは疑問を呈した。
「この手紙だけでそんな危険な物を渡してもらえるのでしょうか?」
「ふむ、問題ないじゃろう。その手紙にはワシに届ける為の仲介人じゃと書いておいたからの。」
「それって……。」
「うむ。嘘じゃな。ワシに受け取る気は無いぞ。そのままお主らにくれてやるわい。ほっほっほっほっ。」
心配そうな表情を浮かべる蓮に、アリステラは優しく微笑みかける。
「なに、心配いらんよ。彼奴らも魔書の扱いには困っておるはずじゃ。喜んで渡してくれるじゃろう。あぁ、ワシの居場所はばらさんでくれよ?おそらく聞かれるじゃろうからな。……もう寝る時間じゃ。ばばあの夜は早いでな。」
アリステラのその言葉で解散となり、蓮達は小屋へと戻り眠りについた。




