第四十話
老婆について行きたどり着いた先には森の中にひっそりと佇む木でできた小さな家があった。
「ここがワシの家じゃ。小さな家じゃからそこのでかいのは外で待っておれ。」
「アシュラとクロはそこで待ってて。森の中で遊んでても良いからね。」
アシュラとクロは大人しく家の外で待つことにした。
「さぁ、入りな。」
老婆に促され家の中へと入る。
家の中は綺麗に整理されており、香を焚いているのか良い香りが漂っていた。
「さて、椅子が足りんか。」
置いてある机が一つに椅子は二つ。
蓮達は五人いる為数が足りない。
老婆がコツンと手に持つ杖で床を突くと、床からニョキニョキと植物が生え四つの椅子が出来上がった。
「ほれ、そこに座りなさい。」
蓮達が素直に椅子に座ると、老婆も椅子に腰掛けた。
「さて、先ずは自己紹介でもしようかの。ワシの名はアリステラ。この森に住むただの老婆じゃよ。」
「僕は蓮だよ!ルーにレイヴィア、ナクタとメデュア。外で待ってるのがクロとアシュラ。皆んな僕の家族なんだ!」
蓮の紹介にアリステラは全員の顔を見やる。
「成る程のぉ。家族とな……。人間に亜人、それに魔族。何やら複雑な事象がありそうじゃが……。今は良い。お主らの目的を聞かせて欲しい。何用で人里離れたこの森の奥深くにやってきたのじゃ?」
真剣な表情で問いかけるアリステラに返答したのはルーだった。
「目的、と言われましても特に有りません。偶々たどり着いたのがこの場所だったと言うだけですよ。」
「偶々、のぉ……。冒険者か?それとも傭兵か?国に使える者では無かろう。」
ルーが返答しようとした時、前のめりになった蓮がそれを遮った。
「冒険者!お婆ちゃん、やっぱり冒険者っているの!?うわー、すごいや!」
興奮する蓮に訝しげな表情を浮かべるアリステラ。
ルーは話が進まないと思い、興奮する蓮を放置してこれまでの経緯を少し脚色を交えて話すことにした。
別の世界から来たというのは伏せ、入院中に何らかの魔法の暴発で飛ばされてしまったということにして。
「——と、いう訳でして。島を出てから偶々たどり着いたのがこの場所だったという訳です。」
「成程、のぉ……。まさかあの島から帰って来れたとは驚きじゃ。」
「知っておられるのですか?」
「皆、話くらいは知っておるよ。なにせ始まりの勇者が魔王を討伐した場所じゃからのぉ。」
「お婆ちゃん、それってあの絵本の話?」
「なんじゃ、それくらいは知っておるのか。まぁ治癒院に長年いたとて絵本くらいは読めるか。」
ルーはやはりと、心の中で思った。
手記に記された話からおおよその検討はつけていたが、アリステラの話でそれが確信に変わった。
島で見つけたあの絵本は事実を元にしたもの。
そして始まりの勇者が倒した魔王というのがレイヴィアの素体となったあの竜骨。
だとしたら同じく素体となったあの剣は勇者の剣と言ったところだろう。
アリステラの話から考察するに、島に残された人間の形跡は、それの調査に向かった調査団の残骸だろう。
これまで生きて帰ったものはいないという話だ。
「お主らの事情は把握した。この森を抜ければ街がある。まっすぐに進めば一月程で着くじゃろう。」
「本当!?お婆ちゃん、ありがとう!」
そそくさと立ち上がる蓮。
アリステラはそれを止める。
「まぁ待ちなさい。街に行く前にやらねばならぬことがあるじゃろうて。」
「?なにかあるっけ?」
「はぁ……。まずはお主、レイヴィアじゃったかの。そんな大量の魔力を撒き散らしたまま人の街に行く気か?騎士団に殺されるのがおちじゃぞ。それに外で待つ二匹の従魔、あれらもちと強力過ぎる。せめて従魔を証明する紋様でも刻んどらんと討伐されても文句は言えん。そこの魔族の二人はきちんと魔力を隠蔽しておるしバレる事も少ないじゃろうが、用心するに越した事は無かろう。まだまだ魔族に嫌悪感を抱くものは少なくない。特に傲慢な貴族連中に見つかれば奴隷として使われることになるじゃろう。ワシが手解きしてやるから、ここで準備を整えてから街に行きな。」
一気に捲し立てたアリステラ。
興奮していた蓮も落ち着き、素直に頷き肯定する。
「では早速と言いたいところじゃが、丁度昼時じゃ。先に食事にするかのぉ。ほれ、食材の調達に行くぞ。ついてきな。」
立ち上がり、扉に向かうアリステラにルーは声を掛けた。
「アリステラさん。食材なら手持ちがありますのでお譲りしますよ。」
ルーが空間収納から取り出したのは島で取れた肉や魚、果物などの食材達。
それを見たアリステラは大きく目を見開き驚きの表情を浮かべると、呆れるようにため息をついた。
「どれもこれも魔力の豊富な高級食材ばかり。これは常識を教えるところから始めんといかんのぉ……。」
ルーが取り出したのは食材をいくつか手に取り、奥のキッチンへと消えていった。
メデュアは手伝う為にアリステラの後を追い、他の面々は外でアシュラとクロと共に待つことにした。




