第三十七話
ボルドラがメデュア達の父親だと判明した後、いくつか別の話もしてから蓮達は拠点に戻ってきていた。
ステナは再び主として皆を纏めるために努力するそうで、ボルドラはその補佐をすると言っていた。
拠点に戻ってきた頃には既に朝日が顔を出していたが、流石に皆疲労していた為その日は一日休息に当てる事となった。
翌朝、目が覚めた蓮は既に活動を開始していた皆と挨拶を交わし、いつもの川に水浴びに行く。
冷たい水を浴び岸に上がると、メデュアが両手でタオルを広げて待っていた。
「蓮様、こちらへ。」
蓮は言われるがままメデュアの元へ歩み寄り、タオルで包み込まれる。
自分で出来るのに、と言いたかった蓮だが、メデュアが嬉しそうにしていた為何も言わずに身を任せることにした。
そのままメデュアに服を着せられた蓮は拠点に戻り朝食の席についた。
食事を運んできたのはメデュア。
蓮の前に食事を置いたメデュアはそのまま隣の席に腰を下ろし、朝食のスープをスプーンで掬い上げ、蓮の口元に運ぶ。
「……メデュア、流石にご飯くらいは自分で食べるよ。」
「そう、ですか……。手が生えて、少しテンションが上がってしまっていたようです。」
スプーンを蓮に渡すメデュア。
悲しそうな表情をするメデュアを蓮は見て見ぬ振りをして食事を始める。
ここで許してしまえば全てがメデュアの手によって行われてしまうと思ったからだ。
スープを平らげた蓮は、デザートの林檎もどきを飾りながら皆の様子を見る。
ルーを初めとして、皆の魔力が増えているように感じる。
かなりに人数を相手にし、ケルキュースという強力な魔人を倒したので別に不思議ではないのかもしれないが……。
「皆んな魔力上がった?」
気になった蓮は皆に聞いてみる。
ナクタはスープを口に運んでいた手を止め、蓮の質問に答える。
「そうだな。量もそうだが、質も上がってんぞ。蓮のブーストが効いてんだろうな。普通はこんなに短期間で成長するもんじゃねぇんだぞ。」
呆れたようにそう言うナクタに、蓮はあっけらかんと言葉を返す。
「強くなれるなら問題ないね。」
「まぁそうなんだが……。いや、何でもねぇ。蓮の言う通りだ。」
そこで一旦話が終わり、蓮は皆の食事が終わるのを待った。
食器の片付けまで終わり、皆が席についたのを確認した蓮はウキウキとした様子で口を開いた。
「じゃあ、行こっか!」
唐突に立ち上がり、そんな事を言い出した蓮に、ルーは質問する。
「どこへ行くのですか?」
「ふっふっふっ。それはついてからのお楽しみだよ。」
悪ガキのような笑顔を見せる蓮。
全員が言うつもりが無いのだと察し、仕方なく蓮について行くことにした。
着いたのは拠点のすぐそば。拠点としている竜骨の頭部、その目の前であった。
ルーはこの時点で蓮が何をするのかを察した。
「蓮、今回は成功しそうですか?」
「うん!今なら行けそうな気がする!」
「では、上に行きましょうか。」
蓮を抱き上げ、翼を広げるルー。
竜骨の頭部に突き刺さる剣の前へと降り立った。
よしっ。と蓮は気合を入れる。
「ルーは下でみんなと待ってて。」
「分かりました。何かあれば声をかけてください。」
ルーは蓮をその場に残し、再び翼を広げ飛び立った。
それを見送った蓮は剣の柄に付いている透明の宝玉に手を触れ魔力を高める。
「『配下創造』」
蓮の言葉に呼応するようにその場を光が包み込む。
それは剣のみならず竜骨全体をも巻き込んだ。
竜骨の前で待っているルー達はその光景に目を奪われていた。
「……なんつー魔力だ……。」
思わずそんな言葉がナクタの口をついて出る。
それ程までに膨大な魔力が竜骨を包み込んでいた。
数瞬後、包み込んでいた魔力の光が弾けるように消える。
「わあっ!」
蓮の短い悲鳴が聞こえ、即座に全員が飛び出した。
足場が無くなり空中に投げ出された蓮。
いち早く蓮の元へとたどり着いたルーがキャッチしようとしたその時、何者かが視界の前を横切り、一瞬にして蓮を奪い去ってしまった。
緊急事態を察知した全員が蓮を抱えて立つ女に即座に襲いかかる。
「待って!」
魔力を込めた蓮の言葉に全員の動きが止まる。
「みんな、僕は大丈夫だから。」
蓮は自分を抱える女を見上げる。
「助けてくれてありがとう。降ろしてくれる?」
女は素直に蓮の言葉に従い蓮をその場に降ろした。
「驚かしちゃってごめんね。この人は新しい僕達の家族だから。」
女を囲み武器や魔法を構えたルー達は、臨戦態勢を解除した。
蓮はそれを見てほっと息を吐き出し、改めて女に向き直る。
濃紺の髪に同じく濃紺の縦に割れた瞳。頭部には枝分かれした二本の角が生えている。
胸元はサラシが巻かれており、裾の絞られたぶかぶかなズボンを履いている。
蓮の視線を受けた女は背中に背負った幅広の大太刀を地面に置き、その場で跪いた。
「これからよろしくね!レイヴィア!」
蓮達に新たな家族が加わった。




