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天使か悪魔か  作者: まくらのおとも
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第三十六話


 蓮は元いた場所に戻ってきていた。

 クロにもたれて座る蓮は目を擦りながらルーに聞く。


「ルー、ちょっと寝てていい?眠くなってきちゃった。」


「ええ、ゆっくりとお休みください。」


 こくんと頷いた蓮はそのまま夢の世界へと旅立った。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 パチリと目を開けた蓮。

 ぐっと伸びをして上体を起こす。


「あれ?ここどこだろう?」


 辺りを見回しても誰もおらず、真っ暗な空間が広がっていた。


「なんだか見覚えがある気がするんだけどなぁー。」


 うーんと唸りながら記憶を辿ってみる。


「ダメだ。やっぱり思い出せないや。」


 結局思い出せずに諦めた蓮は、取り敢えず立ち上がりもう一度辺りを見回す。


「どこ見ても真っ暗だね。どこに行けばいいんだろう?うーん……。なんとなくこっちがいい気がする。よしっ、行ってみよう。」


 何かを感じた方向に進んでみることにした。


 どれくらい進んだだろうか。

 真っ直ぐに進んでいた蓮は現在、真っ白な神殿の前に立っていた。


「うーん、やっぱり見覚えがある気がするんだよなー。」


 そんなことを言いながら、蓮は神殿の中へと足を踏み入れた。

 

 中に入ると中央に祭壇があり、その上には金色のゴブレット。

 蓮はゴブレットを覗き込む。

 底には蛇の模様が彫られている。

 早速とばかりに蓮はゴブレットを手に取った。

 ゴブレットの中に溢れ出す赤い液体。

 芳醇な香りのするその液体を蓮は一気に飲み干した。

 ゴブレットと神殿は綺麗さっぱり消失し、蓮は意識を失った。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 パチリと目を開けた蓮。

 ぐっと伸びをすると、もたれかかっていたクロにお礼を言って立ち上がる。

 蓮が眠りについてから数時間程経過している。

 メデュアとナクタは既に戻ってきており、ルーと何やら話していた。

 蓮は二人と挨拶を交わし、話に参加する。

 どうやらボルドラが改めてお礼を言いたいと言っているとの事。

 蓮が眠っていた為、後程訪問すると伝えているそうで、早速今から向かう事になった。



 向かった先はケルキュースとの激しい戦闘が行われた屋敷跡。

 生き残った者達で瓦礫の撤去を行なっていた。

 その中にはステナの姿もあった。

 指示を出していたボルドラは蓮達に気がつくと、ドスドスと足音を立てながら近寄ってきた。


『初めましてと言うべきだな。我が名はボルドラ。其方が蓮だな?少年よ。』


「うん、僕が蓮だよ!初めまして、ボルドラさん!」


『エウラの呪いを解いたのは其方だと聞いた。感謝する。……そして、身内の問題に巻き込んでしまいすまなかった。』


 ボルドラは九つの頭を一斉に下げた。


「ううん。謝らなくてもいいよ。身内の問題って言うならどっちにしても僕達も無関係じゃないんだし。メデュアはもう、僕達の家族だからね!」


 腰に手を当て、胸を張ってドヤ顔をする蓮。

 キョトンと目を開くボルドラは、すぐに口を大きく開けて笑い出した。


『既にメデュアは其方の家族だったな。ならば身内と言っても違いない。確かにそうだ。だが、礼だけは言わせてくれ。ありがとう、蓮よ。』


「うん!ボルドラさんこそ、ルーとメデュアを手伝ってくれてありがとう!」


『なに、我が来ずとも最終的な結果は変わらなかったであろう。少しばかり時間を縮めたに過ぎんよ。……ただまぁ、その感謝は有り難く受け取っておこう。』


 蓮達はそれから暫しの間雑談に興じた。

 そんな中、ふと思い出したように蓮はボルドラに質問する。


「ねぇ、一個聞いても良い?」


『ふむ。我に答えられる事であれば何でも答えよう。』


「どうしてメデュアを特別扱いしてたの?」


 押し黙ってしまったボルドラは、ゆっくりと口を開いた。


『……ケルキュースは……彼奴は特別扱いなどしておらん。三人の娘を平等に愛しておった。不平等に扱っていたのは我の方だ。唯一我に似た特性を受け継いだメデュアを、我が特別扱いしてしまったのだ……。』


「え?受け継いだって……」


『?聞いておらんのか?三人の父親は我だぞ?』


 蓮はバッと振り向きメデュアを見る。

 そこには驚愕の表情を浮かべ、固まっているメデュアの姿があった。

 蓮は不思議そうに首を傾げるボルドラに視線を戻す。


「メデュアも知らなかったみたいなんだけど……」


『……。ケルキュースから聞いていると思っておったが……。』


 蓮は再びメデュアに視線を向ける。


「……いえ、お母様からは何も……。おそらく、ステナとエウラも知らなかったでしょう。……ボルドラ様が地上に上がってくる事もあまり有りませんでしたし……。」


 気不味い空気が流れる中、こちらに向かってくる足音が聞こえてきた。


「……えっと、お姉様。少し良いかしら?」


 声をかけてきたのは瓦礫の撤去作業をしていたステナだった。

 メデュアは思考を切り替え返答する。


「何か用ですか?」


「……これを。」


 そう言ってステナが差し出したのは拳より一回り大きい黒い宝石のような物。


「お母様の魔石です。お姉様が使ってください。……私には、その権利が有りませんから。」


 メデュアはゆっくりとステナに近づき魔石を受け取った。


「では、遠慮なく。……ありがとう、ステナ。」


 メデュアが優しい声音で告げたありがとうの言葉に、ステナの口角がピクピクと痙攣し、頬が少し紅潮している。

 笑顔になりそうなのを必死に抑え込んでいるのが丸わかりである。


「一つ、ステナに質問があるのですが、よろしいですか?」


「?何でしょう?」


「私達の父親がボルドラ様だと知っていましたか?」


 キョトンとするステナ。

 ボルドラとメデュアに交互に視線を向けた後、メデュアに視線を固定する。


「え……」


「え?」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


 ステナの驚きの声が辺りに響き渡った。



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