第三十一話
周囲が毒沼へと変わり、結界内に閉じ込められる結果となったルー達は動き出せずにいた。
「ん?どうしたの?」
そんな中、蓮に念話を飛ばしたのはメデュアだった。
「え?僕の魔力を使わして欲しい?……うん、いいよ。まだまだ余裕はあるから存分に使って。」
何やら考えがあるのか、蓮との繋がりを通して魔力受け取ったメデュア。
いつも以上に大量の魔力を受け取ったメデュアは表情を歪めつつもその魔力をなんとか制御し練り上げる。
「シュロロロ(『大地よ凍れ《アイスグラウンド》』)」
メデュアの魔法が放たれる。
ケルキュースの魔力により毒沼へと変えられた大地は、メデュアを中心に氷の大地へと塗り替えられていく。
「ナイスだメデュア!ルーの旦那、メデュアの魔法が続く間に奴とけりをつけるぞ!」
「それしか無さそうですね。クロはここでメデュアと蓮の護衛を。ナクタ、アシュラ、行きますよ。」
ルーが結界を解くと、ルー、ナクタ、アシュラの3人はケルキュースに向けて駆け出した。
ルーはすぐさま『天剣武装』を発動し、ケルキュースに飛びかかる。
「喰らいなさい。」
ルーは追いかけるように飛んでくる毒弾を避けながら、ケルキュースの巨体を斬りつけていくが、全身を覆う鱗に阻まれ生身の部分までは届かない。
「ちっ。さすがに硬いですね……」
次いで攻撃を仕掛けたのは半魔物化したナクタ。
「おらぁ!!」
巨大な一本の槍を生成すると、ケルキュースの顔目掛けて振り抜いた。
が、シュルリと槍を避けたケルキュースは、そのまま頭を振ってナクタを頭突きにより吹き飛ばした。
「グォォォォォ!!」
飛ばされるナクタと入れ替わる様にケルキュースの眼前に現れたのは狂戦士状態のアシュラ。
隙が生じたケルキュースの頭部にアシュラの拳による渾身の一撃が直撃する。
「ジュァァァァァ!!」
悲鳴を上げながら地面に叩きつけられたケルキュース。
アシュラは地面に降り立つと、追撃を行う為ケルキュースへと駆けた。
再度拳を振り上げたアシュラだったが、横から風切音が聞こえ視線を向ける。
そこにはケルキュースの巨大な尾が迫っており、アシュラは追撃を諦めて足を止め、腕をクロスして防御体制を取った。
鞭の様に振られたケルキュースの尾がアシュラに激突する。
拮抗したのはほんの一瞬間。
アシュラは踏ん張りきれず、跳ねる様に何度も地面に叩きつけられながら転がっていく。
その後も三人はその身に傷を増やしながらも果敢に攻め続け、徐々にではあるがケルキュースにダメージを与えていく。
「ジュラァァァァ!!」
ちょこまかと飛び回りながら攻撃を繰り返す三人に痺れを切らしたのか、ケルキュースは今まで以上に魔力を練り上げ魔法を放つ。
三人は魔法の発動を察知し、ケルキュースからさっと離れる。
メデュアの魔法により凍った地面がガタガタと揺れる。
次第に揺れは大きくなり、三人は警戒を強めていく。
「来るぞ!」
ナクタがそう叫んだ瞬間、地面から毒液が柱のように吹き上がる。
毒液でできたその柱はケルキュースを囲むように増え、最終的にはその数を七つにまで増やした。
「おいおい、まじかよ……。」
ナクタの視線の先、柱の先端部分が蛇の頭部へと変わり、地面から生えるケルキュースの分身出来上がり、そいつと目が合う。
「くそっ!」
口を大きく開けて襲いかかる分身体。
ナクタは即座に横に飛び迫り来る分身体をかわす。
「チッ……。掠っちまったか……。」
何とかかわしたナクタだったが、腕が僅かに掠ったようで、腕が黒く変色している。
「ガハッ……。ルーの旦那!アシュラ!その分身体に触れんじゃねぇぞ!毒への耐性がなけりゃ即座にあの世行きだ!」
ナクタの毒への耐性はかなりなもの。
それにも関わら血を吐き出すナクタの姿からケルキュースの毒がとてつもなく凶悪なものであるとわかる。
「ナクタ!今解毒を——」
「蓮!俺はいい!他の奴らに解毒と回復をかけ続けろ!」
ナクタは自身の能力である『毒喰者』を発動する。
「……こんな毒くらい喰らって物にしてやる。蠱毒の魔人舐めんじゃねぇぞ。テメェの毒、もっと寄越しやがれ。」
ナクタは口元を汚す血を雑に拭うと、こちらを見つめる分身体に向けて獰猛な笑みを浮かべて襲いかかった。
ナクタの忠告を受けたルーとアシュラは回避に専念する事となり、かなりの劣勢を強いられていた。
「このままではジリ貧ですね……」
空中を飛び回り、敵の攻撃をかわしながら何か手は無いかと考えるルー。
その時、大きな魔力の奔流を感じ、そちらへと視線を向ける。
視線の先には腕から血を流す蓮の姿。
そして、驚愕の表情を浮かべるエウラとルーの感じた魔力の原因とみられる二メートル程の大きさをした灰色の卵が一つ。
その卵にはヒビが入り、今まさに孵化の瞬間を迎えようとしていた。




