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天使か悪魔か  作者: まくらのおとも
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第二十四話


 拠点からそれほど遠くない位置にて両者は対面していた。

 一塊で真っ直ぐに向かってきていた集団は、蓮達の姿を捉えるとそれを囲むように散開した。

 先頭に立つルーはその様子に何も言わず、相手の準備が整うのを待つかのようにじっと集団の後ろの方に視線を向けていた。


「……さてと。一応聞いておきましょうか。私達に何か御用ですか?」


 ルーは集団の先頭に立つフードの男を無視して集団の奥に視線を向けたままそう告げる。

 馬鹿にされていると感じたのか、フードの男は懐に忍ばせた短剣に手を伸ばすが、背後から声が聞こえその動きを止めた。


「あんな物を送り付けておいて良くそんな事が言えましたわね。」


 集団が割れ、その間をゆっくりと進んできたのはドレスに身を包んだ金髪の女性。

 眉間に皺を寄せ苛立ちをあらわにするその女性は、メデュアの妹の一人であり、今回の件の首謀者であろうステナである。

 ステナはフードの男の隣で足を止め、ルーを不機嫌そうに睨みつけている。

 しかし、そんな視線を気にも留めていない様に、ルーは変わらぬ微笑みで言葉を返す。


「気に入りませんでしたか?落とし物を届けて差し上げたのですが……。あれは、あなたの所有物でしょう?」


「でしたら、私のお姉様も返してくださるかしら?あれも私の所有物でしてよ?」


「おや、ご自分で捨てた物を態々拾いに来たのですか?随分と卑しい人なようだ。」


 ルーの微笑みは嘲笑へと変わる。

 一時は口角を上げていたステナであったが、すぐに眉間の皺が復活し、ギシリと奥歯を鳴らした。


「チッ。生意気な。この人数差でよくそんな態度が出来ますわね。あなたの目は節穴かしら?」


「くっくっくっ……。おっと失礼。余りに的外れな事を言うものですからつい笑ってしまいました。逆に聞きたいのですが……。そんな有象無象を引き連れて強者にでもなったおつもりですか?」


 ルーのその言動に、ステナの額には青筋が浮かび上がる。

 そして有象無象と呼ばれたステナの配下の者達からは殺気が膨れ上がり威嚇の唸り声があちこちから聞こえてくる。

 それでもルーの態度も、そしてその後ろに控えるナクタ達の態度も変わらない。

 クロは少し興奮しているのか鼻息を荒くしているが……。


「こ、ろせ……。殺せ!一人残らず殺し尽くせ!」


 ステナの悲鳴のような金切声が森の中に響き渡る。

 配下達の唸り声は怒号へと変わり、ルーを筆頭に蓮達を殺すために迫ってくる。

 ルーは落ち着いた様子で指示を飛ばした。


「蓮は皆にバフをお願いします。メデュアは蓮の護衛を。ナクタとクロは後ろ半分の奴らを頼みます。アシュラは私と共に前を叩きましょう。では、皆頼みましたよ?」


 ルーの指示を受けた面々は何を言うわけでもなく各々の仕事に取り掛かる。


 蓮はすぐさま全員へとバフをかけると、メデュアが作り上げた氷のドームの中へとその身を隠した。

 メデュアはそのドームのすぐ側で警戒する。。


 クロとナクタは蓮のバフを受けた直後、爆発的に魔力を昂らせ迫り来る敵に向けて駆け出した。

 クロは雄叫びをあげると、真紅に燃え盛る炎をその身に纏い次々に敵を燃やし、鋭利な爪で引き裂き、強靭な牙で噛み殺していく。

 ナクタは瞬時にルーとの戦闘で見せた半魔物状態へと変体すると、両手に持つ槍と背中から生える四本の脚で巧みな攻撃を繰り出していく。繰り出されたその攻撃に少しでも掠ったものは泡を吹いてその場に倒れ伏し、苦しみ悶えた後、生命活動を停止する。

 

 そんな二人の猛攻を抜け、蓮が身を隠すドームに近づこうとしたものはメデュアの見開いた瞳に捉えられ、その動きを止めた瞬間、氷の刃にその首を飛ばされる。

 メデュアの魔眼に対抗できるものは存在しないようで、次々に迫ってはぴたりと動きを止め、その命を散らしていく。


 後方を任された二人とは違い、アシュラとルーはすぐには動き出さずに、敵の動きを見ていた。

 直後、ルーは飛んできた黒塗りの短剣を瞬時に生み出した長剣で弾き飛ばすと、その短剣の持ち主である黒フードの男に視線を固定したままアシュラに話しかけた。


「あの男は私が相手をしますので、他の者達は任せてもいいですか?」


 その問いかけにアシュラは一つ頷き返答すると、普段は抑え込んでいる暴力的な魔力を解放した。

 解き放たれた魔力は暴風を巻き起こし、目を血走らせて迫ってきていた者達の足を止めさせた。

 暴風が収まり、再び敵へと駆け出そうとしたステナの配下達の目には、先程よりも一回り大きくなり、はちきれんばかりの筋肉の鎧を纏い、浮き上がった血管がドクドクと脈打つアシュラの姿が映った。

 普段見せる事のない獰猛な笑みを浮かべたアシュラは、その場で拳をぐっと握り込むと、その拳を正面へと振り抜いた。

 音を置き去りにする程の速度で振り抜かれた拳からは衝撃波が発生し、木々を薙ぎ倒し、地面を抉り取りながら一直線に森の中を駆け抜けた。

 その直線上に居た者達は反応することすらできずに吹き飛ばされた。

 余りに常識外れな攻撃を目の当たりにしたステナの配下は、動きを止めてしまいアシュラが再び拳を握り込むのを見て堪らずその場から逃げ出していく。

 だが、アシュラから放たれる第二波により、その生涯に幕を下ろす事となった。



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