第二十三話
館の前の広場には多くの魔人と魔物が集まっていた。
ステナはずらりと並ぶ配下達を眺め、口を開いた。
「集まりましたわね。」
「お姉様、口元が汚れておりますわよ?」
「あら失礼。」
ステナは二股に割れた舌先で口の端を汚す赤い液体をチロリと舐め取り、話を続ける。
「私に喧嘩を売った羽虫を消しに行きますわ。……悪辣な我が姉も、ね。」
一部を除き、事情を知らない者達からざわめきが起こる。
ステナはそれを無視して集団の先頭にいるフードの男に指示を出す。
男は諜報を担当する者達の纏め役であり、メデュアの生存をステナに報告したのもこの男であった。
「貴方、案内しなさい。奴等の居場所はわかるのでしょう?」
男はその問いかけに無言で頷き、蓮達の拠点に向けて歩き始めた。
その後ろを他の魔人、魔物達も追従する。
「……私を舐めたこと後悔しなさい。」
そう呟き歩き出したステナの後ろ姿をエウラはじっと見つめていた。
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最後の襲撃から丁度1週間。
拠点にて日課である魔導書の解析を行なっていたルーは、真っ直ぐにこちらへと向かってくる集団の魔力を感知し、パタリと魔導書を閉じた。
「ふむ。早速来ましたか。」
思った以上の大所帯ではあったが、その顔に焦りといったものは見られない。
ルーは徐に立ち上がり、皆を呼び集めるた為に動き出した。
槍の訓練をしていた蓮とナクタを連れて拠点へと戻ると、既にアシュラ、クロ、メデュアの3人は敵の集団を察知し拠点に戻ってきていた。
クロはナクタに負けたあの日から初めての蓮との戦闘となる為、全身から溢れんばかりの戦意を漲らせている。
が、それに引き換えメデュアはかなり分かりにくいが少し浮かない顔をしていた。
今回の敵は元とは言えメデュアの仲間だった者達だ。やはり戦いたくはないのだろうかと思った蓮はメデュアへと声をかける。
「大丈夫?無理しなくてもいいんだよ?」
メデュアは首を横に振り、大丈夫だと蓮に伝えた。
「今回の目的が自分だから申し訳ねぇとでも思ってんだろーよ。馬鹿な考えっうおっと!」
ナクタのその言葉に、メデュアは鋭く魔力を飛ばし威嚇するが、それが図星であると認めてしまっているようなものだ。
それを見た蓮は一瞬キョトンとした後、あははっと笑い声を上げた。
「なーんだ。そんな事考えてたの?メデュアは僕の家族なんだよ?そんなの気にする事じゃないよー。」
「な?だから馬鹿だっていったろ?」
ニヤニヤと揶揄うようにメデュアにそう告げたナクタは、打って変わって真剣な表情でメデュアに視線を向け言葉を続けた。
「ただ、元仲間と殺りあう事にちょっとでも抵抗があるっつーなら大人しくここで待ってろ。そんな奴、邪魔になるだけだ。」
剣呑な空気を感じ取った蓮が口を挟もうとするがナクタはその隙を与えず更に言葉を続ける。
「別にそれでも攻めはしねぇよ。俺が言いてぇのは中途半端な気持ちで行くんじゃねぇって事だ。そんな状態で死にでもしてみろ。後悔どころの話じゃねぇだろ。」
メデュアは珍しくその顔をぐしゃりと歪め、悔しそうな表情を浮かべる。
すぐにいつもの無表情へと戻ったメデュアはナクタに一言礼を言うと、蓮にもう一度大丈夫だと思念を送った。
黙って様子を見ていたルーはパンパンと手を叩き皆の注目を集めた。
「さて、そろそろお客様を迎えに行きましょうか。一先ず私が話しますので、蓮は後ろにいてくださいね?蓮の守りはメデュア、あなたにお任せします。」
ルーは蓮とメデュアが頷いたのを確認すると、来客を迎えるべく毒沼の森の方角へと向かうのだった。




