第二十一話
久しぶりに拠点に六人全員が揃ったことでテンションの上がっている蓮はひたすらに話し続けていた。
気を利かせたルーが、蓮に三人を休ませる様に伝えると、蓮はハッとした表情を浮かべ、話すのをやめて休む様に促した。
アシュラ、クロ、メデュアの三人は眷族の楽園に入り、ゆっくりと体を休めることになった。
その夜、蓮が寝たのを確認したルーはナクタと二人で森の中にいた。
暗闇に包まれた森の中でルーが魔法で作り出した光球だけがあたりを照らしている。
「今日はお客さんが多いですね。やはり狙いはメデュアで確定でしょうか?」
「まぁタイミング的にそうなんじゃないか?あいつらが帰ってきてすぐ見張ってたやつらも動いたしな。」
五度目の襲撃以来、蓮達の拠点を監視している者がいる事は分かっていたが、動きが無かった為放置していたのだ。
それが昼間メデュア達三人が拠点に戻ってきた途端姿を眩まし、夜になってその数を増やして戻ってきていた。
「さて、この辺りでいいでしょう。……そろそろ出てきてもらえませんか?」
ルーが後ろを振り返り、暗闇の中にそう話しかける。
キンッ!
その問いかけに対し、返ってきたのは細く鋭い針。
ルーが右手に生み出した剣でそれを弾くと、二人を囲む様にぞろぞろと多種多様な魔物達が姿を見せた。
そして、ルーの視線の先にはリーダーと思わしき魔人の男。
紫色の髪をオールバックにした壮年の男性。
目を細めルーを睨みつけるその男の両手には指の間に挟む様に数本の針が握られている。
「あいつの相手はルーの旦那に任せていいか?」
「えぇ。ナクタは他のをお願いします。」
「あいよ。」
直後、黄金の輝きが暗闇を吹き飛ばした。
数分後、先程と変わらぬ姿で立つルーとナクタの周りには無数の魔物や魔人の死体が転がっていた。
首をへし折られている者、体に大きな穴が空いている者、細い糸で絡みとられ、口から泡を吹いている者など、死屍累々といった様相であった。
そして、二人の目の前にはルーが相手をした壮年の魔人が仰向けに倒れていた。
手足は真っ黒に炭化し、顔の半分が焼け爛れており、粗い呼吸を繰り返している。
「あぁー。旦那、殺さねぇのか?」
「先程から質問しているのですが、何も答えてくれないんですよね……。」
「……この状態で生きてるだけでもなかなかのもんだと思うけどなぁ。」
その後もルーが目的や指示を出している者などをもはや虫の息の魔人に聞いていると、拠点側からドスドスという足音が聞こえてきた。
「そちらも終わりましたか。早かったですね。」
森から姿を現したのは、アシュラであった。
左手に何かを握りしめている。
「あぁ、そちらも情報源を残してくれたのですね。良かった。何も話してくれなくて困っていたところだったんですよ。」
アシュラの左手に握られているものは、力なく項垂れる敵の魔人であろう女であった。
アシュラはルー達の元へと歩み寄ると、倒れ伏している壮年の魔人の近くにその女を投げ捨てた。
「ねぇ、また僕を除け者にして酷いんじゃない?」
そう言いながらアシュラの背後からひょっこり顔を出したのは眠っていたはずの蓮。
襲撃の騒がしさに目を覚まし、ルー達の元へ向かうというアシュラについて来たのだ。
アシュラは拠点に残っている様になったのだが、主人である蓮にどうしてもと言われ仕方なく連れてきたのだった。
今までの襲撃についても蓮は気付いていたようなので、これ以上隠していてもしかたがないだろうと、ルーは今までに得た情報を全て蓮に説明した。
「ふーん。なるほど……。メデュアって自分の話全然したがらなかったもんね……。それで、この人たちはメデュアを取り返しにきたの?それとも殺しに?」
「それは今のところ不明です。皆話してくれませんでしたので……。」
「じゃあ、この人たちに喋ってもらおう。」
蓮は力なく倒れ伏す二人の魔人に向けて右手を向けると、『回復』と唱えた。
みるみるうちに傷がなくなっていく二人の魔人。
最初に反応を示したのは壮年の男の方だった。
蓮の魔法に目を見開いて驚いていたが、さっと起き上がり一番近くにいた蓮に向けて針を飛ばそうと振りかぶる。
「やらせる訳ねぇだろ。おい、蓮。そういうことすんなら先に言えよ。あぶねぇだろーが。」
「あはは。ごめんね。みんないるんだし大丈夫だと思って。」
笑ながらそんな事を言う蓮に、ナクタはため息を吐き出してから二人の魔人に目を向ける。
針を放とうとしていた壮年の魔人は振りかぶったまま動きを止めており、女の方は地面に倒れたままである。
壮年の魔人がうごき出した瞬間にナクタが糸で拘束したのだ。
ため息を吐き出したナクタにもう一度ごめんねと言った後、目の前で固まる壮年の魔人に話しかけた。
「これでちゃんとお話できるね!大丈夫、何があっても僕が治してあげるから!ね?」




