第二十話
三人が向かった先で目にしたのは三体の魔物であった。
その姿が見えると、蓮はすぐに走り出して、一番前にいた大きな猿の魔物に飛びついた。
「みんな、おかえり!」
弾ける様な笑顔で蓮がおかえりと言った相手は、アシュラ、クロ、メデュアの三人であった。
皆、その身に秘める魔力が三ヶ月前と比べて随分と増えており、それぞれ進化したのか、見た目も変わっている。
まずはアシュラ。
『災厄の猿王』へと進化を遂げ、真っ白だった体毛は血の染み込んだ様な赤黒い色に変わり、元々大きかった身体はもう一回り大きくなっている。
そして、火山地帯での激戦を物語るかの様に、傷により左目が塞がってしまっている。
次にクロ。
アシュラと同様に進化を遂げ、『業炎の三頭犬』へと進化し、全身を深紅の体毛に包まれ、中央の頭部から背中にかけて、炎の様な立髪が生えている。
体の大きさは変わっていないが、より筋肉質な体つきへと変化している。
最後にメデュア。
他の二人に比べると変化は少ない。
見た目は大きく変わっておらず、体表の色が灰色へと変化している程度のものだ。
しかし、もっとも珍しい変化を遂げたのはメデュアであり。
それは魔眼の開眼。
種族的な進化はなかったものの、『停滞の魔眼』という、視線をむけた相手を一時的に硬直させる魔眼を開眼させたのだ。
未だ上手く制御が出来ず、普段は目を閉じているようだが、蛇特有のピット器官により動きに支障はない様だ。
これを聞いて喜んだのはもちろん蓮だ。
アシュラには傷がかっこいいと、メデュアには魔眼なんで羨ましいと目をキラキラさせながら言った。
そしてクロの毛並みが前よりもふわふわになっているのを気に入った様で、その背に乗せてもらい拠点へと戻るのだった。
その姿を見ていたナクタは内心やっぱりなと思いながらため息を吐いていた。
「ナクタ、どうかしたのですか?」
「ん?あぁ、ルーの旦那か。いや、あいつらの進化がいくらなんでも早すぎんだよ。それにメデュアは魔眼の開眼だろ?俺もこの三ヶ月で自分でもびっくりするぐらい成長してるからそんな気はしてたんだが……。」
魔物の進化についてはほとんど何も分かっていないのだが、決して短期間で起こる様な事柄ではなく、長い年月を経て進化を遂げるのが一般的である。
また、魔眼の開眼に至ってはその数自体が極端に少なく、非常に珍しい存在である。
その為、三体がほぼ同時期に進化及び魔眼の開眼を迎えるという状況は異常事態と言える。
ナクタ自身、五体の魔人を魔石ごと食らったとは言え、自分でも驚く程の成長を遂げている。
確実に蓮の存在が原因だろうとナクタは考えていた。
「なるほど、その事でしたか……。これは予想なのですが、蓮と繋がっているパスを通して蓮の持つ膨大な魔力に触れている私たちは、その刺激を受け成長が促進されているのだろうと考えています。私は蓮の魔力から生まれた存在ですから言うまでもありませんし、魔人や魔物にとって魔力は生命力とほぼイコールの存在です。そういった事が起きても不思議ではないでしょう?」
ルーの説明にナクタは確かにそうかもしれないと納得した。
魔物や魔人といった魔に属するものは比較的魔力による影響を受けやすい。
火山地帯に火属性を得意とする魔物が、毒沼の森には毒を持つ魔物が多く生まれる事は、環境魔力とでもいえるその地に存在する魔力の性質に影響される事が原因だと考えられているからだ。
それほど魔力と魔物は密接に関係している為、ルーの言うように蓮の持つ膨大な魔力に触発された可能性は高いだろう。
ナクタは、強くなって悪い事は無いでしょうというルーの言葉に頷き、帰ってきた三人に楽しそうに話しかける蓮に、改めて心の中で感謝した。




