第十九話
あれから約三ヶ月が経過した。
現在、拠点には蓮、ルー、ナクタの三人しか姿がない。
あの日、話し合いで毒沼の森の探索を見送ってから二日後に蓮とルーのもとにアシュラ、クロ、メデュアの三人が修行の為にしばらく此処を離れたいとの申し出があったのだ。
クロとメデュアはナクタに蓮を連れ去られてしまった時に何もできなかった事を悔やみ、レベルアップを図りたいとの事で、アシュラはその監督をすると言う。
蓮は絶対死なない事を条件に許可を出し、それを承諾した三人は、強力な魔物が蔓延る火山地帯のへと向かった。
その後、ルーはすぐにナクタに拠点を中心に警戒網を敷くように頼み、ナクタは細い糸を張り巡らせることにより侵入者を察知できるようにした。
蓮には今までのように拠点から離れた場所まで散策に行く事を禁止し、常にルーかナクタと共にいるようにお願いした。
それから約三ヶ月が経過した現在、何事もなく三人での生活を続けている。
が、実はこの三ヶ月で五度、魔人と魔物による襲撃があった。
何れも皆が寝静まった夜中の奇襲だったのだが、ナクタの糸とルーの魔力探知により悉くが失敗に終わった。
捉えた魔人はルーとナクタが尋問《拷問》し、目的を聞いたのだが口を割る事は無く、蓮が起きてくる前にナクタの胃袋に収まった。
襲撃者が来た方角からして、魔人ケルキュースの配下だろうと予測できた。
目的はおそらく、ナクタが魔人を殺した事に対する報復か、もしくはメデュアの身柄かのどちらかだろう。
ルーは、ナクタが魔人を殺し、情報を持ち帰ったあの時から報復の可能性は考えていたし、メデュアが姿を消した姉だとしたら、その身柄の拘束か殺害を目的とした襲撃の可能性もあるだろうと考えていた。
ナクタに関しては心配は無かった。自ら戦ってその強さは把握していたし、魔人を殺した実績もある。
だかメデュアは別だ。正直言って弱い。
もしも、襲撃によりメデュアが連れていかれるか殺されるかすれば、『家族』という存在に並々ならぬ執着を見せる蓮が敵の本拠地に乗り込むと言い出しかねない。
だからこそ、信頼するアシュラにメデュアの強化を頼み、拠点から離したのだ。
蓮は現在ナクタに槍の扱いを教わっている。
剣の才能は全く無かった蓮だが、槍ならば問題なく扱えるようだ。ナクタ曰くギリギリ上の下程度との事だったが……。
蓮はそれでも武器を使えるのが嬉しいようで、毎日ナクタと鍛錬を積んでいる。
「えいっ!やー!とりゃー!」
カン、カン、カンと、木のぶつかり合う音が辺りに響いている。
ナクタの訓練はもっぱら実戦形式で、蓮がひたすら打ち込み、たまにナクタが反撃するといった感じで行っている。
初めはナクタの反撃に反応すらできていなかった蓮だが、最近はしっかりと防御する事ができるようになってきた。
蓮が持つ槍は短く、短槍に分類されるものではあるが、小さな蓮には十分な長さだ。
「ほれっ。」
「うわっ!」
槍を打ち込んでいた蓮だっだが、ナクタに足を払われ地面へと転がされた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「うしっ。今日はここまでだな。汗流しに行くぞ。」
「はぁ、はぁ……。うん、今日もありがとう、ナクタ。」
蓮は額から流れる汗を拭いながら立ち上がり、ナクタと共に川へ水浴びに向かった。
「あぁー。きもちぃー。いきかえるぅー。」
「毎度毎度おっさんみたいな声出しやがって……。」
「うるさいよ、ナクタ。よしっ!お昼ご飯食べに行くよ!今日は何かなぁー。」
「何かなって、肉か魚しか選択肢ねぇだろ。」
「……うるさい!いいじゃん選択肢があるんだから!ほら、早く行くよ!」
蓮はナクタの手を引いて拠点へと急ぐのだった。
拠点ではルーが昼食を準備してくれていた。
三人で食卓を囲み、食事を始める。
「お肉美味しいねー!」
「……そうだな。いつもと変わらねぇが。」
「ナクタ、一言余計だよ。」
食事が終わり、蓮がデザートの林檎擬きを齧っていると、ナクタとルーが同時に何かに反応した。
「ルーの旦那、侵入者だ。どうする?」
「この魔力は……。いえ、大丈夫だと思います。蓮、少し見に行きましょうか。」
「侵入者って、いつもの人達じゃないの?」
「いつものって……。蓮、お前知ってたのか?」
「流石にあれだけ騒がれたら起きちゃうよ。僕の為に黙ってくれてたんでしょ?」
気を遣って隠していたはずが、逆に気を使われていたと知り、なんとも言えない表情を浮かべるナクタをよそに、蓮はルーと共に侵入者の方へと歩き出す。
ナクタも少し遅れて二人の後を追った。




