第十八話
翌日、ナクタは現在森の中にいた。森といっても拠点のある森ではなく、毒沼の森である。
昨夜、探索は見送ると結論が出たはずの森になぜナクタがいるのか。それは、昨夜の解散後にルーに頼まれたからである。
「はぁ。昨日あれだけ危険だから皆で行くべきだっつったのによぉ……。人使いの荒い旦那だよなぁ。それにしても、メデュアの情報を集めろだなんて一体どういう事だ?」
そう、ルーからの頼みとはメデュアについての情報収集である。
ルーは昨夜の話し合いでケルキュースの名前が出た時、普段冷静な態度を崩さないメデュアがほんの少しだが動揺した事に気付き、ナクタへ内密な情報収集を依頼したのであった。
「情報つってもなぁ……。まぁ、知ってそうなやつに聞くっきゃねぇよな。上手いこと下っ端が釣れりゃいいんだが……」
ルーからの無茶振りに応えるべく、ナクタは近づいてきていた魔物達の殲滅を開始した。
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深夜、皆が寝静まった後、ルーはナクタから報告を受けていた。
「有難うございました、ナクタ。それで、何かわかりましたか?」
「ちょっと暴れたらすぐに向こうさんが釣れたからな。そいつもあんまり詳しい事は知らなかったが、それっぽい情報は聞けた。」
「ふむ。それで?」
「なんでもケルキュースには三人の娘がいたんだが、半年程前に長女が姿を消したらしい。そいつが青い鱗の宝石眼の蛇だって話だ。」
ルーは顎に手を当て、少しの間考え込んでから口を開いた。
「……なるほど。失踪の原因は?」
「いや、それは分からなかった。……ただ、妹二人は魔人に進化したのに、姉であるそいつは器すら持たなかったらしい。そのせいで妹二人からよく嫌がらせを受けていたらしい。」
「直接では無いにしろ、原因の一因ではありそうですね……。」
「その姉ってのがメデュアかどうかはわかんねぇけどな。」
そうですね。と返答したルーだったが、ほぼ確定でメデュアの事だろうと思っていた。
蓮が傷だらけで今にも死にそうになっていたメデュア治療し、契約を結んだのがおよそ半年前であり、ナクタの持ってきた情報と一致する。
そして、メデュアがケルキュースの名前に反応したのが何よりの証拠だろうと。
面倒な事にならなければ良いがと思いながら、ナクタにお礼を告げた。
「とても有意義な情報でした。有難うござました、ナクタ。」
「いいっていいって。……それより、これ。情報源から取ってきた。」
そう言ってナクタが懐から取り出したのは拳大の黒い石だった。
「これは?」
「魔石。話が終わった後殺して抜き取ってきた。なにかに使えんだろ?」
「これが魔石ですか……。いえ、これは貴方が取ってきたものですから貴方が使ってください。何かに使えるのでしょ?」
「……そうか。なら遠慮なく貰うぜ。」
そう言ってナクタは、興味深く魔石を見ていたルーから魔石を受け取ると、その魔石に齧り付いた。
「ガリ…ガリ…ゴリ…。ルーの旦那と蓮は真似すんなよ。魔に属するものじゃねぇと、下手すると死ぬからな。」
「……流石に石を食べる趣味はありませんよ。」
ガリガリと魔石に齧り付くナクタに対して、ルーは苦笑いしながらそう返答した。




