第十五話
各々自己紹介を終えた後は解散となった。
蓮はいつもの修行を行った後、川に水浴びに来ていた。
「あー。きもちー。生き返るよー。」
運動で火照った体に水を浴び、そんな声を出していると、ナクタが声をかけてきた。
「おい、蓮。上がったらこれに着替えろよ。」
そう言って差し出してきたのは、黒の上下の服と下着だった。
「うわぁー!新品!?これどうしたの?」
「俺が編んだ。ルーの旦那に頼まれてな。魔力で強化した俺の糸で作ってるからそこら服よりよっぽど頑丈だ。このこぎたねぇ服は処分しとくぞ。」
「えー!これナクタが作ったの!?ありがとうナクタ!」
とびきりの笑顔で感謝を伝える蓮に、ナクタは元来た道を戻りながら何も言わずに片手を上げて答え、そのまま拠点へと戻っていった。
ナクタに貰った新しい服に着替えた蓮は、皆に自慢して回った後、森の散策に出かけた。
クロ、メデュア、アシュラの三人は忙しいらしく、今日は久しぶりにルーと一緒だ。ナクタはもう何着か服を作ってくれているらしい。
「ルーとお出かけするの久しぶりだね!」
「そうですね。最近はあの三人がベッタリでしたから。……一つ、聞いても良いですか?」
「ん?どうしたの?」
果物を探しながらどんどん先に進んでいた蓮は、ルーの問いかけに立ち止まり、振り返った。
「何故ナクタを助け、仲間にしたのかと思いまして。私が到着するまでに何かあったのですか?」
「ん?ルーは反対だった?」
「いえ、戦力が増える事に不満は有りませんし、蓮と契約しているなら問題はないでしょう。ただ、クロとメデュアはナクタにやられましたし、蓮も連れ去られたでしょう?」
「んー、そうだなー。確かにクロもメデュアもやられちゃったけど、殺されなかったしね。僕なんて縛られただけで何もされなかったし……。それでね、ピーンときたんだ!」
人差し指を立てて得意げな顔をする蓮に、ルーは続きを促した。
「ピーンと、ですか?」
「そう、ピーンと!このお兄さんはルーと遊びたいんだって!」
「あ、遊びたい、ですか……?」
蓮の思わぬ返答に、ルーはポカンとしてしまう。
「そう!寂しかったんだよきっと。ほら、自分でも言ってたじゃん、孤独な魔人だって。だから誘ってみよっかなって。それに、魔人ってかっこいいし!変身するんだよ!?」
「孤独な、魔人……?ふっ、ふふふふっ……」
何かの思惑があっての事かと勘繰っていたルーだったが、蓋を開けてみれば勘違いによる同情と、子供心がくすぐられた結果だった。
思わず笑いが漏れてしまったルーに、蓮は不思議そうな顔をしていた。
ルーが何でもないと誤魔化すと、蓮は納得はいっていない様だったが、また前を向いて歩き始めた。
(孤独な魔人、ですか。間違ってはいないのですが……。ふふっ。本人には言わない方が良さそうですね。)
実は、今朝方ナクタから同様の質問を受けたのだが、ルーも気になったので蓮に聞いてみたのだった。ナクタにどう伝えようかと悩みながら、どんどんと先に進む蓮の後を追いかけた。
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その夜、拠点で食卓を囲見ながら皆で話し合っていた。
主にナクタからの情報収集だ。
「ナクタって、毒沼の森に詳しいよね?」
蓮からの問いかけに、ナクタは少し悩みながらも口を開いた。
「あー……、そこまで詳しいってわけじゃねぇが……、まぁ一年ぐらいあの森で生活してたからなぁ。んで?何が聞きたいんだ?」
「僕達、まだあの森の奥まで行った事ないんだー。それでね、どんな所なのか知ってたら教えて欲しいなーって。あの森を抜けたら人間の街とかあったりしない?」
期待する様な目で質問してくる蓮に、ナクタは訝しげな表情をする。
「人間の街だぁ?ある訳ねぇだろ。あの森を抜けたってあるのは海だけだ。……もしかして、ここが島だって知らねぇのか?」
蓮は突然もたらされた思いもよらない情報に、驚きのあまり固まってしまった。
そんな中、口を開いたのはルーだった。
「回収した本や手記から別の大陸があるとは分かっていたのですが……。やはり、ここは無人島でしたか。」
森の中で見つけた朽ちたテントの中から回収したのは魔導書や魔道具、依頼、食器類の他に、持ち主の者と思われる日記などもあったのだ。
その中に海を渡ってこの島に来たといった記述もいくつか見られたので、ルーは此処とは別の大陸があるのだろうと考えていた。
勿論、此方が大陸ではなく離小島である可能性も。
「えっ!ルーは知ってたの!?何で教えてくれなかったの!?」
「確定情報では有りませんでしたので……。」
「……もしかして、皆んな知ってたの?」
蓮はクロ、メデュア、アシュラの三人に目を向けてそう問いかけた。
聞かれた三人は揃って蓮から視線を逸らしながら、気不味そうに首を縦に振り肯定の意を示した。
「うそぉ……。僕だけなの?何で教えてくれなかったのさぁ……。え?知ってると思ってたって?えー。確かに僕もちゃんと聞いたことなかったけどさぁー……。」
そう言って項垂れる蓮に対し、ルーは慰める様に頭を撫でるのだった。




