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【第一部完結】魔女として断罪された悪役令嬢は婚約破棄されたので魔王の妃として溺愛されることを目指します  作者: 中臣悠月
第四章 魔王の国を改革するための第一歩! 採用試験で自由に職業選択できる世界を目指します

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25 ローテルン大陸の現状を確認しましょう

 私が玉座の前まで歩み寄ると、ヴィネ様は優雅に立ち上がる。

 ヴィネ様を前に、カーテシーで礼を取ると、ヴィネ様は右手をついと、私の方へと伸ばし、玉座の隣に上がる私をエスコートしてくれた。

 ヴィネ様に引き寄せられるように、片手を取られながら、私は玉座の隣の妃の座へと進み、その椅子に腰掛けた。


 まるで夢を見ているようだ。


 私は、この世界に転生して以来、実質、王太子に等しいジャンの婚約者になるべく、それにふさわしい教育を受けてきた。

 だから、このような立場になることは、私にとって当たり前の未来だったはずだし、幼い頃からそれなりの覚悟をしてきたはずだ。


 聖カトミアル王国では、傀儡(かいらい)の王や王子たちは、外交の場にしか姿を現さない。

 それ以外の場で、常に王のごとくふるまっているのは、ジャンの父であるベルナール伯だ。そしてその隣で王妃のようにふるまっているのは、ベルナール伯夫人、ジャンの母親である。

 そして、何年か、何十年か後には、ジャンと私が、その座に就くはずだと、そう信じて生きてきた。

 だから、臣下たちを睥睨(へいげい)するこのような場に立つ未来がやってくることは、十分に覚悟して生きてきたつもりだ。


 しかし、想像していた景色と、実際に見る景色は、これほどまでに違うものなのか、と思う。

 ここに座すのが当たり前だと信じてきたのに、指先の震えを抑えることができない。

 先ほどから、胸は激しく躍り続けている。

 おそらく、この動揺は、今のこの妃候補という立場に由来するものではない。

 この胸の高鳴りは、愛するヴィネ様が隣にいるためだ。

 私の隣にいるのは、ジャンではなく、ヴィネ様なのだ。

 なんとか平静を保たなければいけない。

 目の前の会議に集中しなければ──。

 ヴィネ様や皆に気付かれないよう、私はそっと深呼吸をした。


 * * *


「さて、会議を始めるとしよう。本日、聖カトミアル王国からやって来たという医師から、ローテルン大陸の情勢を聞いた。それは、あまりに凄惨なものである。かの国では、今、異端審問の嵐が吹き荒れているという。それも、罪なき民を相手に」


 ヴィネ様の言葉に、居並ぶ重臣たちが息を呑む。


「それに加え、魔物たちが次々と現れ、民たちを襲っているとのことだ。回復魔法の使い手である司祭の数は足りず、怪我人を手当しようとする医師が異端だと引き立てられ、命を奪われる。信じられぬことが起きているらしい。この問題にどう対処すべきか話し合うために、皆には集まってもらった。

 これから、この件に関する詳細について、ローテルン大陸に潜ませている間諜に話を聞いてみたいと思う」


 ヴィネ様のすぐ傍には、大きな水鏡が置かれている。


 両腕で抱えねばならないほどの大きさの水甕(みずがめ)で、縁には金細工で豪奢なドラゴンの装飾が施されていた。

 ヴィネ様は、呪文を唱えながら、懐から取り出した小瓶の液体を数滴、水鏡へと垂らす。

 途端に水面には波紋が広がった。

 波紋が消え、水面が凪いでいくと同時に、その面(おもて)には人の姿が少しずつ浮かび上がる。

 ぼんやりとしていた姿が次第にはっきりし、水面に人の形が現れる。

 浅黒い肌を持った女性だ。

 どこかで見た覚えのある女性だった。


 どこで会ったのだろう──。

 私は、これまでの記憶を辿った。しばらくの後、記憶が蘇る。

 この女性は、アヴァロニア王国へ向かう道中、私の危機を救ってくれた女性ではなかったか。


「もしかして……? カーラ!」


 水面に姿を現したのは、アヴァロニア王国への道中、男や魔物に襲われた私を助けてくれた女性。

 旅の一座を率いていると言った、ダークエルフと人間のハーフの女性だった。



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