24 いざ、参ります。ヴィネ様の隣へ
その時、ゴヴァンが先ほどの男性に対して反対の声を上げた。
「ブリス将軍、お言葉ですが、陛下はこれまで女性が参画していなかった職にも、女性を採用するとおっしゃって本日の採用試験を行われたのです。私も、女性が兵士になれるものかと半信半疑でおりましたが、本日、自分の考えは浅はかであったと思いしらされましたぞ」
私が会議に参加するのを反対した男性はブリス将軍と言うらしい。
ゴヴァンは採用試験でのケリーの勇姿を思い出しているのだろう。
初老の将軍に、反対意見を述べる。
しかし、ブリス将軍は、若い騎士の意見を一蹴した。
「黙れ、小童よ。そのようなことがあるわけがなかろう。女にしかできぬ仕事があるように、男にしかできぬ仕事もあるのだ。そなた、騎士の身でありながら、それを否定する気か」
上官に当たる将軍に強く言われ、ゴヴァンはそれ以上、反論することができず、悔しそうな表情を浮かべながら口を噤んだ。
それを見ていたヴィネ陛下は、ブリス将軍を諭すように語りかける。
「ブリス将軍。この国はこれから、新しく変わるのだ。軍にも、今後は女性が参加することが既に正式決定されておる。現に、今日も、新たな兵を多く雇い入れたが、その四分の一近くは女性が占めていたであろう」
「し、しかし……」
「将軍。そなたも、今日、その目で、この国の変わりゆく姿を見たであろうが。古き良き伝統を守ることは大切なことではある。しかし、伝統に縛られるあまり、ローテルン大陸で今、起こっているような惨事を引き起こしてはならぬ。民のために、時に変革が必要なこともあるのだ」
「ぐ……」
ブリス将軍は、何も反駁することができず、そのまま押し黙った。
すると、最初に異議を唱えた重臣、エンフィールド卿が再び口を開く。
「ご聡明な陛下ならわかっていらっしゃることと存じますが、我が国のような小国においては、王族の結婚は外交の切り札なのですぞ。ですから、御歳25歳になられる今も陛下は、独り身でいらっしゃるのではないですか。より良い外交相手が見つかるまでは、と陛下にはこれまでご結婚を我慢するようお願いしてまいりました。陛下には、もっとも国のためになる婚姻を結んでもらわねばなりませんからです。
エレイン様とその御一族が、今、聖カトミアル王国でどのような処遇を受けているかをご理解の上で、そのようなご選択をされるのですか?
陛下のご結婚は、陛下お一人のものではありません。我々も、アヴァロニア王国のためを思って意見いたしますぞ」
「そんなことは百も承知ぞ。逆に聞くが、国のためになる婚姻であれば、そなたらは賛成するということであるな」
「まあ、そういうことになりますが……、どれほどエレイン様が優秀であられようとも、その結婚が認められるか否かは、聖カトミアル王国と我が国の関係次第、ローテルン大陸の情勢次第であるということを陛下には心得ておいていただきたいものでございます」
「わかっておる」
ヴィネ様は、不機嫌そうに返事をすると、エンフィールド卿から私へと視線を移す。
「さあ。エレイン。私の隣に来なさい。妃候補として」
ヴィネ様が、私に甘い声で囁きかける。
その瞳は、先ほどまで他の臣下たちに向けられていたものとは違い、慈愛に満ちたものだ。
臣下それぞれにさまざまな思惑があることは、私も理解している。
それゆえ、一筋縄ではいかないであろうことも。
国家とは、そういうものだ。
それでも。
──あなたのお気持ちには、少しは期待してもよいのでしょうか、ヴィネ陛下。
今、私が一番知りたいのは、ヴィネ様の真意だ。
ヴィネ様が私を求めてくれるのであれば、どんな障害があろうとも立ち向かっていこう。
なぜなら、生身のヴィネ様と共に過ごすうちに、単なるゲームの中の推しキャラではなく、私の人生になくてはならない大切な人物だと思うようになったからだ。
その隣にずっと寄り添っていたい、人生を共にしたいと思う存在に。
「さあ、エレイン」
私の心臓が、トクンと波打つ。
「はい」
私は、背筋を伸ばし、ヴィネ様の隣に向かって、その一歩を踏み出した。
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