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【第一部完結】魔女として断罪された悪役令嬢は婚約破棄されたので魔王の妃として溺愛されることを目指します  作者: 中臣悠月
第四章 魔王の国を改革するための第一歩! 採用試験で自由に職業選択できる世界を目指します

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17 蘇る魔女裁判の記憶、ヴァレリーの残酷な言葉

「魔物以外にも、ローテルン大陸では今、さまざまな疫病が流行っております……」

「まさか、それも私のせいになっているのかしら?」

「はい……。もちろん、私はそんな流言飛語など信じてはおりません。魔物の襲撃により怪我を負った人を助け、さらに、伝染病を予防する方法を村人たちに教えておりましたら……異端だと言われ捕まりまして……」

「それで、この拷問を受けたというの? ひどいわ、許せない。ヴァレリーとジャンのせいね?」

「はい……聖女様……ヴァレリー様が祈れば、万事解決だとおっしゃって……」


(そんなこと、──そんなこと、あるわけないじゃないの!

 ヴァレリーにそんな力があるなら、もっと幸せな世の中になっているはずよ!)


 私は怒りのあまり、思わず唇を噛む。

 そんな私の様子に気づいたのか、ヴィネ様は、私に目配せをし、わかっているとでも言うように頷いて見せた。


 私は前世の記憶を思い出す以前から、さほど熱心なファシシュ教徒ではなかった。

 そして、前世の記憶が蘇った今。

 ファシシュ教の信徒たちが推し進めようとしていることに科学的根拠がまったくないことに気付いた私は、いつかこのようなことが起きるのではないかと懸念していた。

 私が魔女の疑いをかけられた時も、裁判で、根拠のない迷信によってあわや殺されかけたのだ。


 私は、あの時のヴァレリーの無邪気で残酷な言葉を今もはっきりと覚えている。


『魔女ではないなら、水に沈められても身の潔白を証明できるわけですし……。きっと、沈んだことが確認できた途端、ここにいらっしゃる屈強な殿方たちが、エレイン様を川の底から救出してくださるはずですわ』


 そう言って無責任に笑っていたヴァレリー。

 彼女は今も聖女として、無責任に国民の命を奪うことを煽動しているのだろうか。


 私はさっさと罪を認めたために無事に国外へ逃れることができた。しかし、無駄に抗い、無実の罪を訴えようとしたら、どうなっていただろうか。このように拷問による犠牲者が出ることは、あの時点で容易に想像ができた。


 しかも、この医師の主張の方が、科学的根拠を持っているのである。


「疫病の原因となる目に見えない何か。あなたは、ウイルス、あるいは細菌のことをおっしゃっているのね。ウイルスとその感染予防対策を民たちに教えていたら、異端だと言って捕まってしまった……。そういうことね?

 たとえば、病にかかった人の近くに寄らないようにするとか、手を石けんでよく洗うとか、口を布で覆うとか、そういったことかしら?」


 前世の世界では、当たり前だったことだ。

 しかし、この世界にはおそらくまだ顕微鏡が存在していない。

 この医師のような仮説を立てたとしても、顕微鏡によってウイルスや細菌を確認し、仮説を立証することができないのだ。

 凸レンズが存在していれば、理論的には顕微鏡も作れるはずである。

 これも、ドワーフたちに確認し、製作を依頼してみよう。


「エレイン様は……ご存じなのですか? 伝染病の仕組みを? ……かの国では……それは、魔女の呪いによって起こるのだと、聖女様が祈りさえすれば、病などすべて消え去るのだと……言われました」

「ええ、よく知っているわ。何しろ、私は魔女として、聖カトミアル王国から追放されたのだもの。そして、何度も申し上げますが、私は誰のことも呪ってなどおりませんもの!

 病には、呪いなど関係ないのです!」


 私は、はっきりと断言した。


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