29 ジャガイモ料理を作りましょう 2 飯テロ失礼いたします
「では、まず毒味役の私がいただきますね。皆さんも、器のジャガイモに熱いうちに塩だけは振っておいてください。もしバターがあれば、バターを乗せるのもおすすめです。あ、何かハーブはありませんか? バジルやタイム、パセリなど、なんでもいいのですが、ハーブを振るのもおすすめです」
「ハーブなら、その辺にタイムとパセリなら生えていると思いますけど、取りましょうか?」
「それでは、パセリをお願いします」
鍋を用意してくれた女性が、近くに生えていたパセリをちぎって手渡してくれた。
私は、手でパセリを細かくちぎって、フライドポテトにふりかける。新鮮なパセリの爽やかな香りが鼻孔をくすぐった。
私は手作り即席箸を使って、パセリと塩を全体に混ぜ合わせてから、揚げたてのフライドポテトを口に運ぶ。
その場にいる、すべての人たちの視線が私に向けられているのを感じた。
穴が開きそうなほど、皆から凝視されている。
「それでは、いただきます!」
この世界に転生して初めて食べるフライドポテトだ。
かれこれ15年ぶりぐらいということになる。
「美味しい! やはり、フライドポテトは美味しいわ!」
カリッとした食感の後、ホクホクとしたジャガイモの旨みが口いっぱいに広がった。
自然と、顔がほころんでしまう。
「では、私も……」
「お待ちください、陛下。毒は、時間差で回ることもあります」
私に続こうとするヴィネ様を、セパルが制する。
確かにセパルの言う通りだ。
食中毒であれば、すぐに症状は出ないだろう。
皆に注視されたまま、私はただ黙々とフライドポテトを口に運んだ。
* * *
約1時間が経過した。
当然だが、芽をしっかりと取ったジャガイモを食べた私の様子には、何の変化もない。
先ほどと比べ、ただ満腹になっただけだ。
「さすがにもういいだろう? エレインに変化はない。毒はなかったと言うことではないか? エレインがあのように美味そうに食すのだ。私も早く食べてみたい」
「ええ、そうですね。我々もいただきましょうか」
「あ、お待ちください。いくら季節は夏とはいえ、もうさすがに冷めてしまったことでしょう。もう一度、火を通します。二度揚げしても、美味しいですよ」
私は、ヴィネ様とセパルの器に入っていたジャガイモを油の中に再び入れる。
浮いてきた頃合を見計らって、器にあげると、塩とパセリを振って二人に手渡した。
「どうぞ、お召し上がりくださいませ」
二人は、指先でフライドポテトを掴むと口に運んだ。
「なんだ、これは!」
「……お口に合いませんでしたか?」
「いや、逆だ、逆だ。こんなに美味いものを食べたことがない。皆も早く食べるとよい。二度揚げするのだぞ」
「はい、陛下」
人々は、鍋の周りに群がり、次々にフライドポテトをパクつき始めた。
「うめぇー、なんだこれ」
「美味しいわ!」
「また、食べたいね」
聞こえてくる感想は概ね高評価だ。
星4、あるいは星5と、いったところだろうか。
先ほど、私に石を投げた男は食べてくれるだろうか。
最初は、他の民たちの後ろで皆の様子を伺っていたようだが、一通り皆が食べ終わると、男も鍋の前に一歩進んだ。
恐る恐るといった風情で、フライドポテトを口に運ぶ。
最初は無表情だった男の顔が、次第に笑顔へと変わっていく。
どうやら、気に入ってもらえたようだ。
私は、ほっと胸を撫で下ろした。
「今回は、ジャガイモの美味しさを知っていただきたくて、少し作るのに手間のかかるフライドポテトを作りましたが、ただ茹でて、バターを乗せて食べても美味しいですよ。煮込み料理の具にも最適です。すりつぶして牛乳と煮れば、ポタージュにもなります。身体の弱った者には食べやすいかと思います。それと、これは陛下とセパル様にとっては大事な話なのですが……」
「大事な話とはなんだ? 申してみよ」
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