28 ジャガイモ料理を作りましょう 1 便利な道具をまた提案いたします
「エレイン様、準備が整いました」
先ほど、鍋を取りに走ってくれた女性が私に声を掛ける。
皆で他愛ない話に花を咲かせているうちに、鍋と油の用意もすっかり整っていた。
「では、フライドポテトを作りましょう。味付け用に塩をいただけますか?」
カッティングボードの類がないので、近くにあった切り株をまな板代わりに利用して、ジャガイモをくし型に切る。
火の上にかけられた鍋の中では、油が十分温まっているようだ。
念のため、ジャガイモの切れ端を一欠片、油の中に落とす。
ジューッと勢いよく音を立てて、ジャガイモは鍋の中で踊った。
「よし、大丈夫そうね」
私は、くし型に切ったジャガイモを次々と鍋の中に入れていった。
「その形に切ればよいのか?」
「はい」
ヴィネ様は、まな板も使わず、あっという間に鍋の上でジャガイモをくし型にカットしていった。
相変わらず華麗なナイフ捌きである。
セパルも、他の民たちもそれに倣う。
私以外は、皆、とても器用だ。
「負け惜しみに聞こえるかもしれませんが、ハサミがあるといいんですけれど……。キッチンバサミがあれば、私のような不器用な者でも野菜を簡単にカットできるのですが」
「ハサミ? ハサミを料理に使うのか?」
「はい。ハサミの方が簡単に扱えますから。ナイフをうまく使えない者でも、材料を切るのが楽になるのです」
「確かに、ハサミであれば、子どもでも使えそうだな。ハサミなら、羊毛をカットするのに使用しているハサミがあるぞ。あれを元にして、食材を切るのにも使いやすいようなハサミをドワーフたちに考案させるか?」
「はい! ありがとうございます。きっと、私だけではなく、国中の不器用な者たちが泣いて喜びますわ。他の国にはないはずですから、輸出品にしたら人気の品になるかもしれませんね」
「うむ」
しばらくすると、火の通ったジャガイモが次々と浮き上がってくる。
私は、拾っておいた枯れ枝を二本取り出し、菜箸代わりに使って、火が通ったと思われるジャガイモを器へと上げていく。
「ん? 不器用と言いつつ、そなたも、なかなか器用ではないか。なんだ、その道具は? 初めて見たぞ」
「箸と言って、前世の日本という国で使用していた道具なのです」
「それもドワーフたちに作らせてみるか?」
「そうですね。ただ、箸で物を掴むのには、少し練習が必要なので、もしかしたら“トング”という、物を挟むのに特化したキッチンツールの方が誰にでも簡単に使えて便利かもしれません」
「なるほど、では、その“トング”とやらも追加だな。近いうちに、ドワーフの親方のところへ行って、どんな道具を依頼したいのか、そなたが直接打ち合わせをして来るがよい」
「はい、かしこまりました」
ヴィネ様と話していると、どんどんと前世の記憶が呼びさまされて、さまざまなアイデアが湧いてくる。そして、ヴィネ様は新しい物に対して物怖じすることなく、便利なものであればそのアイデアを積極的に採用しようとしてくれる。
その決定もスピード感があり、誠に頼もしい君主だと思う。
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