27 まずは皮を剥き、芽を取るのです 2 ヴィネ様の意外な一面
最初は手に取ることする躊躇っていた民たちだが、ヴィネ様が平気で触れているのを見て、覚悟を決めたようだ。
それに、君主に下働きのようなことをさせて、自分たちがぼーっと突っ立っているというのも、さすがにいたたまれなくなったのであろう。
ありがたい。
すべてヴィネ様のおかげである。
「では、どなたか手の空いている方、剥いたジャガイモを入れる容器を持って来ていただけませんか? それと、火を起こし、鍋に油を入れて、熱していただきたいのです」
私の問いかけに、今度は、近くにいた女性が
「はい」
とすぐさま返事をしたかと思うと、近くの納屋の方へと走って向かって行った。
私たちは、その間、必死にジャガイモの皮剥きと芽を取る作業に没頭する。
「ん? エレイン、そなた、頭の回転は早いのに、手先は不器用なのだな」
ヴィネ様が私の手元を覗き込み、笑う。
ヴィネ様やセパルが、もう10個は皮を剥き終えているところ、私はまだようやく1個だ。
「前世では、ピーラーに頼りきりだったもので……」
恥ずかしさから、語尾が消え入りそうになってしまう。
「なるほどな、そなたも苦手なことがあるからこそ、便利な道具を提案できるわけだな。苦手なことも、役立つことがあるものよ」
ヴィネ様は、楽しそうに、屈託のない笑みを浮かべた。
「私は初めてこの皮剥きとやらをしたが……」
「え、初めてなのですか?」
あまりの手際の良さに、てっきり経験があるのかと思っていた。
「それにしてはお上手でいらっしゃいますね」
セパルも、周囲の民たちも、「うんうん」と頷く。
「まあ、刃物は使い慣れておるからな。野菜の皮を剥くというのも、なかなか楽しいものだな。昔、城でパーティーが行われるということで、城中の者たちが準備に大わらわだったことがある。そんなに忙しいなら、私も野菜の皮剥きでも手伝うかと声を掛けたら、ベルクにえらい剣幕で怒られたぞ」
「それは、そうでございましょう。私もその場にいたらきっと怒っていたかと思います」
「セパルも怒ったか? そうか。……あれは、確か……私の即位式の後の披露パーティーの準備だったか」
私もセパルも、耐えきれなくなって思わず吹き出してしまう。
「どこの世界に、自分の即位式のパーティーの下準備をする王様がいるというのですか」
「ここにいるぞ、エレイン。まあ、結局、実現はしなかったがな。今日は、そなたのおかげで、野菜の皮剥きという新たな経験をさせてもらえたぞ」
そう言って、豪快に笑う。
庶民的な一面を持つヴィネ様の笑顔に、もう何度目かわからないけれど、私はハートのど真ん中を射抜かれてしまった。
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