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歪んだ世界の終幕  作者: 黒星 落
Chapter2『葛藤』
32/40

scene12『夜を迎えに』

遅くなってしまい、すみません。短いですが、今日はこれだけ投稿します。


「ニスイ姉」


 カケルは玄関の扉を開けるやいなや、彼なりの大声で叫んでから、鞄を投げ捨て、姉の部屋へと走る。


「あぁ、カケル君」


 机に肘を置き、組んだ手に額を寄りかからせていたニスイは、カケルの来訪に振り返ると、力なく笑った。


「サラが……【メインディッシュ】が予告状を出したのか」

「うん。帰ってくるなりなんかごそごそやってるなー、とは思ってたんだけどね。夕ご飯の仕度をしている間に、飛び出して行っちゃった」

「ごめん。早く帰って来ていれば……」

「部活だったんでしょ。しょうがないよ。それよりサラちゃんだ。いくら最近イライラしてたとしても、ぼくに相談も無しに勝手に予告状を出すなんて、流石におかしい」

「あぁ」

「暴走……してると思う?」

「……少なくとも、兆候だと見るべきだと思う」

「そう、だよね……」


 ニスイは自らを抱きしめるように腕を組んだ。その肩は、小刻みに震えている。


「ぼくが、いけなかったんだ。自分の【歪み】について、もっと向き合わせるべきだった。でも、それがサラちゃんの【歪み】の暴走に繋がるんじゃないかって、怖くて……ぼくは、どうすれば良かったの?」


 青ざめるニスイの脳裏には、かつての情景が映し出されていた。弟を、本当に失うかもしれないと思ったあの時。心在を全うする、それだけを考えていた自分に下された、罰。


「原因というなら、僕にもある。サラを、一人にしてしまった。僕が……あの子を追い詰めた」


 自分が【怪盗】を辞めたことで、サラが抱いたであろう不安。サラ自身は自覚していなくとも、それは十分に、彼女の【歪み】を暴走させるきっかけとなる。


「どうしよう、カケル君……サラちゃんが、もし……」


 焦点の合っていない目で、縋るように自分を見るニスイを見て、カケルは首を振った。


 ――今は後悔している場合じゃない。


 ニスイの肩に、手をかける。


 久しく姉が避けていた、弟との接触。


 ニスイはびくりと震えたが、カケルは無視して目を合わせた。


「大丈夫。いつかこうなることは、分かっていたことじゃないか。対策は、二人で散々話し合った。いざとなったら、やるしかない。そうだろ」

「ぼ、ぼく……」


 その方法を思い浮かべ、ニスイは思わず自分の手を見つめた。


 震えるその手を、カケルは強く握り、再び自分に目を向けさせる。なんともないと、姉に示すために、今だけは【歪み】を全力で抑え付ける。


「僕たち二人で、迎えに行こう。馬鹿だけど、可愛い妹を」

「カケル君……」

「大丈夫さ。僕たちは、三人で【怪盗】なんだから」


 大丈夫だと、頷いてみせると、徐々にニスイの震えが止まり、目の焦点が定まる。


 そうしてしばらく見つめ合った後。


「帰ったら、お説教フルコースだね」

「手加減なしでやってくれ」


 手はまだ微かに震えていたけれど。


 【怪盗】の姉は、にやりと笑って見せた。


いよいよ【探偵】vs【メインディッシュ】です。書いてたら作者が熱くなりすぎてしまって、気付けばこんな時間に。


長くなりすぎちゃったので、いくつかのシーンに分けつつ、明日一気に投稿します。

明日……投稿できると……思います……。

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