scene12『夜を迎えに』
遅くなってしまい、すみません。短いですが、今日はこれだけ投稿します。
「ニスイ姉」
カケルは玄関の扉を開けるやいなや、彼なりの大声で叫んでから、鞄を投げ捨て、姉の部屋へと走る。
「あぁ、カケル君」
机に肘を置き、組んだ手に額を寄りかからせていたニスイは、カケルの来訪に振り返ると、力なく笑った。
「サラが……【メインディッシュ】が予告状を出したのか」
「うん。帰ってくるなりなんかごそごそやってるなー、とは思ってたんだけどね。夕ご飯の仕度をしている間に、飛び出して行っちゃった」
「ごめん。早く帰って来ていれば……」
「部活だったんでしょ。しょうがないよ。それよりサラちゃんだ。いくら最近イライラしてたとしても、ぼくに相談も無しに勝手に予告状を出すなんて、流石におかしい」
「あぁ」
「暴走……してると思う?」
「……少なくとも、兆候だと見るべきだと思う」
「そう、だよね……」
ニスイは自らを抱きしめるように腕を組んだ。その肩は、小刻みに震えている。
「ぼくが、いけなかったんだ。自分の【歪み】について、もっと向き合わせるべきだった。でも、それがサラちゃんの【歪み】の暴走に繋がるんじゃないかって、怖くて……ぼくは、どうすれば良かったの?」
青ざめるニスイの脳裏には、かつての情景が映し出されていた。弟を、本当に失うかもしれないと思ったあの時。心在を全うする、それだけを考えていた自分に下された、罰。
「原因というなら、僕にもある。サラを、一人にしてしまった。僕が……あの子を追い詰めた」
自分が【怪盗】を辞めたことで、サラが抱いたであろう不安。サラ自身は自覚していなくとも、それは十分に、彼女の【歪み】を暴走させるきっかけとなる。
「どうしよう、カケル君……サラちゃんが、もし……」
焦点の合っていない目で、縋るように自分を見るニスイを見て、カケルは首を振った。
――今は後悔している場合じゃない。
ニスイの肩に、手をかける。
久しく姉が避けていた、弟との接触。
ニスイはびくりと震えたが、カケルは無視して目を合わせた。
「大丈夫。いつかこうなることは、分かっていたことじゃないか。対策は、二人で散々話し合った。いざとなったら、やるしかない。そうだろ」
「ぼ、ぼく……」
その方法を思い浮かべ、ニスイは思わず自分の手を見つめた。
震えるその手を、カケルは強く握り、再び自分に目を向けさせる。なんともないと、姉に示すために、今だけは【歪み】を全力で抑え付ける。
「僕たち二人で、迎えに行こう。馬鹿だけど、可愛い妹を」
「カケル君……」
「大丈夫さ。僕たちは、三人で【怪盗】なんだから」
大丈夫だと、頷いてみせると、徐々にニスイの震えが止まり、目の焦点が定まる。
そうしてしばらく見つめ合った後。
「帰ったら、お説教フルコースだね」
「手加減なしでやってくれ」
手はまだ微かに震えていたけれど。
【怪盗】の姉は、にやりと笑って見せた。
いよいよ【探偵】vs【メインディッシュ】です。書いてたら作者が熱くなりすぎてしまって、気付けばこんな時間に。
長くなりすぎちゃったので、いくつかのシーンに分けつつ、明日一気に投稿します。
明日……投稿できると……思います……。




