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歪んだ世界の終幕  作者: 黒星 落
Chapter1『怪盗、探偵、平凡』
19/40

scene18『救世主は嗤う』

一章のエピローグ的な感じです。


「×××様……【集音器】の調整はほぼ最終段階にあります」


 とある都市、とある高層ビル。世界政府安全保障局極東支部。世界一高いビルとして有名なそのビルは、積み木を組み合わせた様な歪な形をしていて、一見アンバランスに見えながら、風に揺らぐことすらなく堂々と建っている。物理が【歪め】ば、工学も【歪】む――そのビルは、【世界】が【歪んで】いることを、何よりも雄弁に物語っていた。世界一【歪んだ】ビルなどと、揶揄する者もいる。


 その最上階の部屋で、壮年の男が、ガラス張りの壁際から眼下に広がる【世界】を見下ろしていた。


 かつては整然としていた町並みも、道路は曲がりくねり、建物は一つとして真っ直ぐ建っておらず、まるで正常に描かれた絵画を、握りつぶしてから無理矢理広げたかのような有様であった。


 男の窪んだ目は薄く開かれ、都市の明かりを受けて鈍く光っている。頭髪には白髪が混じっており、重ねた年月を思わせるが……そのがっしりとした体格、芯の通った背筋が、見る者に老いを感じさせない。キリッとした太い眉、整えられた口髭は、強い意志を感じさせる。そしてその顔には――はっきりと、憎悪の感情が表れていた。


「×××様――?」


 部下と思われる白衣の女は、自らの報告に反応のない男に対し、怪訝そうに様子を伺い、そこにあった表情に息を呑んだ。


「君はこの【世界】をどう思う?」

「は?」


 外を眺めたまま、徐に男は低い声でそう問いかけた。否……呆気にとられる部下の答を待たず、彼は再び喉を震わせた。


「醜く、(いびつ)に【歪】んだ――“雑音”が蔓延り、秩序は崩壊し、あらゆる理は捻れ、どうしようもなく生きにくくなった【世界】――こんな【世界】は間違っていると、そうは思わないか」

「………………」

「全ての元凶――あるいは現況は、あの忌ま忌ましい【世界を奏でる曲盤】――全知全能なる神が迷惑にも与えて下さった、かの不完全なシステムにある」

「【アカシックレコード】……」

「そうだ。それを無知で無能な【怪の者】が愚かにも触れたがために、【世界】は【歪】み、この有様だ――全く、馬鹿馬鹿しい話だ!」


 怒気を顕わにする男に、女は息を呑む。


「あの不完全な、時代遅れの【曲盤】には自動修復機能などなかった……傲慢なる神は、自ら創ったそれが壊れることなど、【歪む】ことなど想定していなかったからだ。外部から直そうにも、科学の力では触れることすら敵わない。人の知恵など所詮、神が気まぐれに能えたシステムの中のプラグラムでしかない――全ては予定調和の中でしか、人は新たな技術を得られない。現に、【世界】が【歪】んでしまってからは、物理学、化学、生物学――あらゆる科学のほとんどは使い物にならなくなってしまった。我々に赦されたただ一つの抵抗は、かのシステムの“代理”を務めること――人を等しく管理し、理を律し、平常な世界を“演じる”こと。完璧なルールに基づき、ライフサイクルをルーチンワークとして、淡々と、粛々と、細々と、健気にこなすことだけだ。余計な”雑音”は消却し、静かに、それこそレコードを再生するように――【世界】を、()()()()()ことだけだ」

「………………」

「だというのに、肝心の【消音装置】は、【怪の者】に翻弄されるばかりか、本来の職務を忘れ、日常生活にかまけているそうだ。全く、忌ま忌ましい――【探偵】の小娘も、私の誘いを蹴っておきながら、学園生活を送っているそうだ――フン、あ奴の求める“絶対的信頼”など、何処にもありはしないというのに。所詮は【歪み】に囚われた俗人にすぎなかったということ――私の見込み違いだったか」


 そこまで言って、男は振り返り、ぎりぎりと握り込んだ拳を、徐に机に叩き付けた。


 広い部屋に、どん、と鈍い音が響く。白衣の女は思わず後ずさった。


「もはや、何者をも当てに出来ん。やはり、私がやるしかない――私が()()()()()しか」


 机に拳を打ち付けた姿勢のまま、男は呟く。

 見開かれた目は狂気を湛えており、白衣の女は冷や汗を流した。


 だがしばらくすると、男はす、と身を起こし、何事もなかったかのように話を進めた。


「【集音器】が――琴継は、順調らしいな」

「は、はい――」

「ならば引き続き作業に当たれ。十全に、十分に、念入りに準備を進めるのだ――」

「りょ、了解しました」


 白衣の女が去った後、一人残された男は、再び窓に身を寄せると、世界を見下ろし、呟く。


「安心しろ、世界――どうしようもないお前を、私が救ってやる――」


 ガラスに映る彼の顔には……【歪ん】だ笑みが、浮かんでいた。


To be continued to next chapter...


雰囲気でやっておりますが、意味深な台詞の数々を僕は作中で拾いきれるのでしょうか。

さておき、第一章完でございます。ここまでお読みいただきありがとうございました。


ここまでの雑感や今後の更新予定についてなど、後ほど活動報告を上げたいと思います。


ここが厨二:アカシックレコード

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