第5話 近い運動会
「おはようございます〜」
「おはようございます〜もうすぐ運動会ですね〜」
「そうですね〜!こちらも緊張しますよね〜」
ナズナは幼稚園の靴箱前で、娘が一生懸命上履きを履こうとしているのを眺めながら、その場にいる他のママさん達に話しかけられたので作り笑顔で反応する。
「そうそう、だって子どもだけじゃなくて、私達、親も出なきゃいけないとか、今どきないですよね〜、珍しいというか古くさいというかぁ。本当嫌なんですよね〜」
「分かります〜。子どものことだけでもドキドキするのに、自分のことまではもう、一杯一杯過ぎて」
そう、この幼稚園では、子どもの親が走って競う親のリレー競技がまだ行われているのだ。
今の時代、競うこと自体が回避されているなか、ここの幼稚園では古き良きとでも言わんばかりに、親のリレーが開催されている。
「ねー、でもー、うちは夫が出るからー」
「あっ、うちもです〜!私はムリムリムリ!」
「あははっ!そうですよね〜!たぶん、ほぼほぼパパさんなんじゃないですかね〜?」
ママさん達との会話に笑顔で頷きながらその場をやり過ごしたナズナは、娘が上履きを履きクラス部屋に向かったタイミングで、まだ会話しているママさん達に会釈をしてその場を足早に立ち去った。
「はぁ〜…イベントが近いとママさん達も会話が弾んじゃって大変だ…」
ナズナは自転車に乗ると、ギアを一番上のパワーに切り替え加速して家までの道を漕ぎまくる。
「とはいえ、うちも夫が出る予定だし」
ナズナ家でも、リレー競技は漏れなく夫に出てもらう予定だ。
「私はゆっくり観戦してればいいから楽ちん〜」
ナズナは自転車から降りると、意気揚々と家の中に入る。
「ん〜〜!!やっぱり、家の中が1番最高っ!誰もいなくて、誰にも干渉されなくって、ほんと、くつろげる〜!」
ソファに一旦腰を下ろしたナズナだが、すぐに立ち上がると洗濯物を干して食器を片付け始める。
「あ、そうだ、運動会の天気…」
ナズナはスマホで、週末の天気予報を確認する。
「おっけ!快晴快晴!運動会当日も午前中で終わるから、お弁当つくる必要もなし!全て観戦のみ!」
ナズナは大きく上に伸びをすると、笑顔で息を吐く。
「よーし!あとはお風呂掃除…」
そのとき、ナズナのスマホにメッセージが入った。
ナズナはスマホを指でスライドする。
「…はぁ〜〜?」




