第6話 リレーに出場
「いちについてー、よーい、どん!」
一列に並んだ園児達が、ゴールに向かって走っていく。
「あっ、ナズナさん、こんにちは〜」
「あっ、こんにちは〜」
娘の出番が終わり、競技を遠くから眺めていたナズナは、同じクラスのママさんから声をかけられた。
「今日は晴れて良かったですね〜」
「そうですね〜、本当に無事運動会ができて良かったですよね〜」
「ね〜!あ、次の次ですね、親のリレー競技。夫が走るから私が走るわけじゃないのに、こっちもなんか緊張してきちゃってぇ〜もう、やだあ〜」
「ですよね〜あ…」
ナズナは、ポケットから震えるスマホを取り出す。
「あっ、電話かな?それじゃあ」
「あ、はい、また〜」
ナズナはスマホの画面をスライドし、耳に当てる。
「はぁ〜い、なあに?」
「ママ〜?メッセージ見てくれたー?」
小学生の長男の甘えた声が、耳にくすぐったい。
「見てないよ。何か送ってくれたの?」
「うん、パパといっしょにとった写真。あとで、見てみて〜」
「はいはい、分かった。じゃあ、見てみるね」
「うん、またねえ〜」
「は〜い」
ナズナがメッセージを開くと、そこには徒競走で一生懸命走る娘の写真が添付されていた。もう一度スライドすると、夫と息子の2人が笑顔でピースサインする写真も。
「はいはい、そちらは気楽でいいですね」
ナズナはスマホをしまうと、大きく溜息をつく。
『お知らせします。親の競技リレーに出場される方は、入場門付近へとお集まりください』
「きたかぁ…」
ナズナは、ゆっくりと入場門の方へと向かって歩き出した。
そう、リレーに出るからだ。
というより、リレーに出ざるを得ない状況になったのだ。夫が膝の痛みにより病院の診察を受けたところ、膝にヒビが入っていることが判明したのだ。
「走るのは嫌じゃないんだけど。…まあ、こうなるよね…」
入場門へ着くと、そこには3名ほど女性がいたが、他十数名は全員男性だった。
準備体操をしている多くのパパさんが、近寄ってきたナズナを、不思議そうな目でじっと見つめている。
「あれ、ナズナさん出られるんですか?」
顔見知りのパパさんが、遠慮がちに聞いてくる。
「そうなんです〜、よろしくお願いします〜」
笑顔でペコリと頭を下げるナズナ。
ママさん達に比べれば、簡単な会話で済むパパさん連中の集団は気楽である。
「ご出場の皆さーん!今からリレーのグループ分けをしますのでー、こちらに〜…」
幼稚園の先生が声を張り上げた。




