第3話 昔の相棒
「え…ちょ…私はちがう…」
「手を上げて、そのまま車から出てこい!!」
渋々ナズナは警察官に言われた通りにし、両手を上げて車内から出ると、黒い車に腹をつけた状態で立つ。
チラッと横を見ると、少し離れた所で、女の子が警察官と話していた。
女の子は無事に保護されたようで、毛布のようなものに体を包まれている。
「良かった…とはいえ、夏は終わったけどまだ気温は高いのに…体温の高い子どもに、あんな暑そうなものをかけるなんて…」
「そうだよなあ。これだから、独身の警官は子どもの事件に関わられるのを嫌がられるんだ」
声のした方を見ると、見るからに体が鍛えられている長身のスーツ姿の男が立っていた。
「そうね。あとは髪の毛をバッチリ決めてる警官もね。若いときはかっこいいけど、歳行くと古くさいもの」
「おい、まだこの髪型の良さが分からないのか」
「ずっとその髪型で飽きない?」
「残念ながら、俺は飽き性ではなくてね」
フッと笑う男は、両手をあげているナズナの前に立つと、後方で銃を構えている警察官に銃を下すようジェスチャーで伝える。
「彼女は大丈夫だ。犯人じゃない。他の2人の男を連行しろ」
スーツの男がそう言うと、警察官は運転席と後部座席の男らを手錠かけ、パトカーへと連れて行く。
「久しぶりだな、ナズナ」
「久しぶり、サイガ」
「相変わらずの剛力だな。男の腕は完全に折れてたぞ。あれは、数年は使い物にならないな」
「小学生の女の子を拐おうとしてたのよ?腕だけで済んで、良かったと思って欲しいわね」
「それはそうだな。助かったよ、ありがとな」
「どういたしまして」
すると、サイガが両手を広げ、肩をすくめてみせる。
「なによ?」
「俺も助けてやっただろ。お礼をまだ言われてないと思って」
「あぁ…どうも、ありがとうゴザイマシタ」
サイガは腰に両手を当てると、俯いて大きく息を吐く。
「そういう性格も変わらないな」
「なによ、そういう性格って」
「素直じゃないところだよ」
「そういうサイガは、素直で従順な姿勢で上に取り入って、今のポジションに上り詰めたのかしら?」
「そうさ、俺は今や同期の中でも頭ひとつ、いや、みっつは抜けてるな。……ナズナがいなくなったおかげでな」
「…別に、あなたの実力でしょ」
「いいや、ナズナがいたなら、俺はきっとこのポジションにはいない」
ナズナとサイガは無言で見つめ合う。
「なあ、戻って来ないのか。子どもはもう赤ちゃんじゃないんだろ」
「赤ちゃんじゃないって言っても、まだまだ幼いのよ。悪いけど、復職するつもりはないわ」
「そうか…残念だな。俺たち、いい相棒だったのにな」
「昔は昔。今は今、って、あ!もうこんな時間!私、そこの幼稚園に子どもを迎えに行かなきゃなの!もう行っていい?!」
「ああ、いいよ。あとのことは、俺がなんとかしておく」
「ありがとう。悪いわね。あとは、よろしく」
サイガが手を上げて、了解とジェスチャーで答える。
ナズナは急いで幼稚園へ走って行く。既に、お迎えを終えた人達が、パトカーの方をチラチラと様子を伺いながら帰り始めている。
「やば…!急がなきゃ…!!子どもが待ってる…!ママ来てないって、泣いてないかな…ごめんよ〜!」




