第2話 制圧
「おい、聞いてんのか」
運転席の男は、銃口をナズナに向けたまま声を荒げ睨みつける。
「おい、早く車から出ろ。さもないと、その眼鏡が顔から吹っ飛んで、顔中血だらけになるぞ」
男は銃を上下に揺らしながら、怒りに滲んだ声をあげる。
「分かったわ。出るわ」
ナズナは両手を上げると、後ろに少しずつ後退し車から出ようとする。
「やだ!いかないで!!」
後部座席の男に押さえつけられている女の子が、ナズナを見て泣き叫ぶ。
「うるさい!そこのガキを静かにさせろ!」
運転席の男の視線が、後部座席の男に注意がいったときだった。
ナズナは、運転席の男の銃を持つ腕を素早く360度捻りあげると、運転席の男は激痛に叫び銃を車内に落とす。
銃が落ちるのを見たナズナは、銃を素早くキャッチし、後部座席の男に向ける。
「その女の子を離しなさい!」
ナズナは運転席の男を横目で見る。運転席の男は腕を押さえたまま、低いうめき声をあげてうずくまっている。
「早く離しなさい!」
ナズナがもう一度叫ぶと、後部座席の男は女の子を押さえつけたまま不敵に笑う。
「はっ、呑気に日常過ごしてるおばさんなんかに、銃が使えるもんか。映画でもおもちゃでもねーんだ。早くそれをよこせ」
後部座席の男は、銃を掴もうと片腕をナズナに伸ばす。
パン!!
乾いた音が住宅街と幼稚園に響く。
車内では、男のすぐ真横のシートに小さな丸い穴が空いていた。
ナズナは、銃口を後部座席の男にピタリと向け直す。
「そうね、呑気に過ごしすぎたせいか、的を外しちゃったわ。次は、真っ直ぐ、あなたの額のど真ん中に当てるわね。それが嫌なら、今すぐ女の子を離して」
後半に向けてナズナが声を荒げると、後部座席の男は両手を上げ女の子から手を離した。その直後、ナズナは女の子を車から先に出すと、自分は銃口を後部座席の男に向けたまま、車内に留まり動かずにいた。
「ガキは解放しただろ、銃を返して早く失せろ」
男とナズナの間に緊張が走ったときだった。
ウーウーウーーー!
けたたましいサイレンが鳴り響き、赤色灯を光らせた何台ものパトカーが、近くに止まった。
「ちっ、くそっ!」
男が悪態をつき、観念をしたようにパトカーを睨む。
「警察だ!!」
複数の警察官が銃を構えて近づいて来るのを見たナズナは、ホッと安心した。
「幼稚園にいる誰かが通報してくれたのね…」
警察官がナズナの背後に来ると、ナズナは銃を下ろしてゆっくりと振り返る。
「ありがとうございます、助かりまし…」
「銃を下に置いて手を上げろ!!」
複数の警察官の銃口が、ナズナに真っ直ぐに向けられていた。




