特別公演1 「えっ、フーカちゃんが主役!?」
「〇月〇日。
今日は一日中先生の研究を手伝っていました。
先生がいま研究中なのは、なんでも持ち運び可能な転送術式で、一度でも行ったことのある場所ならいつでもそこへ移動できる、というものだそうです。
転送術式なんて送る側と受ける側の両方に大掛かりな転送装置を設置して、何十人もの術士が発動に関わってようやく稼働するかどうか、といったもののはずなのに、それをいつでもどこでも転送できるようにするなんて。
やっぱり先生は考えることが違います。
先生曰く『そういう魔道具を持った存在がいるとマスターに教えてもらった以上、私がそれに挑まない訳にはまいりません』ということだったけれど、本当にそんな存在がいるのでしょうか?
話に聞いている『門番』のことでしょうか?
この世界と別の世界を繋ぐ門を守っているという。
それなら分かります。
でも、それでも門が持ち運び可能なわけではないと思いますし……、やっぱり謎です。
取り敢えず今日は、先生の普段使っている転送術式に、これまで転送した場所の記憶を持たせる術式を組み込むことをやりました。
これがもうなんだかチンプンカンプンで。
まずきじゅんてんとなる場所を設定してそこからの距離をさんじげんで測定し、転送した場所の位置を記憶させる、次に今いる場所のざひょうも特定して転送先とのそうたいきょりを算出する、とかなんとか。
私にはさっぱりです。
何をやっているのかは理解がまだまだ及びませんが、先生のお手伝いをして魔術に関わっているのは本当に楽しいです。
でも先生、時々自分の世界に入り込んでなかなか帰ってこなくなる時があるから、それがちょっと面倒なんですよね~」
「〇月〇日。
今日は私の新しい固有術式を仕上げる日でした。
今回私が取り組んだのは『氷壁』の術式。
汎用術式としては中位の防御術式ですが、先生に言われて形状と威力を限界まで引き上げられるように、私なりに頑張ってみました。
結果は………、まあ、成功といっていいんじゃないかな?
ちゃんと発動したし。
魔力調整の術式は問題なく組み込めました。
そこにさらに氷の温度を引き下げる強化術式と発生させる壁の形状を任意に変形させる操作術式を組み込んだんですけど。
何故だか分からないけど、氷の竜と氷の虎が出来上がりました。(泣
どっちもものすごい低温で、周囲に煙? 霧? が発生するくらい。
これが私の周りをずっとグルグル回ってたんです。
先生が『ちょっと試してみましょう』と言って火球を打ち込んだんですけど、この2匹が吐いた冷気で全部撃ち落とされちゃって。
その時先生の目の炎がユラユラ光ったので、ちょっと怖かったです。
竜も虎も1刻ほど周囲をグルグルしていて、そのうちに消えていったんですけど、さすがに私も疲れちゃって。
先生が『今日はこれでお終いにしておきましょう』って言ってくれたので、そのあとはリホちゃんを誘ってお風呂にいって、体の流しっこをしました。
ここのお風呂はいつ入っても気持ちいいです。
いつでも入れるし、湯舟は馬鹿みたいに広いし、ウンディーネちゃんは体流すのとか手伝ってくれて優しいし、石けんはいい匂いだし、もういうことないです。
その後はリホちゃんと一緒に晩御飯を食べて、食後は二人で中庭でのんびりおしゃべりしてました。
リホちゃんもここに来た最初の時から、ここのお風呂とご飯には大満足だったそうです。
でも未だにご飯がどんなふうに作られているのかは知らないそうです。
いつも座るとすぐに真ん丸一つ目たちが持ってきてくれるからな~。
いつ作ってるんだろう?
思ったより魔力を使った日になったので、今日はもうこれで休みます。
おやすみなさい」
「〇月〇日。
今日はなんだかすごい人がここに来ました。
ナナさんっていう、ものすごい美人が。
美人っていうか、なんだろう、もうそういう言葉で表せないくらいの人。
体も大人だし………(泣
どうしてここの人たちって、みんな胸が大きいんだろう?
違うか、どうして私だけが胸が小さいんだろう?
………やばい、自分で書いてて落ち込んできた。
とにかくナナさんはすごい人だった。
何がすごかったって、先生と口喧嘩してるの!
先生
『貴方は大迷宮の管理があるのでしょう? 呼ばれもしないのにここへきている暇はないはずですが?』
ナナさん
『今は迷宮内にだれも侵入者がいないから問題ないんだよ。それよりあんたみたいな死にぞこない(思わず笑いそうになっちゃった)が弟子? を取るなんてどういう風の吹き回し?』
先生
『弟子ではありません。助手兼研究対象です』
ナナさん
『研究対象? また良からぬことを考えているんでしょ? ま~ったくこれだから魔導馬鹿は手に負えないんだよ』
ずっとこんな感じです。
リホさんは慣れているのか全然お二人に構わずにお茶を飲んでいましたが、私はそれどころではなかったです。
先生にあんな口を利けるひとがいるなんて、考えてみたこともなかったです。
しかもそれがあんなにスタイル抜群の美女だなんて。
でもその後マスター様が現れたら、ナナさん急にグネグネしはじめちゃって。
マスター様に『とっとと帰れ』って言われたら『あぁん♡』って言ってぺたんと座り込んじゃって。
私がビックリしていたら、リホさんが『あれはああいう性癖だから気にしないで』って言ってくれたけど、どんな性癖なんだろう?
結局その後ナナさんはご飯も食べてお風呂も一緒に入ったけど、やっぱりすごかったな。
私もあんな大人の女の人になれたらいいなぁ」
「〇月〇日。
明日はリホさんとマスター様が『試練の塔』から帰ってくる日!
いや~寂しかった。先生と二人で研究しているときはそうでもなかったけど、ご飯の時とかお風呂の時とか、一人でいるとふっと寂しくなっちゃうんだよね。
シルちゃんとかシフィちゃん(私の世話係ね)とかもいるし、真ん丸一つ目とか他の精霊ちゃんたちもいるにはいるけど、やっぱりリホさんがいないとなんか物足りないっていうか。
リホさんがいることで私もいつも前向きでいられる気がするの。
いつも励ましてもらってばっかりで申し訳ないと思う時もあるけど、やっぱり私にとってリホさんはそういう存在なんだなあって思う。
最初に出会ったときからずっと。
リホさんに出会えてなかったら今の私はありえないし、リホさんがいたからこそここでの生活も問題なく送れていると思う。
本当に感謝しかないよ。
あ~はやく帰ってこないかな~。
い~っぱい話したいことあるし、い~っぱい塔でのことも訊きたい。
一晩中おしゃべりしても足りないかも。
明日はリホさんの部屋でず~っとおしゃべりしてようかな?
あ、でも旅の疲れがあるから、早く寝たほうがいいのかな?
う~、どっちにしよう。迷っちゃう。
あ、マスター様は………、まあ、いいや。
きっとまたどっかいっちゃうし。
早く明日にな~れ」




