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四幕三場 「虫終わった? じゃあ大丈夫!」




「うっりゃああああ!」


 コマリのハンマーがスケルトンソルジャーを粉々に砕いて叩き潰していく。


「ぬぅん!」


 ザンスがスケルトンソルジャーの突進を盾で受け止め、そのまま壁に突進して圧し潰した。


「呪われし不死の者達よ、神の御心のままに天に帰りなさい!」


 エリが祈りを捧げると、残りのスケルトンソルジャー達が光に包まれ動きを止め、すぐにガシャリと崩れ落ちていった。


「これで全部かしら。この階層は不死者(アンデッド)なのかしらね。それなら私達には相性的に有利だけど」


 クルミは床に散らばったスケルトンソルジャーの残骸を眺めてそう呟いた。

 ザンスは別としても、打撃系の攻撃を持つコマリと、解呪(ディスペル)の能力を持つエリがいることは、不死者のうろつく階層ではかなり有利に戦闘を進めることが出来ていた。


「ま~た、俺の出番はないな。ま、不死竜(ドラゴンゾンビ)でも出てきたら相手してやるか」


 頭の後ろで手を組んだユーリは相変わらずだ。


(そんなもの出てきたら、こっちが逃げさせてもらうわよ!)


 クルミは内心舌を出しながらも、何でもない風を装う。


「ここの主も報奨品はなし、か。この先不死者が続くとすれば、報奨品には期待できんな」


 ザンスの言うとおり11階の階層主を倒したというのに、報奨品は現れなかった。

 元より迷宮で出会っても報奨品を落とすことの滅多にない不死者が相手である。

 ここから暫くは単に敵を倒すだけの繰り返しになる、と思うと、気持ちは少し滅入るものがある。


「不死者の報奨品を手に入れるのは、教義的にあまり勧められたものではありませんが……」


 エリが少々遠慮がちに意見を出すが、それはザンスに対する遠慮というよりは、報奨品が出てくることを望んでいるユーリに対する気遣いだった。


「とにかく先に進みましょう。まだ11階層目。当初の予定より少し遅れ気味だわ」


 クルミが一同を急かす。王国からの命ではできる限り早く攻略を進めるように、とのことだったが、内々に40日という期限を切られているのだ。

 王国には塔の攻略を急がせる理由がなにかあるらしい。


「いや、ここを出たら一回休憩にする。俺はシャワーを浴びたい」

「はあ? こんなところでもう引き返すの? それじゃいつまで経っても攻略なんて……」

「い~や、一回戻る。さっきのゴブリン共の血が臭ってきた」


 まったく、この勇者は………。

 クルミはイライラした気持ちを何とか抑えて、ユーリに従った。


 結局この日勇者パーティは野営地に戻り夕食を取った後、そのまま眠りについてしまい、再攻略は翌日の朝になったのだった




 その頃、31階では。


「ああ~~~~、ほんっと、死ぬかと思った」


 直前の階層主の部屋で、自分よりも大きな蜘蛛を相手に恐怖の戦闘を繰り広げてきたリホは、31階に上がるなりその場にへたり込んでしまった。


「あんっなに虫が出てくるなんて、ホントありえない! それだけでこの塔を作った張本人をぶっとばしてやりたくなるわ」


 棒を杖代わりにして何とか立ち上がったリホは、回廊を小部屋まで進んだ。

 部屋の扉をそぉーっと開け、中を覗き込む。

 中の様子を窺うと、部屋の奥に固まっている黒い影は、どうやら虫系の魔物ではなさそうだった。


「よしっ! これならいける!」


 拳をギュッと握りしめたリホは、取り敢えず虫の姿を忘れようと結界を張って休憩を取ることにしたのだった。




「ほお~、リホはん、31階層まで到達しましたで?」

「なんとか虫退治できたみたいだな」


 画面の中でへたり込んでいるリホを見て、師匠とD・Jは面白そうにしている。

 エラはじっとリホの様子を見つめていた。


「こっから先は虫系の魔物は出てこんから、リホはんもやりやすくなるんとちゃいまっか? しっかしあんだけ虫苦手言うとったら、『大迷宮』に行っても苦労しなさるんは目に見えてまんがな」

「『大迷宮』に行くときは他にも誰かいる形になるだろうから、なんとかなるだろ。それより本人は、虫相手に『気』が有効なことが分かって安心してるんじゃないか?」

「…………ご主人様」


 エラが入ってきた。


「リホ様に『気』を伝授されたのは、強くなさるためですか?」

「ああ、そうだ。あれは魔力がからっきしだからな。剣術も訓練所で全否定されたらしい。唯一身のこなしだけは探索者だけあって何とかなりそうだったから、『武術』と一緒に教えたのさ」

「魔力も、剣術も駄目………」

「そこはお前とはまるで違うところだよな。お前は出会ったときに既にそれなりの強さを持っていたからな」

「いいえ、私などご主人様に比べれば」

「謙遜することはないさ。お前の剣に敵うものがいるとすれば、剣神くらいだろうさ。それだってお前が本気を出せばどうなるものやら」

「おっしゃる通りでんがな。我が主が本気出せば、剣神なんぞ一発で真っ二つでんがな。たとえ相手が主神サラディン様やったとしても、我が主が後れを取ることなどありゃしまへん。なんたってあのアバズレ悪魔の腕をズバンと切り落としたんでっせ? あんなの我が主以外に……」

「D・J黙って」


 エラがまたD・Jを抑え込むが、どことなく恥ずかしそうだ。


「31階層の階層主は?」

「たしか獣人系だったかと」

「じゃあ安心して見てられるな。面白くはないが」


 師匠はまた画面に戻っていった。


「そういやあいつらはどうしてる?」

「あのグランマルスの連中でっか? ちょっと前にあの勇者みたいなパーティだけ外出ていきはりましたけど?」

「今は?」

「お待ちください」


 エラが画面に触れると映像がリホから勇者パーティへと切り替わった。


 そこには巨大ムカデ2匹と対峙するユーリ達の姿があった。





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