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「あの……それで、先ほどの美食のお礼を…」


「さっきのお話で十分ですよ。それほど高いものでもありませんからね」


それでもなお礼を尽くそうとする姿勢を崩さないシュバルツさんであったが、湯川所長からお呼び出しがかかったのでそちらに出向くことになった。


最後まで恐縮そうな雰囲気であったが、ちゅ〇るだけでそれほど畏まる必要はないんだけどな。こっちで生活していればその価値に気が付いて『それほど気にしなくてもよかったんだ』と考えを改める機会もあるだろう。


「あ、あの!ダンジョウさん!とっても美味しかったです!ありがとうございます!!」


今度はクロムが頭をガバっと下げてお礼を言ってきた。


見た目からでは判断しにくいが言葉の雰囲気からすると多分この子はまだ子供なのだろう。とても礼儀正しい子だ、親御さんの教育の賜物だな。こういった健気で可愛い子には色々と施したくなるのが大人というものだ。


「よしよし。キチンとお礼が言えて偉いぞ~。ついでにこれを持って行くといい」


箱買いしたちゅ〇るを渡すと目をキラキラと輝かせ、再び頭を深々と下げるとシュバルツさんの後を追うように駆け始めた。


大事そうに抱えながら走る姿は、遠い過去に置き忘れてしまった童心というものを思い出させてくれる。そんな朗らかな気分に浸っていると、ハヤトが『俺のことを忘れんな』とでも言いたげな様子でじゃれついてきたので抱き上げて落ち着かせた。


「ここに来られた獣人はあの2人だけなんですか?」


「いえ、彼らを除きあと4名ほど来ていただいています。まずはコチラのことを知っていただき、そのあとどういった関係を構築していくかを話し合うそうですよ。もっとも彼らの様子からすると今住んでいる場所を離れることをそれほど忌避している様子もないので、もしかするとリュウイチさんたちのようにココに移住されるかもしれません」


「『新天地』は環境が厳しいですからね……やっぱり、移住計画には『転移』を使える人を中心に据えるんですか?」


「そうなりますね。ですが『転移』を使える人は数が少ないですから……」


「あの、例えばですけど『陰の歴』になってから移住計画を進めるとかはできないんですか?今はモンスターが跋扈していますが、寒い環境になるとモンスターの活動が衰退したりするんじゃないですか?」


「私どももそう考えていたのですが、残念ながら『陰の歴』にも活発に活動するモンスターもいるそうですよ。聞いた感じだとマンモスとかイエティに似ているそうだとか。厚い毛皮に全身が覆われているおかげで寒い中でも平気で動き回っているとか」


「そうなると時期をズラして移住計画を進めても、あまり意味はないってことですか。着実に少しずつ移住計画を進める必要があるってことですね」


「ええ。ですがあまり長い時間をかけて計画を進めることができるほど、ウチも予備費に余裕がないですからね。物資の面でもそうですが、件の『転移』を使える探索者に支払われる依頼料も必要ですから」


『予備費に余裕がない』というのは仕方のない事だろうな。何せ今年はドラゴンが出現したことで予想外の出費がかさんだはずだ。


もちろん相応の見返りもあっただろうが、別の収入の方法を探らなければいけないだろう。


「………いっそのことクラウドファンディングとかで募金を呼び掛けるなんてのも面白いかもしれませんね」


「ほう?」


「例えばクロムに動画に出てもらって、『僕たち獣人を助けて下さい!』なんて健気な様子でお願いされたら無下にできるヒトはそうはいないんじゃないですか?」


「なるほど、おっしゃるとおりかもしれません。獣人を庇護する姿勢を前面に打ち出せば『協会』のイメージアップにもつながりますからね。ちょっと上と相談してきます」


そう言うと来た道を戻って行った藤原さん。


そう言えば、あの3名はどうして一緒に行動していたのだろうか?


まさか実家で黒柴を飼っている彼に、黒柴に酷似した姿をしているシュバルツさんたちの世話係を任せていたとかか?……ま、いっか。


とりあえず旅の疲れもあるし寮に帰ることにするか。

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