パワハラ上司
翌日。
マヒトが拠点としている町、オーデルは、黄金の剣が解散した話で持ちきりであった。勇者パーティーが解散となったのだ。話題になるのは当然である。
優秀な冒険者を集め、モンスター討伐において一定の功績を上げたパーティーは、未だ発見にすら至らない魔王討伐への期待を込めて、勇者パーティーと呼ばれる。中でも、マヒトたちは特別。特にレオンの人気は凄まじく、町で一番認知されていたパーティーが、黄金の剣だった。
ただ、マヒトが目を覚ました頃には既に、噂は正常な形を失っていた。酷いパワハラで有名な悪魔くんが、パーティーメンバーを全員クビにした、という事にされていたのである。
こういった扱いに慣れていたマヒトが気落ちすることはなかったが、迷惑な話ではあった。これから別のメンバーを探してパーティーを作り直さなければならないというのに、パワハラ上司という印象が町中にこびり付いてしまったのだ。ちなみに、彼は常習的に仲間のトンを蹴飛ばしていたため、全くの誤認というわけでもない。
「クソが」
転がってきた空き瓶に、溜まったストレスをぶつける。真っ黒な革のとんがったブーツに蹴り上げられたそれは、ふわっと浮き上がって、見事、スキンヘッドに命中した。ガラの悪い二人組の、背の高い方に当たってしまった。
「何だテメエ、やってくれたなあ…って、ひい!悪魔く…アクツさん!」
「おお、瓶の野郎が悪かったな、クソハゲ。そうだ、仲間を探しててよォ。俺様の完璧な作戦に、手前みたいな筋肉馬鹿…丁度欲しかったんだよなァ!」
「すんません、俺…パーティー組んじゃってるんで!」
マヒトの勧誘は、あっさりと失敗した。成功する可能性があると思っているのは、本人だけである。何せ、彼は愛想良く話かけているつもりでいるのだ。鮫よりも凶悪な歯を見せ付けて、上からドカッと肩を組んで、愛想も何もあったものではない。が、彼の美的感覚が正常でないことは、ジャラジャラとやかましいだけの、趣味の悪いシルバーアクセサリーたちが、とっくに証明していた。
「金でも、愛想でも釣れねえ。…まあいい。本命はこっからだ」
目的地に辿り着いたマヒトは、見上げる。
『奴隷オークション会場』
実に明快な看板が掲げられていた。




