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死神の敗因

 初めて会った時から、私はあの女が好きではなかった。

 有脩様はあの女をずっと見つめていた。


「土御門様、卑弥呼様。

 例えば、卑弥呼様のお力を宿した破魔矢とかないのでしょうか?」

「いや」


 有脩様はあの女を自分の手元に置こうと、有春様が念を込められた破魔矢の事を隠そうとしている。


「ありますよ。

 これが私の力が込められた破魔矢です。

 お渡ししますので、これで妖退治に出かけられるがよろしかろう。

 お探しの妖狐は三好長逸に憑りついております」


 これで、邪魔な女を追い払うことができる。


 その後、すぐに私はこの女の力を知った。

 見習いの巫女などと称しているけど、破魔矢の一撃で数多の妖を一気に消し去ったかと思えば、鬼さえも消し去った。

 だと言うのに、自分の力に気づいてさえもいない。

 私はあんなに修行していると言うのに、訳も分からないこの女に私は霊力でも及ばない……。

 嫌いだ。この女。



 有脩様たちとの旅の途中。

 川に沿った小さな街道は長閑で、はるか先に見える山々の頂には少し雪が残っている。


「みんな、気を付けて」


 辺りには何も危ないものなど無いと言うのに、あの女が言った。

 何が起きたのか、そう思った時、その女は私の横にいた。

 しかも、私に身をくっつけ、弓矢を構えさせた。

 言われるがまま弓矢を放つと見えていた街道は消え去り、違う道が現れた。

 街道だと思っていた先は川につながる崖だった。



「今日は助かりましたよ。

 幻を操る妖に、危うく谷に落とされるところでした」


 空真があの女に言った。


「でも、退治してくれたのは卑弥呼様ですし」

「いえ、やはりルリ殿のお力です」


 今度は有脩様が言った。


「私なんか、卑弥呼様に到底及びません」


 振り返って有脩様にそう言ったあの女の笑顔。

 私は霊力でも勝てなくて、笑顔でも勝てない……。

 有脩様はあの女の笑顔に吸い寄せられるかのように、その女の所に駆けだそうとしている。


 嫌。いかないで。

 私は有脩様が大好きなの。

 その女ではなく、私を選んで!


 そんな想いで有脩様の服を掴んで、引き留めようとする。

 だけど、有脩様の力に抗えない。

 嫌、嫌なの。行かないで!

 必死に願う私に振り返った有脩様だと思っていた人の顔は私だった。


「一緒にどこに行く?

 あの女と同じ場所?

 行きたくないよね。

 あの女を殺すため、一緒に地獄に行くか?」





「みんな、目を覚まして!」


 遠くからあの女の声がする。


「ルリ、早くあやつに射ろ。

 あやつは死神じゃ」


 これは清子様の声。


「ば、ば、ばかな。

 この私が破魔矢ごときで。

 あの望月とか言う巫女にやられた傷が完全には癒えていなかったのか?」


 見知らぬ者の声がする。これは死神の声?

 死神があの女の破魔矢でやられたのか?

 ふん。傷のせいにするか。真の敗因ははあの女を見くびっていたからであろう……。


「みんな、起きて。

大丈夫なの?」


 私の嫌いなあの女の声がする……。

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