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死神襲来

 朽ち果てかけた若狭の古い屋敷の一室。

 向かい合って座っているのは父上と私。


「よいか、有脩。これより先、この子はお前の妹となる」

「父上様。その子はどこの誰なのですか?」

「ふむ。京の街の通りで拾うてきた孤児じゃ」

「何故、そのような子を?」

「感じぬか?

 この子の霊力の強さを。

 やがて、この子は我が土御門の名を背負う者となるであろう」


 なにゆえ父上は私ではなく、あのような道で拾った者にこの家を託そうとするのか……。



 若狭の鄙びた村の外れに父上と私、そして清子の三人が立っている。

 私と清子が目の前の荒れ地に人型の紙をばらまき、それぞれが印を結んだ。

 私の人型が立ち上がり、人のような動きを見せ始めている。

 一方、清子の人型は巨大な戦士のような容姿となり、戦闘隊形をとった。


「12神将の式神も扱えるようになったか。さすが清子。

 有脩はまだ扱えぬか……」



 京に移ったばかりの屋敷の中。

 父上と公卿の二人の話を襖越しに私が聞いている。


「有脩様の力及ばずとも、清子様がおられれば事足りますでしょう。

 土御門として、京の妖を退治していただきとうございまするなあ」



「世間の奴らは口を開けば、清子、清子、清子。

 血もつながらぬ年下の娘より私は劣ると申すのか!」




 清子が去った屋敷の中、再び父上が見知らぬ娘を連れて来た。


「有脩。

 この娘は清子と同様、道で拾うて来た孤児である

 名をしのと言うらしい。

 この者も大きな霊力を有しておるゆえ、我らで育てよう」



「父上は私をお認めにならぬのか。

 見ておるがよい。

 なら、私はあの古の巫女 卑弥呼を呼び出し、私の右腕としてみせよう」




 京の屋敷、昼間だと言うのに襖を閉じ、部屋の四隅にのみ蝋燭を焚いた薄暗い部屋。

 床には魔法陣が特別な染料で描かれている。


「卑弥呼を呼び出すと公言し、背水の陣を引いたのは自信もあったから……。

 確かに手応えはあった。

 はるか彼方に感じた卑弥呼の気配をこの世に連れて来たはず。

 だと言うのに……」

「過去に存在したお方を呼び出すなど、誰にも成し遂げられなんだ事だ。

 それをお前にできようはずがない。

 そんな事もあろうかと、しのに古の巫女の姿をさせておる。

 卑弥呼を見ようと集まった者たちにはしのを卑弥呼だと申せばよい。

 しのの容姿をしっておる者はおらんのだからな。

 これは私の念を練り込んだ破魔矢だ。

 これをしのに使わせれば、卑弥呼だとみな信じるであろう」


 父上はやはり私の事を信用してはおらなんだ……。



 その女子は見た事も無い服を着ていた。

 私が目をひかれたのはその服装ゆえではない。

 その女子の容姿だった。

 そして、その女子は私に言った。 


「ぜひ、卑弥呼様のお力を我らの妖狐退治にお貸しいただけませんでしょうか?」


 しのの力では不可能だ。

 卑弥呼が偽物だとばれるのは困る。


「我らには京を守る務めがあり、それはできぬ。

 が、そなたの身柄はこちらで預かろう。

 ここで修業するがよい」


 私の答えはこの一択だ。

 卑弥呼が偽物だと言うのもばれない。

 しかも、この女子を手元における。

 だと言うのに、しのが父上の念が込められた破魔矢の事を言った。


「どうして、この方たちにはお分けにならないのですか?

 私はあの巫女見習いに破魔矢を渡し、それで戦いに出向いてもらえばいいと思いますが」


 あの時、あの女子は私のもとを離れて行った。

 私に清子のような力があれば……。




「この男を助けたければ、このただの矢に破魔の力を込め、我を射てみよ」


 半身凍らされた父上をつれた雪女が言った。


「言っておくが、人の弓矢では役に立たぬぞ。

 卑弥呼の矢と呼ばれる破魔の力が必要じゃ」


 そんな事、私にできる訳がない。

 

「卑弥呼は出さぬのか?」


 卑弥呼など本当は呼び出せてはいない。

 俺は無力だ。俺はだめな奴だ。


 雪女が消え去り、屋敷の庭に倒れ込んだ父上に駆け寄った。


「父上様!」

「誰が死のうとしているんだ?」


 父上だと思っていた男が私を見て、そう言った。

 その顔は有脩 私自身だった。


「そうか。死ぬのは非力な私なんだ……」

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