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風神再来

 混乱に乗じ、長島城を脱出を図る私たちを強風が襲った。

 まるで城から出て来た一揆衆たちを城に追い返そうとするかのような強風。

 まともに風を食らっている一揆衆たちは完全に吹き飛ばされている。

 少し外れた場所まで逃げ出していた私たちでさえ、踏ん張っていても、飛ばされそうな力である。

 邪気を感じ、空を見上げると、明智に片腕を斬り落とされた風神がいるじゃない。


「有脩様、あそこ」


 必死に踏ん張りながら、上空を指さす。


「いかん。

 明智様の鬼切りがなければ、あの妖は倒せない」

「望月様の破魔矢でも無理ですかね?」


 そう。私はまだ望月様からもらった破魔矢を残してある。


「あれは神を冠する妖ゆえ、無理であろう」

「ともかく、この場から少しでも離れましょう」


 有脩と私の会話に藤井が割って入って来た。

 みな、それに賛同し脇に外れていく。


「きゃっ!」


 大きな風の音の中、卑弥呼様が小さな悲鳴をあげ、有脩の腕にすがりついた。


「大丈夫ですか?」


 その言葉に頷いた卑弥呼様を有脩が腕で包み込むようにして、支えながら進んで行く。

 風が弱まったその時、私は一つの大きな気を感じた。


「この気は清子様?」


 その気の方向に目を向けると、少し離れた場所に清子様の姿があった。

 破魔矢を構えるでもなく、静かに空中の風神を見つめている。


「清子様」


 そう声をかけ、清子様に近づいて行く。

 そんな私に気づいたみなも清子様の前に集まって来た。


「おお、そなたは。

 よいところに。

 そなたの申したとおりの場所で、三角縁神獣鏡を手に入れる事ができました。

 ついてはあの風神でこの鏡による封印を試しておきたいのです」

「それは助かります」


 そう言ったのは空真だ。


「封印には力の強い巫女 二人の協力が必要なのです。

 手を貸していただけますね?」


 なぜだか清子様は卑弥呼様ではなく、私に言った。


「でしたら、私なんかより卑弥呼様の方が」

「いいえ。そなたに」


 そう清子様が言った時、風神が私たちの存在に気づいたらしく、風の向きを変えた。

 強くなる風で立っているのがやっと。だと言うのに、風神は雲に乗ったままゆっくりと近づいてくる。


「兄上様、お力を貸していただけませんか?」

「私に何をしろと言うのだ?」


 有脩が清子様に言った。


「封印するまでの間、風神の注意を引きつけていていただけると助かるのですが」

「分かった。

 できる限りやってみよう」


 少し中が悪い雰囲気の二人だったけど、いざと言う時は互いに信頼し合う兄妹って感じ?

 なんて思っている私の腕を掴み、清子様が私を道の外れに連れて行った。

 風神に目を向けると、その正面に立って有脩がお札を手に立ち向かっている。その横には空真と卑弥呼様。

 とは言え、破魔矢でさえ倒せない風神である。

 ダメージを受けていなさそうなばかりか、逆に怒りを爆発させ気味にも見える。


「よいか!」


 清子様の言葉に、気合を入れる。


「この鏡にあやつの姿を映すのです」


 清子様はそう言うと私に一枚の三角縁神獣鏡を手渡した。


「はい」


 そう言って、風神に鏡を向けた。


「そうではない。

 私の言うとおりに鏡を動かすのです」


 清子様はそう言うと少し離れた場所に移動し、私に鏡の向きを指図した。

 どうやら、清子様の位置から鏡を通して風神が映るようにしようとしているらしい。


「もう少し上。

 もう少し左」


 言われるがまま、鏡を動かす。


「そのまま。

 破邪の気を鏡に込めて」


 清子様はそう言うと破魔矢を私に向けて構えた。

 矢が外れたらどうしよう?

 そんな恐怖を清子様への信頼で打ち消す。

 心清く、心静かに。

 ひたすら自分を清く保つ。


 ビュッ!


 そんな音と共に清子様の放った破魔矢が私に向かって飛んでくる。

 その矢は三角縁神獣鏡に到達したかと思うと、まばゆい光を放ち、鏡の中に吸い込まれていく。

 そして、風神は乗っていた雲から落ち、その頭から私の所目がけて飛んでくる。

 風神の体は私に近づくに従い小さくなっていき、私が手にしていた三角縁神獣鏡に吸い込まれ、この世から消え去った。


 風神に表立って戦っていたのは有脩たち。

 そんな光景を目にしていた人々は有脩の名を口にし始めた。


「あれこそが土御門の有脩様のお力」

「有脩様がおられれば、妖など恐れるにたりず」


 誤解され、そうもてはやされる状況に有脩は困惑気味だ。

 一方、実際に風神を倒した清子様はと言うと、そんな事全く意に介していない風で、清子様は私たちと行動を共にすることになった。理由は三角縁神獣鏡を使うには強力な巫女二名の連携が必要だからと言うことらしい。


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