卑弥呼様が放った破魔矢!
私たちは美濃から尾張を目指していた。
「ルリ殿、疲れていませんか?」
有脩は旅の途中は頻繁に私に話しかけてくる。
「大丈夫ですよ」
とりあえず、にこりと愛想よく返すけど、心の中では卑弥呼様をほったらかしていていいの? と思ってしまう。
だって、そんな時、卑弥呼様はいつもムッとした表情だし。
なんて事を思っていても、のんびり旅気分なのは確か。
「そう言えば、ルリ殿は清子が探している三角縁神獣鏡とか言う銅鏡の事をよく知っていましたですね。
どこで、そんな知識を?」
「まあ、偶然?」
なんて、軽くかわしていく。
そんな緩い空気を吹き飛ばしたのは空真だ。
「来ます!」
「なにがですか?」
有脩は呑気に言った。
私は近づく妖の気配を読み取る事はできないけど、空真の言葉の意味を読み取ることはできる。
有脩って、妖の気配だけでなく、空気も読めないらしい。
柳生、藤井、さなはすでに戦闘態勢に入っている。
空、地上の全方向から妖たちが私たちの所に寄り集まって来る。
「今までにない数だ」
柳生の言葉にも緊張感が漂っている。
「念珠筒で行きますか?」
「任せる。
ただ、数が多すぎて、突破口を開けるのも難しいだろう」
さなの問いに柳生が答えた。
「私も破魔矢放てばいいですか?」
「数に限りがあるのだろうが、任せる」
柳生はそう言った後、有脩と卑弥呼様に言った。
「有脩様、卑弥呼様。
今回ばかりは卑弥呼様に破魔矢を放ってもらわねばならぬかも知れません」
「なんのこの程度。
我々で対応できますよ」
有脩はあくまでも卑弥呼様の力を秘密にしていたいらしい。
柳生、藤井が刀を抜き、妖たちの中に斬り込んだ。
空真はお札を投げつけ、妖たちを葬っている。
さなはまずは手裏剣で戦いを開始した。
有脩も呪符で戦い始めた。
次々に妖たちが倒されて行く。
そんな中、大きな猫の妖が現れた。
口を開けると大きな牙が見える。
「この化け猫は任せろ!」
柳生が化け猫に襲い掛かるが、動きが速すぎててこずっている。
空から妖の一団が私の方に向かって来た。
背に腹は代えられない。
卑弥呼様の破魔矢を放つ。
軌跡の周囲にいた妖たちが光の粒になって消えて行く。
あの鬼と戦った時と同じくらいの威力。
しかし、残りの矢はあと三本。
雑魚は大物に率いられている。と言う事はあの化け猫を倒せばいいの?
と思った時、女性の悲鳴が耳に届いた。
「きゃぁぁぁぁ」
妖たちの向こうに一人の若い女性の姿が。
その女性を助けようと藤井が妖たちを切刻みながら、向かって行く。
が、妖の数が多すぎて藤井の速度は亀並。
私の位置からなら、藤井と女性の間の妖たちの多くを消し飛ばすことができる。
ここは使うしかないっしょ。
と、藤井と女性の間に向け破魔矢を放った。
破魔矢の軌跡に沿って、妖たちが光の粒になって消え去った。
その時、私はその女性が後方に下がる姿を見た。
矢が怖くて逃げた?
いや、物理的には十分な距離があったはず。
もしかすると。
「藤井様。
ちょっと待ってください。
卑弥呼様、空真様、有脩様。
あの女性は人ですか?」
「分からない。
妖が多すぎるし、戦っている最中にそんな事は分からない」
空真が答えた。
「すみません。私もです」
有脩も同じ答えだ。まあ、この人には期待していなかったけど。
背後にいる卑弥呼様は怯えたような顔で、破魔矢を打つ体勢で固まっている。
「お侍様、お助け下さい」
その女性はそう言って、妖たちが消えた空間を通って藤井に向かって駆けだし始めた。
「卑弥呼様、あの女の方向に破魔矢を」
その言葉に卑弥呼様の手が狙いを定める前に緩んだのか、破魔矢があらぬ方向に飛んで行った。
そして、そこにいた妖一体を光の粒にして消し去った。
威力が空真や有脩の札レベル??




