王都脱出編―平穏な日常と終わりの使者⑤
軍曹の一言で散らばり、訓練していた兵がいっさいに行動を開始する。彼等はエリザの前に10列6人横隊で並ぶと、ババローネは恭しく礼をした
「一同並びました。」
だから何なんだよ、とは言えない。嫌われたくないからね。しかし全く余計なことをしてくれた・・・。気にしなくっていいって言ったのに・・・。
「え、え~と楽にしていいわよ。」
引きつった顔でそう言うエリザに、軍曹は大声で号令を出す。
「休め!」
「あ、あはははは・・・。」
何なんだいまったく。
若干・・・と言うかかなり引き気味のエリザ。そんな様子をよそに、軍曹はエリザの隣に来る。耳元で囁いた。
「それではエリザベータ様、一言労いの言葉を。」
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どうしてこうなった・・・。60人ほどの兵を前にエリザの頭はそんな言葉で埋め尽くされていた。
エリザベータ17歳。
前世はほぼ一生を病室で、今世は一年前まで自宅でぐーたらしていた生粋の引きこもり。そんな引きこもりにどうしろと?頑張った、とか言えばいいのか?
そんな無為なことを考えてく間にも沈黙は流れていく。どんどん言いにくくなっていく。もう何秒経ったのか\\それとも何十秒か・・・
無意味な時間を費やしながらエリザは眼をつむった。目をつむると何故か頭が冴える様な気がしたからだ。つまり特に意味は無い。
レインハルトはそんなエリザを見とがめて、一歩前に出ると、仰々しく片膝を着いた。
「エリザベータ様。恐れながら皆分かっていないようなので、私めにエリザベータ様の御心を説明させていただく栄誉をいただきたく思います。」
「え、は・・・?」
分かっていないも何も、エリザ自身何も考えてないのだ。当たり前だ。しかし、渡りに船。乗らない手はない。
エリザもおもむろに頷いた。
「ええ、許します。」
「は、有難き幸せ!」
レインハルトは流水の様な洗練された所作で立ち上がると眼光を強め兵士たちを睨んだ。兵士たちは何か不味いことをしてしまったのかと内心ビビった。勿論分かっていると思うが、ただの責任転嫁である。兵士たちは何も悪くない。
レインハルトはさらに一歩前に出る。
「本当に誰も分からないのですか?」
とにかく兵士は悪くない。
「はあ~。まあいいでしょう。ならば耳をかっぽじって聞きなさい。エリザベータ様の御言葉を!」
そこで一旦区切るとレインハルトはさも当然のように言葉をつづける。
「エリザベータ様はこう仰られていたのです。お前達に言葉は必要ない、と。自分が信頼する騎士ならば私の心を受け取ってくれると。つまりはそう言うことです。」
肝心なとこ堂々とはぐらかしたな(汗)・・・
騎士の反応は・・・
「なんと・・・」「そのような・・・」とか「バカな・・・」とか一様に驚いてはいるが・・・、
ま、まあ丸く収まるならそれでいい。深くは考えないことに決めた。
エリザはゴホンと咳を吐く。
「さすがわレインハルト。私の言わんとするところを完璧に言ってくれたわ。」
「勿体なき御言葉。恐悦至極です。」




