王都脱出編―平穏な日常と終わりの使者⑥
『ふむ、そして先程こんなことも言ってたな。”貴方達の頑張りには何時も励まされているわ(はーと)”』
いつの間にか私の腕からスライムが消え、レインハルトの頭の上に居た。そして、とんでもないことを言っていた。
固まるエリザ。咆哮を上げる騎士。殺気を飛ばすレインハルト。何が何だか分かっていないが、とにかく笑うババローネ。
その一言で第一兵舎はカオスに包まれた。
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「エ・・・ベ・・・さ・・・」
言葉にし難い虚無的な空間の中にいた。周りがぐらぐら揺らいでいるような、時間も空間も可笑しい場所。遠くから声が聞こえる。
「エ・・・ザ・・・タさ・・・」
何だ・・・。聞きなれた声なんだが・・・。いまいち頭が覚醒せず、思い出せない。
「エリ・・・。エリザ・・・。・・・エリザベータ・・・。エリザベータ様。エリザベータ様。」
エリザベータ?何だその外名。・・・。あ、私の今世名だった。
もしかして私呼ばれてる・・・。
重たい目をゆっくりと開く。
寝覚めの耳にガチャガチャとなる重たい金属音が聞こえる。幾重にも重なる剣筋が見え、ようやくここがどこなのかを思い出した。
「兵舎・・・。第一兵舎ですか?」
「はい。その通りです。」
優しい声が聞こえる。レインハルトの声だ。
「もしかして私ねむちゃってた?」
やってしまった。とんでもない失態を。エリザは返事も聞かずに、矢継ぎ早に質問する。
「どのくらい経った、みんなは・・・。あ、あと・・・。」
「大丈夫です。十分ほどしか経っていませんし、皆も見ての通りです。」
「そ、そう。」
取り敢えずなにも無かったと分かり、安心した。
そうか・・・何もなかった・・・のか?
何かが引っかかる。何かとんでもないことを忘れているような・・・。
う~ん。
なんかこう・・・大変な・・・。
ま、思い出せないならその程度の事だってことでしょ?
持ち前の前向きさで頭に残る違和感を捨て、膝に乗っているスライムをなぜた。
いつも以上に小さく見えてとても可愛いのだ。
プルプルと震えてる感じが、更に萌ゆるわ。
そんな事を考えながら、エリザは再び騎士の練習見学を続けた。




