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王都脱出編―平穏な日常と終わりの使者⑥

 『ふむ、そして先程こんなことも言ってたな。”貴方達の頑張りには何時も励まされているわ(はーと)”』

 いつの間にか私の腕からスライムが消え、レインハルトの頭の上に居た。そして、とんでもないことを言っていた。

 固まるエリザ。咆哮を上げる騎士。殺気を飛ばすレインハルト。何が何だか分かっていないが、とにかく笑うババローネ。

 その一言で第一兵舎はカオスに包まれた。


***********************


 「エ・・・ベ・・・さ・・・」


 言葉にし難い虚無的な空間の中にいた。周りがぐらぐら揺らいでいるような、時間も空間も可笑しい場所。遠くから声が聞こえる。


 「エ・・・ザ・・・タさ・・・」


 何だ・・・。聞きなれた声なんだが・・・。いまいち頭が覚醒せず、思い出せない。


 「エリ・・・。エリザ・・・。・・・エリザベータ・・・。エリザベータ様。エリザベータ様。」


 エリザベータ?何だその外名。・・・。あ、私の今世名だった。

 もしかして私呼ばれてる・・・。


 重たい目をゆっくりと開く。

 寝覚めの耳にガチャガチャとなる重たい金属音が聞こえる。幾重にも重なる剣筋が見え、ようやくここがどこなのかを思い出した。


 「兵舎・・・。第一兵舎ですか?」

 「はい。その通りです。」

 優しい声が聞こえる。レインハルトの声だ。

 「もしかして私ねむちゃってた?」

 やってしまった。とんでもない失態を。エリザは返事も聞かずに、矢継ぎ早に質問する。

 「どのくらい経った、みんなは・・・。あ、あと・・・。」

 「大丈夫です。十分ほどしか経っていませんし、皆も見ての通りです。」

 「そ、そう。」

 取り敢えずなにも無かったと分かり、安心した。

 そうか・・・何もなかった・・・のか?

 何かが引っかかる。何かとんでもないことを忘れているような・・・。

 う~ん。

 なんかこう・・・大変な・・・。

 ま、思い出せないならその程度の事だってことでしょ?

 持ち前の前向きさで頭に残る違和感を捨て、膝に乗っているスライムをなぜた。

 いつも以上に小さく見えてとても可愛いのだ。

 プルプルと震えてる感じが、更に萌ゆるわ。

 そんな事を考えながら、エリザは再び騎士の練習見学を続けた。

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