王都脱出編―平穏な日常と終わりの使者
朝。目を覚ます。
見慣れた天井。シャンデリア。ふかふかのベッド。ベージュのレース。伯爵令嬢の朝は格別である。初めの頃はあまりの豪華さに落ち着かず、眠れぬ日々が続いたが、慣れるとこれ程いいものはない。
「ファ―~ファ―~~。」
欠伸に伸びをして、上半身を起こす。季節は春も中盤。清々しい晴天。最高の昼寝日和!
心地いい空気を肌で感じながらうつろうつろすること数分。
いつもならこの時点で三回は、ミランダからの「おはよう。」コールがあるはずなんだが・・・。
「ミランダは・・・。」
寝言半分に口を開く。答えを期待しての物じゃなかったが、その答えは随分近くから返ってきた。
『ミランダならもう屋敷を出ってたぞ。』
布団の上でだらけ切った格好のスライム。この主人にしてこのスライム在りである。
エリザはルーの言葉にようやっと昨日の事を思い出した。
そう言えば明日は用事があるから暇を貰いたいとか言っていたな。すっかり忘れていた。
「すみません。エリザベータ様。」
目の前には綺麗に深く頭を下げるミランダ。エリザはアタフタと止めに入った。
「それと、誠に残念なのですが、これにつきまして明日の勉強と礼儀作法は中止にさせていただきます。」
「え、それは良かっ・・・。いえ、気にせずともよろしくてよ。」
「もちろん、遅れの分は後日挽回させていただきます。」
「ホントに気にしなくていいのよ。」
「気にしなくてはいけない程、エリザベータ様の現状がヤバいのです。」
「そ、そうでござるか・・・。」
などと言うやり取りがあったのだ。昨日の晩の事である。
期せずして聞かされた真実に涙が出たが、それはそれ。
エリザベータの一日の大半は勉強と礼儀作法に充てられている。すなわち、それが無くなると言うことは一日の大半を自由に使えると言うことだ!
「一日・・・何しようかしら♪」
何か良いことがありそうだ。
この日の始まりはエリザにとって上々の物だった。




