王都脱出編―幕開け③
「あの事件が起こる一年前・・・私と伯爵は国王からある噂の真偽を確かめよ、と言う密命を受けていたんだ。」
「噂っというと?」
「第二王妃マーリンがとあるオカルト的な危険な『力』にご執心だ、と言うものだ。」
危険な力・・・。少なくともエリザの記憶にはそれらしい物は見当たらない。もっとも私の記憶フォルダはKBにも満たないスカッスカだが・・・。
「マーリン様と言えば、女帝レディー・ローズに並ぶと証される程の才と美の持ち主と聞いていますが・・・。」
実際会った感じも噂通りだった。
「オカルトとは結び付きそうにないのですが。」
エリザの疑問に侯爵は腕を組み、フムと頷く。
「―――――まあ、知らないのも当然か・・・。噂自体すぐに無くなったしな。だが、十中八九真実ではないかと私は思っている。」
「それは調べた結果ですか。」
「ああ・・・。」
「父は知りすぎてしまったから殺されたと?」
「確証はないが、おそらく・・・。」
エリザベータは暫し黙想し、今までの情報を整理する。
一応筋は通っている。事件当時侯爵がアルバート領に居た理由も大体予想はついた。父から何らかの話を聞くために来たのだろう。結果を見れば聞けなかったようだが・・・いや、それとも既に聞いた後だったのか?
あの頃は熱で記憶が曖昧なんだよな~。
ホントに肝心な時に役に立たない頭である。
「ここまでだ・・・。」
声を出したのは侯爵。エリザはいきなり放たれたその言葉の意味をすぐには理解できなかった。
「え、っと・・・何がですか?」
「・・・私が知っていいるのはこれで全部だ。以後この件に関して詮索も禁ずる。これは侯爵として、国王の懐刀としての命令だ。」
「え?は?いえ、叔父様に命令されるいわれは無いと――――――――」
咄嗟にそんな返答をしてしまったが、気づいた瞬間に顔が真っ青になった。私は侯爵相手に何て口を・・・
「あ、あの、これは違くてですね。」
手を前でアタフタさせ、必死で言い募るがここで首を絞めるのがエリザの経験の少なさだ。前世では病院生活、今世では傲慢に傲慢をこじらせた女がエリザベータという。目上の物への謝罪、などと言う高度なスキルを持ってるはずが無い。
「#$%=%$%&==&%$%&=……(←自分で何を言ってるか全く分かって無い。)」
失礼極まる態度であるが、侯爵は人が出来た稀有なる貴族だった。エリザの言葉に怒るでも無く、ただ頭を下げ、
「ならば命令では無く、お願いだ。」
「うえ・・・あ・・・う・・・。そ、そう言うことなら・・・よろしくてよ。」
セバスの胃腸を犠牲にしながらも面会は無事終わった。




