一年の軌跡3-③
瞬間、まばゆい光が兵舎中を包み、エリザは一瞬時間そのものが停止したかのような錯覚に陥った。しかしそれも、すぐに終わる。煌々と輝く光は三つの点に収束を開始し、兵舎の中は通常の姿を取り戻した。
発光の前と変わったのはエリザ達三人の前に新たな三つの面影があること。
すなわちこれが獣魔なのだろう・・・
「・・・・・・。」
エリザはゆっくりと二人の獣魔を見る。
アルの獣魔は白と黒の縞模様・・・ネコ科ヒョウ族・・・学術名、Panthera tigris tigris とか言う奴ではなかろうか?伝説では白虎とか言う・・・
ゆっくりと左に視線を移動させ、ジャンヌの獣魔を見る。
凛々しい顔立ちにすらりとした―――――しかし力強い躰。うん・・・、何よりあの雄々しい角は間違いない。
ユニコーン!
す、すごすぎる。二人とも凄すぎるよ!それに比べてあたしゃぁ・・・
いや、悪くないよ。悪くないけど。決して不満がある訳じゃ無くもないけど・・・
このぷにぷにとした肌触りのよさ、プルるんとした何とも言えぬ曲線美、みんな大好きなあの生物だ。ペットにしたいと思ってる人多数。皆の人気者!
「が、学識名・・・スライム科スライム族・・・surimiとか言わないか?」
でも・・、獣魔って盾にして矛じゃなかったっけ?
「か、可愛い・・・。むり、無理無理無理。盾にも矛にもできないよ。寧ろ私が守ってあげたいよ・・!・・・って、はっ!」
あまりの事に我を忘れていたが、これは不味いのではなかろうか。
エリザは息を吐き、落ち着きを取り戻すと、現在の状況を二三思案する。
部下二人が飛んでも級の獣魔を出したのに、主兼主催者がスライムを召喚したわけで・・・
エリザが恐る恐ると周りを見ると、案の定、兵舎内は微妙な空気に包まれていた。アルもジャンヌも素直に喜べないという顔だ。
「いや・・あの、可愛いと思いますよホント。」
「え、ええ、すごい可愛いですホント。」
ジャンヌもアルも目を泳がせながら答える。
(うむ、今の状況を分かりやすく例えると・・・、営業先の会社との親睦試合で「勝ったら契約してあげる!」って言われてたけど・・・本当に勝っちゃって気まずい空気になったってお父さんが言ってたあれだ!こういう時は勝っていいって言われても、勝っちゃダメなんだよ。)
いや、ひとえに私の才が無いのが悪いんだ・・・。
ここは笑い飛ばせる度量を見せた方が、好感度が上がるんじゃないのかな・・・?
よっし!笑おう!笑い飛ばそう!勢いですべてをうやむやにしてしまおう!
「み、ミンナ――――――――!」
『ここは何処だ?俺は何故こんな場所にいる?』
そんなエリザの覚悟嘲笑うような――――――――スライムが喋りだすという、笑えない事態が起こった。




