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一年の軌跡2

 第三のイベントは事件から7か月後に起きた。

 第一や第二のイベントと違って身に危険が降り注ぐもいのではない。国を騒がすものでもない。

 それはアルバート家の日常の一コマに起きたイベントだった。


 今、エリザベータの前にはメイド服を着た大柄な中年女性、ミランダが立っている。ミランダはダンス・社交・礼儀作法・歴史の家庭教師で、この時間はいつも歴史の時間だ。

 「はい、今日の授業はここまでにしておきましょう。」

 ミランダがニコニコとしながら終了を告げる。いつもなら時間いっぱいいっぱいまでやるくせに、今日に限って一時間も前に終わるとは・・・

 「あの・・・ミランダ?まだ3時なんだけど・・・」

 「はい♪」

 「な、何でそんな上機嫌なのよ。とても気持ち悪いわ。」

 ミランダが上機嫌な時に良いことがあったためしがない。それに、今日のは格別に上機嫌だ。


 警報!警報!自分に警報!


 これから多分不味いことが絶対に起きる。

 「エリザベータ様。実は、今日授業を速く切り上げたのには理由があるのです。」

 「でしょうね。どうせ断っても無駄なんでしょ?早く言いなさい。」

 「では、お言葉に甘えて・・・。よく聞いてください。今日この部屋にさる高貴な方をお呼びしているのです。」

 その時、見計らったように扉がコンコンと叩かれる。

 「お、噂をすれば、ですね。」

 「えっ?!ちょ、ちょっと待って!まだ準備が、心の準備が!」

 無情にも扉は開かれる。

 カツン、カツンと言う音が二三度響き、すらりとしたイケメンがピタリとエリザの前で止まった。

 「お呼びにあずかり光栄です。アルバート伯爵。」

 白いローブのフードを脱ぐ。イケメンが軽くお辞儀をする。

 動作の拍子に綺麗な紅蓮が揺らめき、同色の瞳はエリザを射抜いていた。

 雄々しい顔とは言わないが、どこか肉食動物のそれと同じ雰囲気を感じる。

 「えっ、と・・・名前は・・・・・?」

 「これは失礼、レディー。私としたことが・・・。どうやら貴女のあまりの美しさに緊張してしまったようだ。」

 歯がかゆくなるような言葉をすらすらと並べ、再び男はお辞儀した。

 「私は魔法協会ペルザ王国王都支部局長ドクトル・レンドレインと言うものです。気軽にレンとお呼びくだされば光栄です。」

 そう言うとレンは更に前に進み出て、左手にキスをする。

 「!!!」

 一瞬何が起きたのか分からなかった。レンも顔を上げると驚きで顔を引きつらせている。

 レンがキスした左手は私のものでは無く、レインハルトのものだったのだ。より正確に言えば、私の左脇の隙間から出された、レインハルトの左手だった。

 「なにを・・・やっているんですか・・・・・」

 レンは口調には出していないが、かなり怒っている。対するレインハルトはそ知らぬふり・・・。


 てか、何てとこから手ぇ出してんのよ!


 絶対今顔赤くなってる・・・・


 エリザベータには前世含め男性経験など一回も無い。レンのようなタイプの男にあったことも、いきなり脇の下から腕を通されたことも無い。

 とにかく話を進めよう、とエリザベータはレインハルトの腕を戻し、早口でまくし立てる。

 「そ、それで今回に至っては何の用ですか」

 レンはレインハルトに眼飛ばしていたが、ややあって、慣れた様に返事をした。

 「はい。今回はミランダ様より獣魔契約の適正の確認と、もし適性があれば獣魔契約の執り行いを依頼されております。」

 「獣魔契約?」

 何度も言うがエリザベータの知識は幼児並みに少ない。

 答えたのはミランダ。

 「獣魔契約は霊界にいる獣と特殊な儀式魔法を使い契約することです。契約した獣とは一定距離以上離れられませんので気よ付けてください。と言うか、この説明は三年前にやったのですが・・・」

 コワッつ!!

 え、でも三年前なら私のせいじゃないよね?いや私のせいだけど・・・

 「それで、私以外に獣魔契約する人は居るの?今回?」

 「いえ、そのような予定は入っていませんが・・・」

 「そうだわ!なら、希望者皆でやらない?追加料金が必要なら払うわよ。」

 エリザベータは妙案だと言うように手を叩いたが、レンとミランダは冷静に否定的だった。

 「「あの・・・」」

 「あっと、すみません。出過ぎた真似を・・・ここはプロの方に任せましょう。」

 ミランダの言葉にレンは気にしないで下さい、とほほ笑みをうかべ、言葉を引き継いだ。

 「先程も触れましたが、獣魔契約と言うものは適性が無ければできません。この敵性は王公や歴史の長い名家と呼ばれる様な貴族の一部に現れるもので・・・言いにくいのですが、平民や下級貴族にはほぼその可能性は無いと言わざる得ません。」

 「・・・・そう・・。残念だわ・・・。でも、敵性だけでも見てあげて、もしもってこともあるし、皆の息抜きにもなると思うし、」

 未知の物を一人でやるのは怖いのです。

 エリザベータはチキンだった。

 「そう言うことなら、今回はレディーに免じて私が引き受けましょう。人数も多くなりそうですので、なるべく大きな場所を使わせていただくことになりますが・・・あと、繊細な魔術ですので、魔術具が無い場所だと助かります。」

 「ならあそこがいいわね、ミランダ。」

 「そうでございますね。あそこなら最適かと。」

 

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