14
展開上の都合により書き換えました。すでに読んでしまった人は申し訳ありません。何分見切り発車なので書いてるうちに書きたいことが変わってしまいました。
「何の用?セバス。」
「はっ。たった今例の物が届けられました。」
セバスの手にはそれらしい白色の箱が乗せられている。
エリザは内心「流石に仕事が早い」と、商会の勤勉さに感心しながら、左手を上げた。
「レインハルト。私は少し外すから貴方はここで待っていて頂戴。」
レインハルトは面白くなさそうに眉を顰めたが、ややあって、
「・・・畏まりました。」
と一礼をする。
エリザは、後ろ髪を引かれる。レインハルトの近衛騎士としてのプライドを気づ付けてしまったかと思ったからだ。
「すぐに戻るわ。」
何時ものようにそう言い残し部屋を出ていった。
残された部屋の中。レインハルトは革製の椅子にドカリと腰を下ろした。
「気に入らん・・・。」
自分に隠し事をしていることも、それをセバスには話していることも・・・
「全くもって気に入らんな。」
――――――
―――
部屋を出たエリザはセバスと一緒に歩を進める。
階段を上がり、通路を進み、213と書かれた部屋の前で足を止める。
「失礼します。」
そう前置きして、セバスがゆっくりと扉を開いた。
部屋はマンションの一室程の広さ。部屋の奥には鍵付きの扉。左右にはベッドと本棚が置かれている。
部屋の中には既に先客が4人おり、エリザの登場とともに三人がそれぞれ挨拶とともに礼をした。
残りの一人はベッドの上で目をつぶっており、起き上がる気配は微塵も無い。
「「「お早う御座います。エリザベータ様。」」」
「うん、おはよぅ。」
軽く手を上げ、三人に応え、エリザは最後の一人。ベッドに眠る黒髪の少女に目を向けた。
年のころは10歳前後。日の光に触れたことが無いのか、そう思うほど病的な白さだ。
やはり起きる気配はない・・・
もっと簡単に終わると思っていたのだが・・・
エリザは内心愚痴を零した。
実はエリザが此処に来るのは今日が初めてではない。これで三度目だった。
二週間前。アルが騎士になるとすぐにエリザはこの部屋を作らせ、――――とは言え、内装を改装しただけだが――――アルの妹を連れてこさせた。
主人公に恩を売りたいという下心と絶対に直せるという自身からきた行動だったが・・・
その自信は、今はほとんどなくなりかけている。
もう既に30種類以上の薬を作っているがすべてうまくいかないからだ・・・
材料も分量も分かっている。アルバート領内でも優秀な薬師を使っている。だと言うのに・・・
やめだやめだ。やめよう。ナイーブになるのは・・・。
エリザは髪を払い、部屋にいた薬師二人に目を向けた。
「どこまで出来たか報告して・・・。」
薬師Aが言いにくそうに口を開いた。
「残念ながら、依然【対呪病薬Lv4】までしか作れておりません。」
付けたしのように、薬師Bが口を開く。
「Lv3が三つ。Lv4二つです。」
「そう・・・。」
分かっていたが、やはり気落ちする。
私が欲しいのはLv8以上の対呪薬だ。先が長いどころの話ではない。
ちなみに対呪薬と言うのは読んで字のごとく、呪病を治療・緩和するための薬だ。
呪病は、回復薬ポーションが有効な怪我や風邪などとは一線を画し、対呪薬以外の治療法は無い。ゲームでも、この世界でも、それは同じだ。
ただ一つ違うのは、この世界の対呪薬が極端に進んでいないと言うこと。
現存する最良の対呪薬それがLv6・・・。それも古代遺跡から発見されたものだ。値のつけようの無いほど高価だ。買える訳がない。買えたとしても緩和以上の役には立たないだろうが・・・
ふと、エリザは視線を動かす。視線の先には、先程から物置と化しているアルフォンス。
まじまじと見る。
何だあれは・・・
部屋に入った時から違和感は感じていたが、どうして今まで気づかなかったのか・・・
これは不味いかもしれない・・・
「アルフォンス。その頬の傷、・・・」
アルの右頬には斜めに傷が走っている。まだできたばっかりのようだ。
「これですか?レインハルト殿との実践稽古で後れを取りました。」
実践稽古の話ならレインハルトから聞いている。生きのいい若造が居ると。
でも、・・・兵舎の医務室には下級ポーションが常備されている。もちろん無料で使用許可を出している。
転売は許さんが・・・
「ポーション、切れてたかしら?」
だとしたら、すぐに補充しなければ。私が目指すのはクリーンな会社なのだから。
「いえ。」
「・・・」
エリザが他に理由があるかと考えていると、アルが答えを言ってくれた。
「372ギリカ。」
「は・・・?」
「ポーション一つにかかる金額です。・・・こんなことで足しになるとは思いませんが、少しでも役に立てばと。」
そんなこと考えてたのかこの男は・・・。律義と言うか、何と言うか。
でも安心して!アルバートには薄汚れた金がたくさんあるから。
エリザはゴッホんと偉そうに咳払いをし、アルの肩をポンッと叩いた。
「・・・アルフォンス君。気にせず使ってくれたまえ!」
アルはそれに膝を着いて、臣下の礼をした。
「慈悲深き御言葉。感謝の念に付きません。」
エリザは特段慈悲を掛けたつもりは無かったが、口には出さなかった。恩は出来るだけ大きく売るのがエリザ流だ。
その後、エリザはいくつか指示と意見交換を済ませ、部屋を出た。
護衛の待つ部屋へと戻る。
脳裏に銀髪の騎士が浮上し、アルのことを黙っていることに再び後ろめたさを感じた。
まあ、エリザにも言い分はある。
曰く、あの男が有能すぎるのが悪いのだ。大抵のことはそつなくこなす。給仕、護衛、兵の育成・・・。いったいいつ休んでいるのか心配になるほどに。
私が外してる時ぐらい休んでいてほしいものだ・・・
そんな事を思いながら、歩を進める。途中セバスと別れ、行きとは違う道をたどり、部屋に戻る。
定位置で直立不動に立つ騎士を見て、溜息を吐くのだった。
夜。
全ての仕事を終わらせ、エリザはベッドにダイブした。
ふかふかのベッドがたまらなく気持ちいい。
貴族らしく振舞うことは、意外に疲れ、糸が切れた様にエリザはうとうととしだした。
「むにゃ・・・むにゃ・・・。」
事件から二週間・・・・。順調すぎる程順調に毎日が運んでいた。新規兵と旧兵との摩擦も無く、行政も大きな問題は起こっていない。一言で言えば平和。あの日が特別だったのだ。これからもこの平和が続くのだと、何の疑いも無くエリザは思うようになっていた・・・。




